感心力がビジネスを変える!
が、
感心して探求する感心なページ。

第15回 働く信念を創造すること。

前回までのあらすじ:
ビデオデッキの突然の不調がきっかけで知った、
家電修理受付サイトのサイバーコンセント。
その事業母体であるミスターコンセント西葛西店での
取材に続き、平塚店での朝礼にまで潜入

ウェブサイトで見つけた
サイバーコンセントというサイトから、
ミスターコンセントという会社を知り、
そして、グループ会社の3Qグループまで行き着きました。

ひとつの感心で、連載も15回にもなっとります。
家のブレーカーが飛んで、
ここまでの分量の感心が採掘できるとは、
想像もつかなかったですねぇ。
ここらで、区切りをつけないと、
サイバーコンセントの広報担当になりそうなんで、
感心をひとまとめしておきます。

サイバー&ミスターコンセントには、
第3次産業のフロンティアといえる実践が
たくさん詰まってました。


「家電製品の修理ビジネス」というと、
不況、デフレ下の経済の波に乗った、
ご時世に同調した成長するビジネスって思われがちです。
“時代をとらえたマーケティング”なんて言葉で
ひとまとめに整理されることもあるでしょう。
しかも、“「環境」というのも意識してんのかな”と、
さらにうまく頭の中で理解できた気分にもなります。

たしかに、今のビジネス環境を踏まえた
マーケティング視点がこの事業に無かった、と言えば、
それは嘘になるような気がします。

でも、この事業には、
マーケティングな思惑を超えた、
大きくて本気のビジョンがありました。
「修理する文化を伝え、広める」
という構想です。

そんな考えが、
サイバーコンセントのページ全体からはみ出るほどに、
ぎらぎらと表現されてたんですねえ。
「売らんかな」よりも「正直な思いを伝える」ことに、
できる限りの工夫や手間がかけられていました。
インターネットって、
「思い入れ」や「思い込み」、「思いやり」といった、
送り手の思いの類いが、
ダイレクトに伝わりやすいんだなぁ、というのが、
第一感心でありました。


ところが、
パソコンのモニターの向うで繰り広げられていた世界は、
さらに感心の露天掘り、
あきれるほどの経営実践の宝庫でした。

ビジネスや労働というよりは、
知恵と楽しみと儲けをみんなでシェアするゲームが、
行われているような感じです。

そのゲームのためのルールが、
日々事例とビジョンを共有しあう
「毎朝の電話会議」であり、
一人ひとりが競ってスターになれる
「超分社方式」であり、
だれもが営業をできる
「どんぶり勘定式見積もり」であり、
在庫をためず、お客さんを喜ばす
「スピードの約束」であり、
そして、「売り上げよりも利益を得点にする」
ルールでした。

これだけのルールが決まれば、
あとはオープンでフラットで、
しかも明るくってスピーディーな企業風土が
自然と育っていくんだな、ということが、
つぶさに見て取れました。
「ルールが風土を生むのか、それとも逆か」の
ニワトリたまご問題系がよくあるのですが、
観察結果は、「ルールが風土を創る」でした。

そして、一番感心に打ちのめされたのが、
「従業員満足あっての顧客満足」
という経営方針でした。
古くは「お客様は神様です」の精神であるとか、
「お客さま第一主義」とか、CSであるとか、
お金をいただくお客さんを一番大切にしにゃいかん、
という考えが、世間一般に根強すぎるな、と思えました。
思えば、そもそも働き手が満足できてなければ、
お客さんへのサービスも続かないわけですから。
そういえば、
顧客満足度調査が大好きなアメリカの企業でも、
90年代に急成長したサウスウエスト航空は、
あえて「カスタマー・セカンド」と言ってるらしいです。
顧客が二塁手の企業、いや、
顧客を2番目に大切にする企業ってことです。
つまり、従業員を最も大切にするポリシーなんですね。
この考え、まわりまわって新しくありません?

また、このサイバー&ミスターコンセントの
エンジニアさんたちの採用の仕方、
人材活用の考え方が、
家電修理に対するビジョンと共鳴しあって、
循環型社会に向けたより大きく高いビジョンへと
拡がっていたんです。
はぁ〜。
振り返って、巻き戻しても感心できますねぇ〜。

ところで、
結局、あの壊れたビデオデッキはどうなったか?
最初のメールの返信では、9千円の見積もりでした。
それから、ミスターコンセント西葛西店に持ち込んで、
鈴木事業部長からは、
「この型は古いから、うちにとっても挑戦だな」
予告めいた発言を受けていたのですが、
その後、ヘッドの交換にまでいたり、
費用は1万4千7百円也でした。
どう思われますか、この値段?

正直「高い」と思いました。
ただ、12年も使っていたことだし、
それに買い替えていちから使い方を覚えるのも面倒だし、
そのうちDVDレコーダーか
ハードディスクレコーダーでも
買いたいから、それまでのつなぎが必要だし、と、
くよくよ考えたわけです。
そして、なんといってもミスターコンセントのビジョンに
一票投じたいという気分が、
ひと押しになりました。
無事、呪われたテープも戻ってきたわけです。
男性読者諸氏!
思えば、万が一、そのテープが、
アダルトなビデオだったらと思うと、
ぞっとしますよねえ。
担当の修理ビデオエンジニアの方に、
「はは〜ん、この田中宏和という人は、・・・、
 なるほど、こんな趣味で、あー、この場面で、・・・、
 なるほどねえ」なんて。
ほんとによかったです!

ともあれ、なんでもミスターコンセントのほうでは、
最近、費用1500円の出張修理をしていたり、
洗濯槽クリーニングをプロモーションしていたり、と、
新サービス開発に余念がありません。
この洗濯槽クリーニングのデモビデオを見ると、
頼みたくなるんですよ。
「あなたの洗濯機だと、
 汚れの中で洗ってるようなものですから」
 とか言われると、
もう「お願いします!」ですよ。
9,500円だそうです。

さて、今回の旅では、
いろいろ教わることが多かったですねえ。
つまるところ、
社員が働くことを
まっすぐに信じることができる環境を創ることが、
経営の根っこなんじゃないか、と感じました。

内に向かって信じる力を、
外に向かっては信じられる力を創る。
それは、言わば、
「内なる信念が、
 お客さんからの信頼へと
 つながっていく道なんじゃないか」と。
やたら「信」が多いですなー。

「働く信念を創り出すこと。」

こんな言葉で、
今回の感心力を締めさせていただきます。

ではでは、つぎの感心で。
たぶん、すぐです。


ミスターコンセント平塚店にて
取材に協力してくださったみなさま、
どうもありがとうございました。

田中宏和さんへの激励や感想などは、
メールの題名に「田中宏和さんへ」と入れて、
postman@1101.comに送ってください。

2003-03-12-WED

BACK
戻る