田中 |
さっそくですが、映画を観てですね、
非常に感動しました。
今日は、
サッカーのこともあるんですが、
(じつはあんまり興味無い)
おもに、ビジネスと仕事という側面から、
お話を聞いていきたいというふうに思います。
最初にこのプロジェクト、
「最下位決定戦」を思いついた
いきさつをお話いただけたらと思うんですけども。 |
マタイアス |
まず最初にきっかけとなったのは、
自分たちの母国オランダが、
ワールドカップを予選で敗退してしまって、
「負けるということ」に興味をもって、
この試合のアイデアが出てきたっていうのも
あるんですけど、
もともと映画を作りたいという
気持ちがありました。
世界に向けて、
ポジティブで人々のやる気を起させるような
働きかけができるような
映画をつくりたかったんです。
私たちは、世界中の人たちと分かちあえるような
メッセージ出したかったんです。 あくまで物語の共通言語として
サッカーを選んだわけで、
これはサッカーが主題の映画ではありません。
サッカーは、おたがいのことや
おたがいの文化を知らない同士が、
フレンドリーに出会うための言葉だと考えました。 |
田中 |
その最初のすばらしいアイデアを、
実現化されるまでに、
たいへんな苦労を
されたんだろうと思ったんですが、
そのへんのお話を聞ければな、と思うんですが。 |
マタイアス |
面白いことに、 私たちはサッカーの試合を
企画実施した経験が
一度もなかったんです。 |
田中 |
そうなんですか!?(笑) |
マタイアス |
経験が無かったことは、
私たちにとって、
もちろん不利なことだったんですけど、
それがかえって
良かったことでもあったんですよ。 |
マタイアス |
私たちは、このプロジェクトに
協力してくれるところを
必死で探したんです。
この企画を実現するにあたって、
ブータン、モンテセラト、FIFA、
それから審判の手配のために
イングランドのサッカー協会と、
とにかくいろんな協力が必要だったんです。
それに自分たちだけでは
このプロジェクトを達成することはできない
っていうのがわかっていたので、
日本の友だちの会社
(ロボットという制作会社)と
組んで、映画のプロデュースを
してもらったんです。 |
田中 |
FIFA
の許可を取ることは簡単だったんですか? |
マタイアス |
FIFAにどういうふうに
アプローチしたかというと、
まずFIFAにそういった
試合の許可を出すような
管理部門があるんですけど、
そこに、自分たちで直接交渉したのではなくて、 まずブータンとモンテセラトに、
私たちの企画のファックスを送って、
彼らからFIFAに
「自分たちはこの試合をやりたい」
っていうのを
送ってくれってお願いしたんです。 |
田中 |
それ、素晴しいアプローチですね(笑)。 |
マタイアス |
さらにラッキーだったのが、
このプロジェクトが
挑戦だったというだけでなく、
時間が無かったということなんです。
時間がなかったので、
すごい挑戦できたんですけども、
6月30日のワールドカップの決勝まで、という
締め切りがあったからできたんです。 |
田中 |
最初にそのファックスを
モンセラトとブータンに送られたのは、
いつだったんですか? |
マタイアス |
1月の末ですね。 |
田中 |
2002年の?(笑) |
マタイアス |
そうです。
ブータンは、試合をやることを決めるまで
2ヶ月かかったんです。
2ヶ月間考えさせてくれと
言われ続けたんですよ。
だから残り3ヶ月で
実現を図らなくしちゃいけなかったんですね。 |
田中 |
その実現にこぎつけたコツというか、
なぜうまくいったかっていうのを
いちばんお聞きしたいんですけども。 |
マタイアス |
まず、私たちはツキに助けられたと思います。
それから、関わっている人たちに、
このアイデアに対して、
のめり込んでもらえるように
努力したんです。
あとはもうボールとおんなじで、
転がるまんまに
自然に流れに乗っていけました。
たくさんのツキが重なったんです。
モンテセラトとブータンの政府が
とても協力的だったし、
映画づくりで
日本の制作会社のロボットと仕事ができたし、
それからFIFAがこれを承認してくれた。
とにかくツイてました。 |
田中 |
たぶんプロジェクトを
実行する資金の目処もなくて、
先に動かれたかなと思ったんですけども、
そのあたりはどうだったんですか? |
マタイアス |
まず自分たちとロボットの資金があって、
あとイタリアの会社から資金、
それからオランダの文化基金から
お金を出してもらいました。
あとは、映画配給のロイヤリティ収入を
あてにしていました。
しかし、大事な点は、
もともと非営利を前提にした
アイデアだったので、
もし万が一儲かってしまったら、
ブータンとモンテセラトに、
彼らのサッカーのこれからの発展のために、
寄付します。 |
田中 |
「非営利で行こう」という
アイデアがはじめに無かったら、
このプロジェクトは
これだけうまく
行かなかったかもしれませんね。 |
マタイアス |
その通りだと思います。 |
田中 |
最初ファックスを送られたときには、
資金のお金の算段もせずに、
まずは自発的に
動いてみようとされたんですか? |
マタイアス |
そうです。
ほんとに思い立ってすぐ
ファックスを送ったんです。
私たちの会社の財務状況はとても良いので、
儲けること自体、あんまり考えてなかったんです。
私たちは広告業なんだけども、
社用車は無く、社用自転車はあるんですよ。
だからお金も節約できるんです。 |
一同 |
笑(69西本乗組員を除く) |