ほぼ日 |
自分がこの時代に生きていたら、
物見遊山をしてるのか、
武器をとって立ち上がるのか、
どっちだろうなと思って見たりしました。
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市川 |
たとえば人のために命を落とすとかね、
今だとあり得ないですよね。
で、このときは、
殺し合いをした時代なんだけども、
殺す側も殺される側も、
一片の私欲があったわけではないんですよ。
そこがね、今とほんっとに、
ほんとに違うメカニズムだなって思ってて。
純粋な正義感だからこそ、
すごく殺し合いになっちゃった。
で、そういう時代っていうのは、
すごく不幸な時代だったと思うんですよね。
平和な時代じゃないですよね。
理不尽なことがいっぱい起きたし。
似たような時代は、
第2次世界大戦中ですよね。
特攻精神なんていうのもほんとにそうで。
自分を犠牲にして国を守りたいっていう、
そういう精神。美しいけども、
それが強要された時代は、
けして幸せな時代じゃないですよ。
でも、そういう精神、
今までは悪い面しか
見てこなかったんだけども、
現代人が受け止めるメッセージとしては、
他人のために命を投げ出す人が
いっぱい出た時代かぁ、とか、
正義のために殺し合いをしたんだなぁ、
そういった思想が、ほんとにもういちど力を
持つことってあるのかな、とかね。
あるとしたら、もうほんとにとんでもない
危機の時代がやってきたら
そうなるのかもしれない。
それは不幸ですよね。
僕らは、そういうことを、
企画しながら感じるんです。
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ほぼ日 |
そういう意味でも、
たてもの園の展覧会を見てから
江戸博に来てもらったほうが、
理解しやすいですね。
もうすこし、特別に解説をして
いただけますか?
市川さんのピックアップで。
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市川 |
ええ。「ペリー提督横浜上陸図」。
これ見てね、こういうことに気がつくと
面白いですよ。
アメリカ軍はピシーッと規律正しく
並ぶんです。で、一方、日本人。
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ほぼ日 |
ほんとだ(笑)。
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市川 |
ダラダラっと並んでますね。
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ほぼ日 |
面白い。すごいですね(笑)。
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ペリー提督横浜上陸図 W・ハイネ画
江戸東京博物館蔵
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市川 |
統率のとれた軍隊というのは
とっても近代的なんです。
前近代的な軍隊っていうのは、
小さい主従関係の集まりなんです。
戦場に行くとご主人様がいて、
それは馬に乗ってて、
馬の口取りとか草履持ちとか槍持ちとか
いろいろ、そういう集団の集合なんです。
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ほぼ日 |
はぁー、面白い!
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市川 |
ところが、近代的な軍隊っていうのは、
命令一下、捧げ銃! とか、撃て!
バンバンバン! みたいな、そういう軍隊。
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ほぼ日 |
これ、よく見ると面白いですねぇ。
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市川 |
見過ごしちゃうんですが、
ああ、犬がいる、とかね(笑)。
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ほぼ日 |
日本軍の雰囲気は、この犬なんですよね。
のんびりしちゃってるのね。
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ほぼ日 |
これ、何持ってるんですか?
肩に担いでる‥‥。
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市川 |
これは弓の箱ですね。
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ほぼ日 |
じゃあ、武器を持ってると。
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市川 |
ええ、武器なんです。
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ほぼ日 |
でも、その前のほうには、
武器を持ってない
町人みたいな人がこう‥‥。
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市川 |
うん、なんかね、いますよね、ええ。
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ほぼ日 |
あとこの右側のアメリカ軍の列、
後ろにいるのは物見遊山の人たちですか?
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市川 |
私も実はね、家来なのか物見遊山なのか、
ここまで考証に至っておりません。
ちなみに、御稲荷さんがあって
大きな木がありますよね?
これが今、横浜開港資料館にあるんです。
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ほぼ日 |
へぇー! すごい。
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市川 |
ペリー艦隊がたくさん描かれてますよね。
で、その周りにね、実におびただしい、
小さい日本の軍船がブワーッ、びっしり。
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ほぼ日 |
あは!
実際、びっしりいたんでしょうね。
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市川 |
奥のが黒船でね、
デンデンデンデンと並んでますよね。
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ほぼ日 |
勝ち目ないね‥‥。
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市川 |
でね、その周りにものすごく
小っちゃくいっぱいいっぱい
描かれています。
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ほぼ日 |
日本の船に乗ってる人たちは、
じゃあもう武器も持って、
何かあったら‥‥(笑)。
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市川 |
うん、そういうことですよね。
対峙してるつもりなんですけど、
向こうは余裕ですよね。
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ほぼ日 |
ペリーが来る前も、ちょくちょく
外国の船が来て、
その周辺に住んでる人たちはもう、
あ、また来てるね、
みたいな感じだったとか。
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市川 |
うん、そうなんです。
我々は学校教育の中で
ペリー来航があまりにも衝撃的だから‥‥。
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ほぼ日 |
唯一無二だと思ってるんですよ、それ。
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市川 |
違うんです。で
根室にロシア人がやってくるとか、
そういったレベルではなくて、
もうかなり日常的に、
外国船、見えるんですね。
で、その、有名なのは、
たとえば元文の黒船事件とか。
文政7年(1824)に水戸藩領の大津浜に外国人が上陸する
事件があるんですよ。
で、それを機に、あの会沢正志斎が、
『新論』っていう本を書いて、
水戸の尊王攘夷思想の先鞭をつける。
なぜ水戸が尊王攘夷かっていうと、
いち早くそういう経験をするわけですよね。
水戸の国学が発展してく礎には
国学的な前提っていうのも
もちろん光圀以来あるんだけれども、
外国人がやってきたという事件が
あったからこそなんですね。
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ほぼ日 |
ペリーとかも、どれが正しいのか、
っていうくらい。
天狗か鬼か、みたいに描いてる。
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市川 |
当時の日本人の怖いものっていうと、
やっぱり天狗になっちゃうんですよ。
これが何となく面白い(笑)。
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左:瓦版「北亜墨利加人物 ペルリ像」
右:瓦版「北亜墨利加合衆国 水師提督ペルリ之肖像」
(神奈川県立歴史博物館蔵 丹波コレクション)
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ほぼ日 |
それにこれ、着てる服が違いますよね、
どう考えても。
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市川 |
これはどう見ても
チャイニーズですよね(笑)。
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ほぼ日 |
勝手だなぁ(笑)。
言ったもん勝ちっていうか。
俺は見たぞ、って言ったもん勝ち。
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