感心力がビジネスを変える!
が、
感心して探求する感心なページ。

第2回 衝撃の声との出会い。

「声は鍛えられるんですよ」という言葉に導かれ、
向かうは巻上公一さんの湯河原のご自宅であります。

同行の取材班は、
昨年巻上さんと一緒にアルタイに行った、
メディア・ファクトリーの編集者、
“ジョン・レノン似”の丹治文彦さん。
続いて、声のプロフェッショナルとして、
なにかとこまめに熱心で、
「あら〜奥様」界のアイドル、
“はなまるアナ”の今泉清保さん。
そして、
湯河原がどこにあるのかも知らなかった、
“嫁といっときも離れるのがつらい新婚”の
おなじみ西本ROCK乗組員です。

うららかな土曜日の午後、
公衆足湯温泉を見下ろす高台にある、
巻上さんご自宅地下のスタジオに案内され、
会話はスタートしたのでした。


田中 『ほぼ日刊イトイ新聞』のですね、
「感心力がビジネスを変える」っていう、
笑っちゃうようなタイトルの
コーナーがありましてですね。
巻上 大丈夫なんですか?
そのタイトルで俺の話は。
田中 いや、大丈夫です。大丈夫です!
巻上 俺もちょっと読んだけどさ。
ここに出んのか、とか思って(笑)。
平気かな?、とか思って。
田中 ビジネス・ページなんです、ええ(笑)。
こんな不信感を持たれつつ、
「声とビジネス」について
感心がいっぱい1時間半のインタビューになりました。
まずは、来日直前のアルタイ人歌手、
ボロット・バイルシェフさんの
「想像を絶する声」の話から聞いていきます。
田中 まずは、
ボロット・バイルシェフさんに出会われた
きっかけあたりから
お伺いできればと思うんですけども。
巻上 僕はね、10年くらい前に、
口琴って楽器がすごい好きになって。
まあ、実は、ヒカシューのね、
1枚目のアルバムでも、
24年くらい前に使ってたんだけど、
そんなこともすっかり忘れて、
「あ、この楽器はいいなぁ!」って、
また思い始めて(笑)。
で、練習し始めたんですよ。
田中 え?
ふたたび口琴に燃えはじめたのは、
なにか理由があったんですか?
巻上 「世界口琴フェスティバル」
っていうのがあるんですよ。
その第3回目に行ったんです。
田中 「世界口琴フェスティバル」ですか???
そんな世界フェスティバルがあっていいんですか?!
巻上 そうそうそう(笑)。
口琴について、
シンポジウムと会議とコンサートをする
フェスティバルっていうのがある。
第1回はアメリカ、第2回はシベリアのサハ。
で、第3回がオーストリアのモルンでやったんですね。
田中 あー、ワールド・ワイドなんですねぇ。

  
<ワンポイント解説>
「口琴ってなんや?」の方、ごめんなさい、
いきなり振りきれた会話になってます。
口琴とは、
世界中にある、おそらく最も古い楽器でして、
手のひらサイズの鉄や竹でできています。
口にくわえて弁を弾くと、
「びよーん、びよーん」と鳴るんです。


それでは早速ですが
ここで巻上さん我々の前で演奏してくださった
口琴をお聞きくださいっ!
(クリック)

巻上 で、第3回「世界口琴フェスティバル」の
オーストリアに行ったんですよ。
チロル地方なんですけどね。
実はそこがね、
世界でいちばん口琴を作ってるところなの。
田中 へぇー(笑)。
チロル地方が一大産地なんですか?
巻上 それで招待されなかったから、
無理矢理行ったのね(笑)。自費で。
その前にね、メールとか出してて、
「出してくんないか?」とか言ってたんだけどね、
あんまり通じなかったから(笑)。
それで、
「ウィーンの駅のところで待ってたら
 迎えが行くから」って、
迎えに来てくれて、
だいたい4時間ぐらい車に乗ってって。
田中 さらに4時間もかかるわけですね(笑)。
巻上 で、着いたらもうほとんど夜。
11時ぐらいだっけね。
夜着いたら、宿舎を割り当てられたわけ。
で、だいたいアジア人は、
そこのホテルというか‥‥。
田中 あー、もう似たもの同士ってことで、
似たようなところに集められるわけですね。
巻上 そう、集められてるわけね。
で、行ったらね、アジア系の2人が話をしてたのね。
そのひとりがボロットさん。
もうひとりがエディルさんってカザフスタンの方でね。
カザフの人とアルタイの人が、
2人でこう、お茶飲みながら話をしてたんですよね。
で、「あ、こんにちは」とか言ったら、
「うん」っていう感じで(笑)。
田中 それは、英語で話しをされるんですか?
巻上 ロシア語かな、そのときは。
ロシア語、僕その頃、始めて1年か2年ぐらいで。
田中 あっ! 勉強されてたわけですね?(笑)
巻上 そう。
で、「わっ、これはいい!」と思って。
田中 「これはロシア語使える!」と思って(笑)。
巻上 「ズドラーストビーチェ!」って(笑)。
田中 なかなか使えないですよね、
ロシア語なんて(笑)。
巻上 「わたしは巻上公一といいます」って、
ロシア語でちょっと紹介をして。
で、どういう人か知らなかったんですよ。
そのボロット・バイルシェフって人がね。
田中 ふつう誰だかわかんないもんですよ、それは(笑)。
巻上 コンサートが1日か2日後にあって、
そこではじめて誰がどんな奴かわかるんだけども、
まあ、ほんとに世界各国から口琴名人がきた。
田中 はぁー。
そんないっぱい名人がいるもんなんですか。
巻上 口琴名人で有名っていっても、
それ、口琴の世界で有名ってだけで(笑)。
その口琴自体がマイナーですから。
田中 それは、何人ぐらい集まるフェスティバルなんですか?
巻上 何万人だよね?
(とここで、急にお茶を運びにこられた奥さんに
 尋ねる巻上さん)
田中 へぇー! そんなに!?
巻上さんの奥様 そんなに来たっけ?
巻上 いたじゃん!
1万か2万ぐらい、いたんじゃないの?
いない?
5千人ぐらい?
巻上さんの
「冷静な」
奥様
数千人って感じですね。
巻上 ぜんぜん違うな(笑)。
だんだん少なくなってるじゃん!
田中 えー、それは、野外で会場が設けられて、
ひとりひとり紹介されて、
口琴を披露していくって感じですか?
巻上 そうそう。
田中 あー。
そこで、宿がおんなじだった人が出て来たと(笑)。
巻上 急に出て来てね。それも、すごい衣装で。
なんか、見たことない衣装だったの。
ま、モンゴルとか、あのへんの衣装っていうのは、
まあ、漢民族の衣装で
清朝の時代の服を着てますよね。
それとぜんぜん違ったんですよ。
なんか、アニメに出てくるような(笑)。
田中 ま、普段着なんでしょうね(笑)。
巻上 アニメ・ファンが大喜びするような格好をして。
すごい帽子かぶって。
でも、それはほんとうに衣装だったのね。
田中 あ、ステージ衣装だったんですね。
巻上 古代のアルタイ民族のものを復元してる。
だから、日本でいってみれば、縄文時代とか、
まあ、弥生時代だな、むしろ。
田中 わりとアルタイでも
極端な服を着てきたわけですね?
巻上 うん、そうそう、それは異様でしたね。
田中 伴奏が無くて、いきなりバーンとこう、
ベンベンベンベン始まるんですか?
巻上 そう口琴やったり、
トプショールっていう
2弦の撥弦楽器があるんですけどね、
それを弾きながら、歌い始めるんですよ。
で、歌が始まったら驚いたことにね、
聴いたことのない低音だったの。
田中 わははははは!
巻上 白いテントの中のステージだったんだけど、
すごい反響してね、
エコーがすごくうなってたんだけど。
で、その低い音がね、
もうテントが、ブ〜ッブ〜ッ!って
震える感じだったの。
田中 あ、実際にテントがですか?
巻上 うん。
もう、なんか、衝撃の音。
田中 いや僕もCDを借りて聴いたんですけど、
地鳴りみたいですね。
巻上 地鳴りの音ですよね。
田中 あれ、地鳴りですよね、もう(笑)。

<ワンポイント考察>
通常ひとはロシア語を急に勉強しはじめないわけです。
つねづね「準備の大切さ」を説く
イチロー選手でも考えつかないと思います。
しかし、巻上さんは無意識にロシア語を勉強していた。
この「無意識」ってものが無ければ、
ボロット・バイルシェフさんとの出会いも、
それから続く豊かな反響になりえなかったと思うんです。
「無意識の準備」というのが、
さまざまな事態を発展させる鍵じゃないですかねえ。
ってことは、「わけのわからない好奇心」を大事にし、
つねに未来の準備を無意識にしておくことが
大切なのかもしれません。
わたくしは、最近、
囲碁と建築と禁煙に興味を持っています。
 

2003-05-21-WED

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