感心力がビジネスを変える!
が、
感心して探求する感心なページ。


【今回の感心力】

「智慧の実」イベントでのインターネット実況中継や
ほぼ日@六本木ヒルズにおけるT部長との対談
本コンテンツ以外でのほぼ日課外活動が目立っていた
感心力の男こと田中宏和。
今回はイギリス、ロンドンに拠点を置く
世界中から注目を集めるクリエイティブ集団
トマトのマネージングディレクターである
スティーブ・ベイカーさんがあたためている
「クリエイティブ・センター」についての
ビジネスミーティングでのヒヤリングを
そのまま感心力インタビューとすることを思いついた!

トマトについてはこちら
http://www.tomato.co.uk/
クリエイティブワークショップについてはこちら
http://www.tomatoworkshops.com/
このワークショップにご興味がある時は
schooljp@tomato.co.uk
こちらまでお問い合わせください。

【今回登場する人】



Steve Bakerさん

イギリスはロンドンに拠点を置く
クリエイティブ集団トマトの
マネージング・ディレクター。
今回はテレビ朝日の
新ロゴをトマトが
製作したことを期に来日。
インタビューの際、
何かと本コンテンツ担当である
AOR西本の名刺を
いじっていたのが
印象的であった。


感心力の男

本コンテンツ担当のAOR西本の
結婚披露宴において
PowerPointを駆使した
プレゼン形式の新郎新婦紹介を披露した
感心力の男。
「さすが代理店のマーケ担当」
と、いえる内容に感嘆した
出席者の中からは
「あの人とウチの娘を
見合いさせたい」
という
かなり真剣なオファーが
出るほどであった。
今回は2度目となる
海外からのお客さまへの
インタビューとなった。

第1回 クリエイティブ界の人気ブランド。


4ヶ月ぶりのまったり更新、おひさしぶりです。
感心力リローデッドであります!
大げさ気味の出だしついでに、
まずは、感心力レボリューションズしておりましたと、
近況報告させていただきますね。

じつは、わたくし、禁煙運動にいそしんでおりました。
そのきっかけは、
忘れもしません5月のある日。
出先のとても禁煙なミーティングルームで
長い長い会議を終えたわたくしは、
路上禁煙区域なる千代田区を急ぎ足で駆け抜け、
ニコチンニコチンとつぶやきながら、
眼についた喫茶店に入ったわけです。
椅子取りゲーム並みの俊敏さで席に腰をおろし、
たばことライターをにんまり取り出したところ、
こんな店内表示がっ。
「健康増進法により当店は全席禁煙とさせて・・・」
なに〜〜、ここは喫茶店じゃないのかあ!!!
衝撃映像でしたね。
そんな頼みもしないのに周りで盛り上がる
「喫煙の不自由」に業を煮やし、
「ええい、このさい止めてしまえ!」と、
5月31日の世界禁煙デーから
律儀な禁煙者に成り果てたのであります。

この間、
体の調子がいいからちょっとむせてみたいとか、
阪神優勝記念に一本吸ってやろうかとか、
再煙をきつく思ったり願ったりもしましたが、
おかげさまで、
禁煙者としてすっかり安定期に入りました。
「あとは産むだけ」って、
妊娠したわけではないですからね。
いや、ものの弾みですよ。
ともかく「健康が増進中!」と
思い込むようにしています。

そんなこんなでしばらくの間、
禁煙にのたうちまわったり、
阪神の優勝に浮かれたりしていたのではあるのですが、
小刻みな感心もしておりました。
先月、仕事でヨーロッパのデザイン会社を
まわっておったのですが、
その訪問先のうちのお一人が
今回のインタビューのお相手なのです。
イギリスはロンドンに拠点を置く、
トマトというクリエイティブ集団の
マネージング・ディレクター、
日本で言うなら
営業統括責任者というところでしょうか、
そのスティーブ・ベイカーさん。

いま「トマトというクリエイティブ集団」と書きました。
「トマト」とは「tomato」と書く、
野菜を名前にした会社名でありまして、
http://www.tomato.co.uk/
そして、
「クリエイティブ集団」の意味するところですが、
とにかく何でも広範にクリエイティブする人たち、
といったところです。
グラフィックデザイン、音楽、映像、広告、
それからドキュメンタリーフィルムに、Web、写真、
インテリアデザイン、建築などなど、
よく言う「多岐にわたる」わけです。

そう、「ほぼ日」読者のみなさんも、
必ずやこのトマトの作品に
出会ってらっしゃるはすですよ。
一番人気のところですと、
トマトのメンバーの二人は、
あのテクノグループ、
アンダーワールド(underworld)のメンバーであります。
また、身近なところを挙げますと、
SONYのすべてのテレビ広告の最後に
1秒ぐらい流れる
ごちゃごちゃっとした映像ありますよね。
あれです。
こんな説明でいいのか不安ではありますが、
みなさまに思い起こしていただけたことを祈念しつつ、
最近の例ですと、
テレビ朝日の新しいロゴマーク。
あの毎度毎度色や動きが忙しく変化するやつですけど、
一連のデザインはトマト社謹製であります。

で、そんなトマトのスティーブ・ベイカーさん、
ロンドンでビジネス話をしてしばらくも経たないうちに、
テレビ朝日の新ロゴ導入で来日する機会に、
折り入って、ひとつ話をしたいことがあると、
連絡が入ったのでした。
なんでも仕送りを増やして欲しいとか
そういう話なはずもなく、
今あたためている構想、
「クリエイティブ・センター」の話をしたい、
とのこと。
よくわからないままに、
感心の予感がしたわたくしは、
AORに転身した西本乗組員に声をかけ、
この感心力インタビューと相成ったのでありました。

それでは、さっそくスティーヴ氏の話から。

スティーヴ この10月にアメリカ、ドイツ、日本を結んで、
3ケ所同時にクリエイティブ・ワークショップを
することになりました。
http://www.tomatoworkshops.com/
今まで、東京やニューヨーク、ベルリン、台北など、
世界の各都市で
単発のワークショップを行ってきたのですが、
グローバルに連動したものは初めての試みです。
田中 トマトで行われるクリエイティブ・ワークショップとは、
どんなものなんですか?
スティーヴ 言ってみれば、
「クリエイティブの学校」のようなものでありながら、
ちょっと「学校」とは違うものなんです。
われわれトマトのクリテイティブスタッフが課題を出し、
参加する人たちが
よりクリエイティビティを発揮するために、
自分が創りたいものを創り、実験する。
それをわれわれが導いていく場が、
クリエイティブ・ワークショップなわけです。
学校でいう「先生と生徒」という
「教える」「教えられる」関係というよりは、
お互いに刺激を与えあい学びあう関係なんです。
田中 そのクリエイティブ・ワークショップの延長線上に、
クリエイティブ・センターというものをお考えなのですね?
スティーヴ そうなんです。
ESIN(エシン)というプロジェクトネームで
呼んでいるのですが、
クリエイティブ活動のためのセンターを構想しています。
われわれが使う「クリエイティビティ」という言葉は、
広く取っていただいてよくて、
例えばグラフィックデザインだとか、
そういうことに捕われない、
とにかく「創造性」ということです。
すでに今までワークショップに参加した方の中には、
建築家もいれば宝石のデザイナーもいるし、
ミュージシャンもいるし、
プロダクトデザイナー、映像作家、ウェブデザイナーなど、
いろんな方がいらっしゃるんですね。
ですから、仮に生徒と呼ぶんですけれども、
そのセンターに参加する人たちっていうのは、
お金を払って、
その場にいる権利を
獲得するわけなんですけれども、
同時に自分の作品を
そこで創ることになるわけなんですね。
その作品の著作権は、その創った本人が持ちます。
だから、そのクリエイティブ・センターがすることは、
その創られた作品とビジネスの世界の橋渡しをすること。
ですから、その創られた作品は、
展示会で発表されたり、出版されたり、
いろんな形で世間の目に見てもらうことになりますし、
同時にクリエイティブ・センターを通して、
ダイレクトに企業と結びついて、
それが商品化されたり、
他の企業の活動に使用されたりということをする。
田中 クリエイティブをビジネスにしていく試みとして、
とても興味深く感じます。
その作品にまつわる様々な権利の売買については、
どう考えていらっしゃるのですか?

感心力インタビューの図。
やりとりは、英語にて 。
スティーヴ このようなクリテイティブの育成機関となるような、
学校だとかワークショップの場合、
参加者の作品の権利が
組織に移ってしまうっていうところも
たくさんありますけれども、
私はそんな考え方には反対です。
作品の著作権っていうのは、
あくまでもアーチストに帰属すべきである、と。
その作品がどういう形であれ、
使用されたり販売されたり流通されたりとか、
っていうことがなされた場合には、
その間に入ったトマトが
コミッション(手数料)を取ると考えています。
使用許諾のコミッションですよね。
実はトマトという会社もそういう形を取ってるんです。
田中 えっ、トマト自体がトマトのスタッフに対して、
コミッションを取っているのですか?
スティーヴ ええ。
トマトは、
フリーランスのクリエイティブのネットワークです。
トマトは、
お客様から彼らに対して払われるフィー(報酬)から
コミッションを取るんですね。
そういうふうにトマトという組織が、
成り立ってるんです。
田中 はぁ〜、その仕組みはおもしろいですねえ。
トマトという組織自体が、
個人個人が集うクリエイティブの工場でありつつ、
出来上がった作品の販売代理店でもあるわけですよねえ。

<ワンポイント考察>
みなさん、
じぶんの勤める会社に手数料払ってますか?
この直前のくだり、
サラリーマン業を営んでいるわたくしには、
たいへんおもしろい働き方、給与体系であることよ、
と思うのです。
でも、ひょっとしたら、
次の時代の会社と人の関係とは、
こんな姿かもしれない、とも思うのです。

人間の労働、働きってことは、
思いきって原点に立ち返って考えると、
ひとがなにかに対して働きかけて、
何かの報酬を得るということで、
たぶん狩猟採集で、もろ肌出してた時代から
綿々と続いていることだと思います。
矢尻で鳥を落として、食料にするみたいな
労働の原始性みたいなものは、
今でいうと、
完全フリーランスの働きですよね。
フリーとも言えるし、
明日の仕事の保証がない、とも言える働きです。

一方で、日本的な「サラリーマン」は、
明日だけでなく、
場合によっては、
一生の仕事さえ保証されていたわけです。
会社に集うみんなが一致団結して、
同じものをできるだけ長くたくさんつくる、
ということは、
できるだけ同じことを繰り返すことで、
成功してきたから実現できた働き方、
つまり雇用のかたちだったんでしょうね。

この両極の中間として、
これからの働き方と
その対価の得かたが生まれそうに思います。

トマトの取っている
売り上げの再分配の仕組みとは、
自分の働きがそのつど他人に売れないことには、
金銭という報酬を手にすることができない、という
シビアなものです。
しかし、それは、
いつも違うものを、異なるものを創り、
伝えつづける
個人のクリエイティビティを
ベースにした働きにとってみれば、
自然なことなのかもしれないなと思ったのです。
つまり、繰り返しが効きにくい
個人の能力をテコにして、
リターンを得ることですからねえ。

このトマトのような
会社と働くひとの関係は、
トマトがクリテイティブ界の
人気ブランドたりえているから
成り立つわけですよね。
トマトに所属することで
いい仕事を成し遂げる
チャンスが多そうと思わせる可能性に、
優れたクリエイティブスタッフが引き寄せられ、
また、それがいいプロジェクトを
呼びこむことにつながります。

いい仕事を得るための手数料を会社に払って、
できるだけ大きな仕事や
じぶんを成長させる仕事を得ていく。
今でも、美容師さんとか、
吉本興業の芸人さんとかの歩合制は、
これにあたりますよね。

社会が、クリエイティブな働きを
重視すればするほど、
ひとりひとりの力量が問われ、
個々人の出来高性ベースにした
クリエイティブ・サラリーが一般的な世の中が、
ひょっとするとやってくるのかもしれません。
そのとき、会社という存在は、
個人のエージェント化していくんでしょうね。

あ、思わず長い考察になってしまいました。

「ほぼ日」のみなさんは、会社に対して、
「時間」を売っていますか、
それとも「仕事」を売っていますか?
こんなじぶんへの問いかけが、
じぶんの仕事のクリエイティブ度を
図ることなのかもしれません。
 
ではでは、次回に続きます。

2003-10-27-MON

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