ほぼ日 |
前回のお話で、
新宿のカフェーには早稲田の学生が
出入りしてたっていうのを聞いて、
ちょっとビックリしました。
お金、あったのかな? って。 |
小山 |
ちなみに銀座のカフェーには
慶応生とかも行ってたみたいですよ。
慶応大学の学生が
女給さんとつきあってて
どうのこうのとかって。 |
ほぼ日 |
あらら。慶応は昔からお金持ちで
プレイボーイだったんですね。 |
小山 |
女給さんは、
自分はパトロンが他にいても、
学生とつきあうことがあったことを
小説で石原慎太郎が書いてますよね。
それが昭和20年代の話だから、
戦前もそういうのが
あったんじゃないかと思いますよ。
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ほぼ日 |
ふうむ。学生生活って、けっこう
華やかだったんですね。モテモテで。
今以上に、
大学に行かない時代だから、
東京の学生イコール、
やっぱりお坊ちゃん、
お嬢ちゃんですよね。 |
小山 |
そうですよね。
高等学校や大学に行けるっていうことが、
ひとつ大っきなものだったし、
ましてや、私立のそこそこいい大学
っていうふうになると、
やっぱりかかるお金も違うし。
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ほぼ日 |
東京の学生生活は、
マスコミをにぎわしていた感じが
展覧会でも伝わってきました。
女学生の運動会の様子が
絵になってたりしてましたね。 |
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小山 |
そうなんですよ。
『風俗画報』という、
明治22年から大正5年まで
出ていた雑誌に掲載されたものを
展示しています。
今のお茶の水女子大の
付属高校だと思うんですけど。 |
ほぼ日 |
障害物競走かなんかをしてましたね。
袴はいてね。 |
小山 |
そう! わたし、あの絵は驚きました。
だって、運動会の種目に
「髪結競争」があるんですよ。 |
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ほぼ日 |
そう、変な種目いっぱいありましたね。
それが絵になって、
雑誌のグラビアになってることに驚いた(笑)。
憧れだったんですね。
今で言うと、何?
読者セレブみたいな? |
小山 |
うーん(笑)、まあ、
そんな感じだったんじゃないのかな。
やっぱりアコガレの、
東京の学校の女学生ですからね。 |
ほぼ日 |
そうですよね。
そんな簡単に行けなかったですよね。
で、地方から東京の寄宿舎のある
女学校に入れる、って、
よほどお金持ちじゃないと! |
小山 |
日本女子大の女学生については
こんな歌があるんですよ。
「ゴールド眼鏡のハイカラは、
都の西の目白台、女子大学の女学生。
片手にバイロン、ゲーテの詩、
口に唱える自然主義、
早稲田の稲穂がさーらさら、
魔風恋風そよそよと‥‥」 |
ほぼ日 |
ポン女の女学生は、
早稲田の男と恋仲になり、
バイロンとゲーテなんか読んじゃって、
金縁めがねかけてて、
かっこいい~! みたいな。
すごいな、学生生活が
こんなにもてはやされてたっていうのは、
すごいですね。 |
小山 |
憧れの対象は「女学生」だったんですね。
大きなリボンをつけて、
袴を着けて、マーガレットという髪形をした、
東京の女学生っていうのが、
すごーく、憧れだったんです。
この髪形です。 |
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ほぼ日 |
マーガレットって、洋風の名前なのに
和風の髪形ですね。
で、この人形とかに
なったりしてたんですか。 |
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小山 |
そうですね。
このお人形のスタイルが
そのまま当時の女学生ですね。
ひな人形と一緒に飾ったんだそうですよ。 |
ほぼ日 |
へーえ!
そういえば、学生生活の様子は
絵はがきにもなってましたよね。 |
小山 |
そうなんです。
絵はがきって、すっごくたくさん
発売されたんですよ。
何でも絵はがきになってた時代が
ありました。 |
ほぼ日 |
何でも絵はがき?
それ、なんだろう?
何の役割なんだろう? |
小山 |
雑誌とか新聞の特集記事に近い役割ですね。
だから「災害」の絵はがきとかも
多いんですよ。
震災絵はがきとか、水害絵はがきとか。 |
ほぼ日 |
え? それは、目的はなに?
忘れないように? |
小山 |
いえ、そういう「記念」ではなくて、
実況を伝えるってことですね。 |
ほぼ日 |
絵はがきが、メディアだったんだ。 |
小山 |
で、そんな中で、よく売れたもののひとつに、
学校の絵はがきっていうのも、あったんです。 |
ほぼ日 |
コレクションとかっていうより、
使ってたんですか? 実際に。 |
小山 |
コレクションされていたのと同時に、
もちろん使われていますよ。
たとえば早稲田の、
野球の絵はがきを見ると、
「お兄ちゃんが今
どこにいるのかわかるか?」って。
「早稲田の試合を見に行ったんだぞ」って。 |
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ほぼ日 |
おみやげで買って、
郷里の弟や妹に出したんだ!
都会生活を田舎に伝えるメディア。 |
小山 |
だって、この早稲田の野球選手の後ろ側に、
人、密集してますもん。 |
ほぼ日 |
ほんとだ。 |
小山 |
おじさんとか若者とか子どもとか。 |
ほぼ日 |
帽子かぶってますよね、みんな(笑)。 |
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小山 |
かっこいいですよねー。
帽子っていうのが、
男の人が洋風なものを取り入れた中で、
最初に近いものだったんですね。
和服に帽子、とかっていうのもあった。 |
ほぼ日 |
和服に帽子!
情景が目に浮かびますね。
夏はパナマ帽と麻の着物と。
あ、この絵はがきも面白いですね。
女子美の文化祭? |
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ほぼ日 |
この3人はきっと‥‥。 |
小山 |
わいわい話してるんでしょうね~! |
ほぼ日 |
「超すごくない?」みたいなことを
言ってるはずだ(笑)。 |
小山 |
「やばくない?」とかって(笑)。
「これってどうよ?」とか(笑)。 |
ほぼ日 |
そうそう(笑)。
言葉遣いは変わっても、
なにか、変わってないものが
あるような気がする写真ですよね。 |
小山 |
で、真ん中の子が、
草履をもてあそんでる
感じがあるんですよ。 |
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ほぼ日 |
あ、ほんとだ。半分脱いでる。
お行儀悪い(笑)! |
小山 |
右の子が、真ん中の子の肩に手をかけて。 |
ほぼ日 |
仲よさそう。
かわいいですね、すごく。
女子美か~。 |
小山 |
昔は美術学校っていっても、
絵の得意な女の人が、
勉強を続けられるっていったら、
もうここぐらいしかなくて。
日本で絵が好きな女の子にとっては、
憧れの学校だったと思うんですよね。 |
ほぼ日 |
そうでしょうねー。
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