Drama
バンドマンという幸福な商売
沼澤尚さんと、とてもホンネな話。

Photo:Toshihiko Imai
(Rhythm&Drums magazine)

ほぼにちわ。
お調子ものこと、国技館Nです。
さて、「ほぼ日」だけの特典をつけて、
限定1000枚で発売した
沼澤尚さん最新参加アルバム
J&B「THE TIME 4 REAL」を
現在、発送中です。
「これ、オレも欲しいよ!」
と先程もdarlingが叫んだ
「ほぼ日」だけのスペシャル特典、
『沼澤の皮』をつけてお送りしますよ。
それでは発送作業をちょいと覗いてみましょう。



まずは梱包しやすいように
段ボールに型をつけていきます。



で、型をつけた段ボールにまずは
「ほぼ日」からのお手紙をいれます。
このお手紙、届いた人だけのお楽しみですけど、
裏面に沼澤さんからご購入してくださった方への
直筆メッセージがありますっ!



手紙の上に「THE TIME 4 REAL」をおいて。



折りたためば梱包完了!
この段ボールもべっかむ3の
ナイスデザイン段ボールです。



もうすぐ、こんな包みが
送られてきますからねぇ!
お楽しみにっ!

さて、本日も対談をお送りします。
ドラムセットが生まれてから100年経ってないって
ご存知でしたか?

第9回
ドラムって伝統芸能なんですよ
沼澤 実をいうと自分が雰囲気で叩いているものが、
一つも無いんです。
「この、今の一瞬のこれは、
 誰の何のどこの何とか」
全部、説明ができる。
それを自分の感覚でやるもんだから、
たまたまオリジナルに聞える場合があるんです。
要するにドラムセットっていう楽器が、
まだ80年もたってないですから。
太鼓っていうものはもっと前からありますけど、
今のドラムセットみたいなスタイルに
なってきたのは1920年代から30年代なんで。
糸井 はーっ。
沼澤 ドラムセットができてから
まだ、100年も経ってないんですよ。
その過程で行われてきたことっていうのは、
全部、残されているんです。
糸井 必ず誰かが説明してるんですよね。
そこが面白いんですよね。
沼澤 でも、こんなに楽器も変化してる、
人も変わって生活も変わっているのに
ほとんどの事が既に
やり尽くされているんですよ。
でも、根本がぜんぜん変わってないんです。
その根本を受け継いでいっているんです。
糸井 ドラムって伝統芸能なんだ(笑)。
沼澤 めちゃめちゃ伝統芸能ですね。
その根本にあたるものは
日本で発生したものじゃないから
僕はアメリカ行ったわけなんです。
糸井 書道なんかに近いですね。
明朝体があって隷書体があって、みたいな。
沼澤 すごい近いですよ。だから楽器も、
「一番最初に作られたものはこんな感じで、
 それがこう進化していった」
っていうような過程が
確実にあって、そういうことを
僕らは自分たちでも検証してるし、
そんなの資料でもあるし。
調べるのは当たり前の事なんですよ。
糸井 はーっ、楽しそうだなぁ……。
沼澤 それが楽しくて。
だから自分が使ってるドラムセットも、
1930年代のものを買ったりするんです。
その、持ってること自体が好きなんで。
糸井 はぁー。
沼澤 その古いドラムセットをレコーディングでも
使ってみたりするんです。
そういうのを使ってやっていくんですよ。
やっぱりこういう事って
受け継いでいってるんです。
自分が興味ある人のとこに
習いに行ったりもしますよ。
それはもう自分で見て、何をやってるか、
目の前で見る以外にないからなんですけど、
そうじゃないと説明ってできないんですよ。
糸井 落語を口移しで習うようなもんだね。
ちょっとずつ師匠が話して、
それを真似て憶えるんですよね。
沼澤 もう、そういう感じですよ。それの連続で。
ぼくがやったフレーズを、
「お前、それ今どうやった?」
って聞かれたこともあったし、
ぼくは説明できちゃったりするんです。
次の日にぼくが行ったりしたら、
教えてもらおうとしてた人が
ぼくのフレーズを
めちゃめちゃ練習してたりするんですよ。
「お前、こうやってやってんのか?」
みたいに。
糸井 面白そうだねー(笑)。

沼澤 いまでも、やっぱりそうなんですよ。
僕らの解釈で、とこっとん真似して継承して
こんな感じになりましたって感じ。
糸井 そこに自分の個性が
自然にはいっちゃうんでしょ。
沼澤 それ以外に、ないですね。
糸井 真似したつもり。
沼澤 もう、思いっきりやって。
今回のアルバムも、全部そうですね。
自分の中では、説明ができちゃう。
糸井 そういうことをやってるのが、
他のバンドの連中に、
また違う影響を与えるじゃないですか。
つまり、
「その叩き方だと、俺、困るんだよ」
ってことも、ありますよね。
そのときには、それに合わせたギターになるし、
相互作用がありますよね。
沼澤 糸井さんそのあたり
聞き分けてられてますね?
ちょっとびっくりしてるんですけど。
糸井 僕はただ、耳でちゃんとわかる範囲っていうのは、
正直に言いますけど、ベンチャーズまでなんです。
つまり、「この本はぜんぶ読んだ」
っていうような気になれるのは、
ベンチャーズだけなんです。
沼澤 はぁ、ベンチャーズか。
あれこそ、伝統芸能ですよね。
糸井 あれは楷書で書いてあるから、読めるんです。
「はい、そこで、何とかが来ます、
 こういう物語です、
 皆さま、いかがでございましたでしょうか?
 音楽は、楽しゅうございますね、
 それではみなさん、さよならー!」
っていって帰るんですよ。
それは、端から端まで
小説としては読めるんですよね。
他はそんな簡単なものじゃないんで。
やっぱり読めないんですよ。
沼澤 でも、あの人たちがいなかったら……。
糸井 ないよね。
楷書がなかったら、他はないですよね。
あれで、普通にやるってこういうことだよ、
っていうのを、ちゃんと教わった気がするし。
最近だとさ、キャロル時代の永ちゃんって
あの時代、実はけっこう
挑戦的だったってことがわかる。
沼澤 すごいですよ。めちゃカッコイイですからね。
糸井 (笑)若いヤツが今ごろになって
びっくりしてるけど、あのマジックって
当時は誰も聴いてくれなかったんですよね。
「キャー」っていってただけで。
沼澤 うん、イメージだったから。
糸井 でも、今、聞くと、「ちゃんと文体があるよ」
っていうことがわかりますよね。
沼澤 音楽的な質の高さが……。
糸井 あるんですよね。要するに
後は、練習の量だけだっていうね。
沼澤 いやだって、矢沢さんのベースって
すごいですもん。
糸井 しかも、弾きながら
走り回ってますからね。
沼澤 今でも「ベース弾いて欲しいなぁ」って
思っちゃったりしますよね。
糸井 キャロルは、今のちゃんと再生する装置で
聴いたら、
「これだから人気あったんだーっ」
ってことがよくわかる。
多分、あれは永ちゃんが、
ポール・マッカートニーを斜め読みしたから
ああいう個性が出ちゃったんだと思うんですよ。
沼澤 もう、それって全世界に
共通してるじゃないですか。
だって、ウィリー・ディクソンをやろうと思った
レッド・ツェッペリンが、
ああなっちゃったんですからね。
エリック・クラプトンだって、
アルバート・キングやるつもりだったのが
ああなっちゃたわけだし。
糸井 (笑)読み方浅いうちに
練習始めちゃったみたいな。
沼澤 だって、ポール・マッカートニーも
そもそもはリトル・リチャードを
やりたかったわけだし。
もうあれは完璧にあの人たちが
育った土地っていうか
土壌が、ああいう解釈を
させたってことですよね。
糸井 それはね。要するに、
ピジョン・イングリッシュの連続ですよね。
ハワイの人の英語って、
独自の英語を作っちゃったり
日本なまりが多かったりするじゃないですか。
ああいうことが、
ずーっと音楽でも連続して起ってるんですよね。
沼澤 まさに。プリンスがそうですから。
糸井 あ、そう。
沼澤 もう、まんまやってたりするのに、
「なんでプリンスに聞えるの?」っていう。
糸井 だから、上手になっちゃった
オアシスみたいなバンドって、
すっごくチャーミングなんだけど、
消えると思うんですよ。
沼澤 オアシス、僕はぜんぜんダメなんですよ。
ずーっと。
糸井 でしょ?
ぼくはオアシスに関しては
一気に何枚も買っちゃったんですよ。
それで、一気に聞いてみたわけですけど
総合力としてはすごいですよ。
だけど、魅力っていうか
彼らのなまりがないんですよ。
つまり、斜め読みじゃなくて、
ちゃんと読んだ人たちの演奏だから、
ぼくはつまんなく感じてるのかな?
って思ったんですよ。
沼澤 なまり、ない!
ぼくも二度と聴かないんですよ。
でも、ツェッペリンは今も聴いたりして、
「ウォーッ! やっぱりすごい!」
って思うし。
糸井 あと、ジミー・ヘンドリクスとかさ、
修練は積んでる、
でたらめなヤツらのって演奏って!
沼澤 そうですね。チューニング、
関係無いですからね!

(つづきますよっ!)

2003-04-02-WED

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