田中 |
『ほぼ日刊イトイ新聞』のですね、
「感心力がビジネスを変える」っていう、
笑っちゃうようなタイトルの
コーナーがありましてですね。 |
巻上 |
大丈夫なんですか?
そのタイトルで俺の話は。 |
田中 |
いや、大丈夫です。大丈夫です! |
巻上 |
俺もちょっと読んだけどさ。
ここに出んのか、とか思って(笑)。
平気かな?、とか思って。 |
田中 |
ビジネス・ページなんです、ええ(笑)。 |
こんな不信感を持たれつつ、
「声とビジネス」について
感心がいっぱい1時間半のインタビューになりました。
まずは、来日直前のアルタイ人歌手、
ボロット・バイルシェフさんの
「想像を絶する声」の話から聞いていきます。 |
田中 |
まずは、
ボロット・バイルシェフさんに出会われた
きっかけあたりから
お伺いできればと思うんですけども。 |
巻上 |
僕はね、10年くらい前に、
口琴って楽器がすごい好きになって。
まあ、実は、ヒカシューのね、
1枚目のアルバムでも、
24年くらい前に使ってたんだけど、
そんなこともすっかり忘れて、
「あ、この楽器はいいなぁ!」って、
また思い始めて(笑)。
で、練習し始めたんですよ。 |
田中 |
え?
ふたたび口琴に燃えはじめたのは、
なにか理由があったんですか? |
巻上 |
「世界口琴フェスティバル」
っていうのがあるんですよ。
その第3回目に行ったんです。 |
田中 |
「世界口琴フェスティバル」ですか???
そんな世界フェスティバルがあっていいんですか?! |
巻上 |
そうそうそう(笑)。
口琴について、
シンポジウムと会議とコンサートをする
フェスティバルっていうのがある。
第1回はアメリカ、第2回はシベリアのサハ。
で、第3回がオーストリアのモルンでやったんですね。 |
田中 |
あー、ワールド・ワイドなんですねぇ。
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<ワンポイント解説>
「口琴ってなんや?」の方、ごめんなさい、
いきなり振りきれた会話になってます。
口琴とは、
世界中にある、おそらく最も古い楽器でして、
手のひらサイズの鉄や竹でできています。
口にくわえて弁を弾くと、
「びよーん、びよーん」と鳴るんです。
それでは早速ですが
ここで巻上さん我々の前で演奏してくださった
口琴をお聞きくださいっ!
(クリック) |
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巻上 |
で、第3回「世界口琴フェスティバル」の
オーストリアに行ったんですよ。
チロル地方なんですけどね。
実はそこがね、
世界でいちばん口琴を作ってるところなの。 |
田中 |
へぇー(笑)。
チロル地方が一大産地なんですか? |
巻上 |
それで招待されなかったから、
無理矢理行ったのね(笑)。自費で。
その前にね、メールとか出してて、
「出してくんないか?」とか言ってたんだけどね、
あんまり通じなかったから(笑)。
それで、
「ウィーンの駅のところで待ってたら
迎えが行くから」って、
迎えに来てくれて、
だいたい4時間ぐらい車に乗ってって。 |
田中 |
さらに4時間もかかるわけですね(笑)。 |
巻上 |
で、着いたらもうほとんど夜。
11時ぐらいだっけね。
夜着いたら、宿舎を割り当てられたわけ。
で、だいたいアジア人は、
そこのホテルというか‥‥。 |
田中 |
あー、もう似たもの同士ってことで、
似たようなところに集められるわけですね。 |
巻上 |
そう、集められてるわけね。
で、行ったらね、アジア系の2人が話をしてたのね。
そのひとりがボロットさん。
もうひとりがエディルさんってカザフスタンの方でね。
カザフの人とアルタイの人が、
2人でこう、お茶飲みながら話をしてたんですよね。
で、「あ、こんにちは」とか言ったら、
「うん」っていう感じで(笑)。 |
田中 |
それは、英語で話しをされるんですか? |
巻上 |
ロシア語かな、そのときは。
ロシア語、僕その頃、始めて1年か2年ぐらいで。 |
田中 |
あっ! 勉強されてたわけですね?(笑) |
巻上 |
そう。
で、「わっ、これはいい!」と思って。 |
田中 |
「これはロシア語使える!」と思って(笑)。 |
巻上 |
「ズドラーストビーチェ!」って(笑)。 |
田中 |
なかなか使えないですよね、
ロシア語なんて(笑)。 |
巻上 |
「わたしは巻上公一といいます」って、
ロシア語でちょっと紹介をして。
で、どういう人か知らなかったんですよ。
そのボロット・バイルシェフって人がね。 |
田中 |
ふつう誰だかわかんないもんですよ、それは(笑)。 |
巻上 |
コンサートが1日か2日後にあって、
そこではじめて誰がどんな奴かわかるんだけども、
まあ、ほんとに世界各国から口琴名人がきた。 |
田中 |
はぁー。
そんないっぱい名人がいるもんなんですか。 |
巻上 |
口琴名人で有名っていっても、
それ、口琴の世界で有名ってだけで(笑)。
その口琴自体がマイナーですから。 |
田中 |
それは、何人ぐらい集まるフェスティバルなんですか? |
巻上 |
何万人だよね?
(とここで、急にお茶を運びにこられた奥さんに
尋ねる巻上さん) |
田中 |
へぇー! そんなに!? |
巻上さんの奥様 |
そんなに来たっけ? |
巻上 |
いたじゃん!
1万か2万ぐらい、いたんじゃないの?
いない?
5千人ぐらい? |
巻上さんの
「冷静な」
奥様 |
数千人って感じですね。 |
巻上 |
ぜんぜん違うな(笑)。
だんだん少なくなってるじゃん! |
田中 |
えー、それは、野外で会場が設けられて、
ひとりひとり紹介されて、
口琴を披露していくって感じですか? |
巻上 |
そうそう。 |
田中 |
あー。
そこで、宿がおんなじだった人が出て来たと(笑)。 |
巻上 |
急に出て来てね。それも、すごい衣装で。
なんか、見たことない衣装だったの。
ま、モンゴルとか、あのへんの衣装っていうのは、
まあ、漢民族の衣装で
清朝の時代の服を着てますよね。
それとぜんぜん違ったんですよ。
なんか、アニメに出てくるような(笑)。 |
田中 |
ま、普段着なんでしょうね(笑)。 |
巻上 |
アニメ・ファンが大喜びするような格好をして。
すごい帽子かぶって。
でも、それはほんとうに衣装だったのね。 |
田中 |
あ、ステージ衣装だったんですね。 |
巻上 |
古代のアルタイ民族のものを復元してる。
だから、日本でいってみれば、縄文時代とか、
まあ、弥生時代だな、むしろ。 |
田中 |
わりとアルタイでも
極端な服を着てきたわけですね? |
巻上 |
うん、そうそう、それは異様でしたね。 |
田中 |
伴奏が無くて、いきなりバーンとこう、
ベンベンベンベン始まるんですか? |
巻上 |
そう口琴やったり、
トプショールっていう
2弦の撥弦楽器があるんですけどね、
それを弾きながら、歌い始めるんですよ。
で、歌が始まったら驚いたことにね、
聴いたことのない低音だったの。 |
田中 |
わははははは! |
巻上 |
白いテントの中のステージだったんだけど、
すごい反響してね、
エコーがすごくうなってたんだけど。
で、その低い音がね、
もうテントが、ブ〜ッブ〜ッ!って
震える感じだったの。 |
田中 |
あ、実際にテントがですか? |
巻上 |
うん。
もう、なんか、衝撃の音。 |
田中 |
いや僕もCDを借りて聴いたんですけど、
地鳴りみたいですね。 |
巻上 |
地鳴りの音ですよね。 |
田中 |
あれ、地鳴りですよね、もう(笑)。 |