いや、だからその、法廷っていうのは
現実の象徴のような場所じゃないですか。
そこにポンと、幽霊を置くっていうのは、
リアルっていうことから考えると‥‥。
無理がありますよね。
このタイトルで、
もう幽霊が出てくるって知ってるお客さんは、
どうしたって「作り話」を観るわけです。
「三谷さんが今度はすごい作り話をやってるぞ」
っていう気持ちで観に来る。
実際ぼくらもそういう感じで、
映画を観はじめたんですよ。



はい。
この設定‥‥どうなるんだろう。
ここからもっていくのは無理だろう、みたいな。
一同 (笑)
ところが、今回もちゃんと最後には
いつもの三谷さんの、
「こんなお話がありましたとさ」
っていうステキなストーリーになって、
すっかり落ち着いて帰っちゃったんですよ。
あれはほんとうに、みごとでした。
今回は大前提がもう荒唐無稽なんです。
幽霊が裁判に出るっていうのが。
だから、それ以外の部分は、
なるべくリアルにしようっていうか、
あまり飛ばないようにしようと気を付けました。



はい、はい。
だから弁護士さんにも、
いろいろお話をうかがったんです。
「本当に幽霊が裁判に出るとしたら、
 どんな手続きが必要ですか?」とか、
「どういう法廷戦術を使われますか?」とか。
そこはリアルに行きたかったから。
そうしたら、弁護士さんがおっしゃるには、
「いや、そんなことは絶対ありませんから」。
一同 (笑)
弁護士さんもさ、そんな相談されても困るよね。
「いまだかつてそういう判例はなかった」って。
一同 (笑)
判例って大事ですからね、あれね。
「今までにそんなことはない」と。
「でも、もしあったとしたら?」
ってしつこくうかがったら、
ようやくひとりの弁護士さんが
教えてくださいました。
「あえて言えばですけども、
 証人が生きてるか死んでるかは関係ない」と。
「大事なのは、その証言に
 信憑性があるかないかですよ。
 そこを多分ついてくるでしょう、検察側は」
というふうにおっしゃったんで、
「あ、これは行けるな」と思って、
そのまま中井貴一さんのセリフに
使わせてもらいました。
ああ、あれはいいセリフでした。
だから、たぶん、
実際に幽霊が法廷に立ったら、
ああいうふうになると思いますよ。
うん、ほんとになったら愉快だね(笑)。
和田さんと三谷さんって体質的に、
ものごとのおもしろがり方が
近いような気がします、いつも。
そうなんでしょうね。
やっぱり思いますか、ご本人たちも。
そう。
なにせぼくは、和田さんから生まれたので。
和田さんが、
天馬博士みたいになってますよ。
一同 (笑)
今回、ほんとうにやりたかったのは、
ディズニーの『黒ひげ大旋風』とか、
『フラバー』とか、
なんかああいう、
あのテイストがやりたかったんです。
あぁ。
幽霊ものでね、
とくにアメリカだと、
『天国から来たチャンピオン』があって。



あ、はい、はい。
それのオリジナルがあるんです。
『ヒア・カム・ミスター・ジョーダン』
っていうんだよね。
邦題が『幽霊紐育(ニューヨーク)を歩く』
っていう。
そのミスター・ジョーダンが、
小日向文世さんの役なんだよね。
それで、名前もそういう名前になってる。
さすがです。
よくおわかりになりましたね。
‥‥すごい、すごいですね。
段田譲治っていう名前なんですけど、
それは、ジョーダンさんから取ったんですよ。



はあー、おそれいりました。
それは観てて、すぐわかった。
和田さんは、
三谷さんに似ている人間として、
あの映画を観てですね、
ここは俺もこうやりそうだとか、
そういうこと思うんでしょうか?
まあ、自分だったらどうするだろうっていうのは、
ちょっと考えたりするよね。
たとえば、あの幽霊の出し方を、
半透明にするとか。
ぼくだったら、そうするんじゃないかとかね。
半透明。
和田さん、半透明にしますか。
するかもしれない(笑)、ちょっと悩んでから。
大変ですよ、半透明は。
一同 (笑)
そうだね、あの映画は
幽霊が見える人と
見えない人がいるっていうのが
おもしろいところだしね。
そうなんです。
たとえば幽霊が刀で、
中井貴一さんに斬りかかるシーン。
これは、幽霊が見えない人の視点だと、
中井貴一さんがひとりで
ドタバタしてる絵になるって、
ぼくは現場で気づいたんですよ。
現場でいきなりですか、あれは。
だから中井さんにはひとり芝居で、
「うわぁ!」とか言いながら
延々逃げ回ったりしていただいて。
「すごい恥ずかしかった」
とおっしゃってました。
一同 (笑)
なるほどねぇ。
でも半透明でやったときに出るおもしろさも
やってみると、いろいろあるんだろうね。
そうですね、
実際、「幽霊は全員から見える」という設定で、
最初はアイデアを重ねていったんですよ。
そうすると、みんなから見えちゃうと、
タイムスリップしてやって来た落ち武者みたいな、
そんな感じになっちゃうんです。
そうか、そうか。
和田さんは、観客として観ながらも、
そこをどうする?
みたいなことを思われてるんですね。
うん、ちょっとね。
その観かたは、すこしうらやましいです。
でも、ずっと思いっぱなしじゃないよ。
ときどきね。
そういうむずかしそうなシーンはさ、
「ここは三谷さん、考えたんだろうな」とか。
「ちょっと悩んだんだろうな」とか。
そういうのは、チラッとわかるよね。



なんかあれみたいですね、
甲子園の選手のお父さんが観客席で見てるみたい。
一同 (笑)
あいつのことだから、あの高めの球、
引っかかるんじゃないか。みたいな(笑)。
おちおち観てらんないよ! っていうことは?
ないない(笑)。
ですよね、ちゃんとたのしんでるんですよね。
もちろん、そりゃあそうですよ(笑)。
(つづきます!)
2011-11-24 THU