田中 |
そろそろ「ビジネスに役立つ声のつくり方」について
聞きたいんですけど(笑)。 |
巻上 |
いろんな声を出したほうがいいね。
そうすると、喉の可能性っていうのが
広がってくるから。 |
田中 |
物まねしてみることが
大事ってことですかね? |
巻上 |
会社でも部長の物まねとか
よくするでしょ?
そういうのはね、けっこういいんですよ。 |
田中 |
はぁー。
それ、喉を運動させることになるわけですね。 |
巻上 |
そう、運動になるんですよ。
あと、その人の考えてること
つまり、思考がわかるわけ。
昔、寺山修司の物まねする人が
いっぱいいたけど、
物まねすることによって
思想模写もできるわけ。 |
田中 |
声帯模写が、思想模写になるわけですね。 |
巻上 |
うん。その物まねの対象の
考え方がわかるようになるんです。 |
田中 |
僕も仕事をするにあたって
企画のプレゼンテーションなどでは、
話し手によって、
企画の通りが良さとか悪さが決まってくるな、
という気がしていたんです。
「声を工夫してみたらいいんじゃないか」
と思ってみたりしますし。
声と伝達内容っていうのは、
実はすごい近いのかな、とか、
声と人柄っていうのは、
かなりオーバーラップしてるのかな
と思っているんです。 |
巻上 |
それ、すごい重要ですね。
というのは、
人って、あんまり内容を
聞いてないってことですから。 |
田中 |
あっ!
そう思うんですよ。 |
巻上 |
内容はあんまり重要じゃないんですよ(笑)。
コミュニケーションのいちばん重要なのは、
音とか‥‥。 |
田中 |
形式のほうですね。 |
巻上 |
そうそう、見た目とか、そっちですよ。 |
田中 |
ええ、スーツ着るとか。 |
巻上 |
そう!
そんだけですね、おそらく。 |
田中 |
例えば、裁判長という人がいてですね、
あの服じゃなくて、
仮にパジャマ着て、甲高い声出したら、
たぶん説得力ないと思うんですよ、
どんないいこと言ってても。 |
巻上 |
はっはっはっは! |
田中 |
その関係というのは、
すごく興味があってですね。 |
巻上 |
だから、違うところを見てるんでしょうね。
みんな伝達内容よりも、
その奥にある声質から感じるもの。
だいたいのその人を表す人間性とか伝えるもの。
そういったものを感じるほうが大きいみたいですね。 |
田中 |
そっちのほうがたぶん、
ダイレクトに入ってくる情報ですよね。 |
巻上 |
そうみたいですね。
それがいちばん大きいかな。
だから声を良くするっていうのはね、
説得力を増しますよね。 |
田中 |
ですよね。
じゃあ、いい声って、
どういう声なんですか? |
巻上 |
いい声はね、良く使ってる声ですよ。 |
田中 |
良く使う声(笑)。 |
巻上 |
うん、良く使われてる声。
部分的にしか声を使ってないと、
説得力がないですよ。 |
田中 |
さっきおっしゃった
響かせ方の幅がある声っていうのが、
いい声であると。 |
巻上 |
前に婦人公論で糸井さんと対談したんですけど。
そのときに鈴木松美さんが、
僕の声を測ってくれたんです。
普通に話しているときで160ヘルツ以上あるのかな。
普通の人の3倍使ってるんですって。
その幅の広い人のほうが説得力がある
そうなんです。 |
田中 |
その周波数の振れ幅が大きいということですよね。 |
巻上 |
うん。 |
田中 |
そのほうが、抑揚つけたりとかしやすいってことですか。 |
巻上 |
そうですね、
だから、いろんなレベルで話をすることができる。 |
田中 |
っていうと、中身が同じことを喋ってても、
相手に対して納得されかたとか、
相手の説得されかたが、
違ってくるってことですよね(笑)。 |
巻上 |
明らかに違うでしょうね。
それはやっぱり、
僕は声をいろんなふうに
使っているのと同時に
耳も育ってる思うんですよ。
いろんな音やいろんなレベルの倍音聴いてね。
ときどき、嫌なこともありますけどね、
いっぱい聞こえ過ぎてしまって。 |
田中 |
あ、もう、ノイジー過ぎるわけですね。
余計な音まで拾っちゃう耳なんですね。 |
巻上 |
そうそう(笑)。
普通の人はもうカットしてる音をね、
聴いてるから。 |
田中 |
ってことは、いい声を作ろうと思えば、
いろんな声を聴くってことも、
大事だってことですよね。 |
巻上 |
いろんな声、聴いたほうがいいですよ。
都会はね、あんなに音に溢れているようで、
意外に音の幅っていうのは少ないそうです。 |
田中 |
平板なんですか。 |
巻上 |
うん、でもジャングルとか行くと、
すっごい幅があるんだって。
そういうところにいると
耳から豊かになるそうなんです。 |
田中 |
耳が豊かになってくると、
自分も豊かに出していける
ってことになるわけですね。 |
巻上 |
で、都会にいるときは、自分で出す。
いろんな音出して(笑)。 |
田中 |
巻上さんは無理矢理
自作自演できますからね。 |
巻上 |
お、耳が気持ちがいいってね(笑)。
喉の快楽は耳の快楽ですよ。 |
今泉 |
日本で普通に言葉で使ってるのって、
例えばミ、ファ、ソぐらいの、
3度ぐらいしか使ってないっていいますよね。
それに幅が増えると、
抑揚がつけられるってことになりますよね。 |
巻上 |
そう、だからプロフェッショナルで
やってる人っていうのは、
そういうのよく解ってるわけじゃないですか。
理論的にわかってなくても、
経験的に知っていくわけですよね。
だから、いろんな声出してみようとか、
いろいろ勉強するんだけど。
普通の人は、そんなにしないですよね。 |
今泉 |
意図的にやらないときっと、
増えないですよね、それは。 |
巻上 |
うん、だから、ボイスのレッスンってね、
会社員にもね、すごく役に立ちますよ(笑)。
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