ほぼ日 |
参考資料のほうに、背中に文字が。
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銃隊式沿革図「集中断の武士」
写真提供=靖国神社 遊就館
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市川 |
「赤心報国」ってね、
近藤勇の「志大略相認書」っていうのが
あるんですよ。文久3年3月、
京都に来て、まだ新選組以前なんですよね。
そのときに自分の志は
こういうことだっていうね、
滔々と書くんですよ、近藤勇は。
その裏表紙にね、「赤心報国」って、
書くんですね。
やっぱりここにもいたか「赤心報国」
みたいな感じなんですよ。
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志大略相認書 個人蔵 写真提供=日野市ふるさと博物館
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ほぼ日 |
メッセージTシャツみたいですね。
流行語みたいなもんですよね、若者の。
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市川 |
流行語なんです。やっぱり当時の人を、
捉えて放さなかった言葉なんですよね。
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ほぼ日 |
じゃ、これ、ユーモアというふうに
見ちゃいけないんだな。
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市川 |
いや、ユーモアとして見ていただいて
いいんですよ。もちろん、見るのは。
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ほぼ日 |
見るのは自由?(笑)
そう思うと、近藤勇っていう人が
すごく、近づくんですよ。
青春を感じて。
今、また、自分で縫ったかもしれないって
聞くと、また(笑)。
ところで、新選組の「誠」っていう、
シンボルですけれど、
旗があると思ったら、ないんですね。
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新選組袖章 霊山歴史館蔵
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市川 |
旗は実在していません。
絵には2点だけ描かれてるんです。
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ほぼ日 |
今回出ていますか?
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市川 |
はい、1点は「新選組行軍録」。
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ほぼ日 |
あ、ほんとだ。
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新選組行軍録「元治元年乙丑異聞録」
小島資料館蔵
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市川 |
もうひとつは「伏見鳥羽戦争図(草稿)」。
この中のね、第7図に出てるんですよ。
これ、貴重な絵ですね。
馬上がおそらく
土方歳三だと思うんですけど。
伏見奉行所を出る図っていうんですけどね。
第3図っていうやつがね、背中に。
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伏見鳥羽戦争図(草稿) 上:第7図 下:第3図
京都国立博物館蔵
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ほぼ日 |
背負ってますね、「誠」。
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市川 |
ええ、背負ってます。
こういう感じなんですよ。
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ほぼ日 |
これ、デザイナーがいたんですか?
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市川 |
芝居の忠臣蔵から
取ったっていうふうにも言われてますけど。
確かに、芝居絵の中では
こんなのが出てきます。
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ほぼ日 |
ただ、色使いは、たぶん違いますよね。
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市川 |
浅葱だというんですけどね。
今は青がすっかり定着してますが、
あんな色は当時はあり得ないんです、
ほんとうは。
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ほぼ日 |
でもイメージが青ですよね。
この展覧会のテーマカラーも青で。
あれはどういうふうにして決めたんですか?
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市川 |
青雲の志ですね。
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ほぼ日 |
青春の青だったり。
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市川 |
そう、青春の青だったり。
青の時代‥‥。
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ほぼ日 |
ほんとの色はわからないけど、
ということですね。
ところで、新選組って、
京都に行ってからは、ちょっと評判が、
必ずしも良くなかったじゃないですか。
そのころ、東京での評判っていうのは?
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市川 |
これは注意深く同時代の記録を
見てみる必要がありますね。
あの、江戸ではたぶん、
すげぇやつらがいるぞ、
とかいうふうに言われたんじゃないかなと
思うんです。近藤の手紙にもね、
悪評が伝わってると思うけども、
世間で言われてるほど悪いことは
我々してないから安心してくれ、
みたいに書いているんですね。
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ほぼ日 |
そうでしたか。
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市川 |
「勝海舟日記」で、
池田事件に関する記事がふたつ出てきて。
ふたつとも批判的なんですけれども、
神戸の彼の操練所で教えた
望月亀弥太っていう土佐の浪士が
殺されるんですよね。
無辜の民を殺すっていうんですね。
無辜の民っていうのは
何の罪もない人っていうことですから、
すごい批判的に捉えてるわけですよ。
もうひとつは、坂本龍馬がやってきて、
京都の情勢を語ったっていう下りがあって、
その中で、探索と称して、新選組は、
軍資金を巻き上げるとか、
いろんな悪事を働いとると。
ひじょうに悪くネガティブに捉えてます。
ただし、それは
坂本龍馬の報告なんですよね。
で、ひじょうに評判が悪い。
ただし江戸の人たちの記載の中で、
どういうふうに表れるかは、
これ、私、見たことないです。
これはひとつ注目して、
そういう目で日記とか
見てみる必要がありますね。
確かに池田屋事件で、
全国の知名度を得たなんて
よくいうんですけど、
じゃ実際にどういうふうに伝わったのか。
事件の本質をどういうふうに
理解したかとかね。
とにかく良くは伝わらなかったっていうのは
間違いないんですよね。
近藤の書簡で「心配するな」みたいなことが
書いてるのからすると、
そうなんでしょうね。
自分たちもわかったんでしょう。
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