「美しき日本 ― 大正昭和の旅」展

江戸博学芸員新田さんと小山さんのさらにくわしい解説

渡邊版画店は今でも銀座にあるお店なんですね。
ハイクラスの外国の方だと、
車で市内観光とかするんですけど、
お土産物が欲しいっていうと
ここを案内してたみたいなんです。
ここで新しい版画を買って帰ってた。
この渡邊木版画店プロデュースで、
川瀬巴水という人が作家活動をしていたんです。
川瀬巴水の企画をしたのが
渡邊版画店というところで、
日本画家の鏑木清方に師事していた川瀬巴水は、
同門の伊東深水の木版画に感銘を受け、
新しい版画の制作に力を注ぐ
渡邊版画店の渡邊庄三郎へ
写生帳を見せたことを契機として、
絵師として活動することとなりました。

この渡邊版画店が彼の
外国での人気の秘密なんですよ。
プロデューサーである
渡邊木版画店の渡邊正三郎っていう人も
外国の人に物を売るってことに関して
目利きだから、
そうやって作家を育てていたっていうのも
あるのでしょう。
川瀬巴水の版画は当時で5ドル。
高価なお土産だったんですが
日本に来られるくらいの人だったら、
何枚か買っても大丈夫という
値段設定だったのでしょう。
ちなみにアメリカで買うと12ドルしたそうです。

これは渡邊版画店の、昭和14年の広告。
「Children of Japan」に掲載されていたものです。
渡邊版画店はアメリカで展覧会を開催し、
海外でも名前を知られるようになりました。
この広告には、川瀬巴水の作品が
使用されてPRされていますね。

渡邊版画店は、
渡邊庄三郎という人物が創業しました。
渡邊庄三郎の版画とのかかわりは、
浮世絵商のもとで、浮世絵版画の輸出を
担当することから始まるんです。
明治39年(1906)に独立し、尚美堂を開店。
古い錦絵を扱いながら、
複製版画の制作を行なっていました。
明治41年より、新しい版画を刊行し、
翌42年に渡邊版画店の看板を掲げます。
そして、版元制度の復活、
伝統的な木版画制作の復興、
版画の普及を目指した
「新版画運動」を提唱します。
渡邊のもとで、版画の制作を行なった絵師は、
川瀬巴水のほか、伊東深水、橋口五葉、吉田博、
名取春仙、笠松紫浪などがいます。
外国人作家にも、フリッツ・カペラリ、
チャールズ・バートレット、
エリザベス・キースらがいました。

こちらは「東京二十景 芝増上寺」、
川瀬巴水の大正14年(1925)の作品です。
この版画は、人物が和傘を傾ける部分など、
浮世絵の歌川広重のイメージを
意識して制作しています。
大正14年に出版されたのち
国内外から注文が相次ぎ、
昭和8年を過ぎたころには
3000枚を突破する売れ行きでした。
渡邊は作品の質を下げないため、
ついにはこれを絶版としてしまいました。

(小山)


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