おとなの小論文教室。 感じる・考える・伝わる! |
Lesson311 頭の中の見えない差 人には差がある。 たとえば、私と黒木瞳さんが並んだとして、 まわりの対応から、なにから、 ことごとく差があるのはあたりまえの話だ。 もしも、そんな状況に身をおくことになったら、 私も、少しは落ち込むだろうけど、 必要以上にくよくよ悩んだりはしないだろう。 差が明解だからだ。 まず容姿。 ひと目で見て取れる。 何が、どう負けたのか。 だから、かなわないとあきらめて、サバサバするか。 今日から少しでも黒木瞳さん目指して、努力するか。 差がはっきりわかるから、そこから前に進み出せる。 だけど、学力差とか、学歴とか 頭の良し悪しの問題になると、もやもやする。 読者の2人は、こう言う。
いわゆる私たちが、 「頭がいい」で片づけてしまっているものの正体、 実は、私たちは、その中身が、よくわからないでいる。 結局、なにが、どうちがうのか? たとえば、いわゆる「暗記型の学力」と、 小論文で求められる 「自ら考える力」だけでも180度違う。 そこからさらに 自分の考えを人に伝える「表現力」も違う。 だから、「頭がいい」のひと言で片づけず、例えば、 「あの人は情報処理能力が高い、同じ情報なら、 平均の倍速く、ほぼノーミスで情報が処理できる」とか。 「あの人は理解力に優れ、 人の話をよく聞き理解できる。 だから自分と距離のある人の話も 深く正しく理解する」とか。 「あの人は、 問題発見力がすばらしく、論理的思考ができる、 だから、問題解決能力が高い」などと、 もうすこし、きめ細かく 頭のよさを定義していくことができれば、 実生活・実社会で役立つイメージもわきやすいし、 なにが、どう負け、あるいは、勝ってるのか、 差を知る足がかりにもなりやすい。 何が、どう、負けてるのか? わからないままに、なんとなく比べられている、 なんとなく劣っている感じがする、 というのが、人間としては、いちばんつらい感じで、 先へ進みだせない。それは、 「なんとなく 自分の方が人間的にだめなんじゃないか?」 という、まちがった劣等感を生みやすい。 結局、なにが、どうちがうのか? それがわからないと、 大学行くにしても、行かないにしても、 何を捨て、何を得ることになるのか、 よく、わからない。 だから、勉強の、 わかりやすい部分だけにとびつくようにもなりやすい。 読者の2人はこう見る。
勉強が手段化されている。 それをとても残念に思う。 社会に出たとき有利なように、とは言われて久しいが、 子供が、愛され、認められる手段として、 というのは、聞いていて切なく、 この時代にますます増えそうだ。 人が声高に語らない頭の中の差を どうして私が問題にするかと言えば、 頭の中は、教育によって伸ばせる! そのことに確信があるからだ。 どんな動機でも、頭の中は伸びる。 よこしまな動機で勉強したっていい。 でも、どんな動機を持つかによって、 頭の中のどの能力を花開かせることができるかは、 ずいぶん、違ってくると、私は思う。 ………………………………………………………………… 『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』 (河出書房新社) 『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』 河出書房新社 『おとなの小論文教室。』河出書房新社 『考えるシート』講談社1300円 『あなたの話はなぜ「通じない」のか』 筑摩書房1400円 『伝わる・揺さぶる!文章を書く』 山田ズーニー著 PHP新書660円 内容紹介(PHP新書リードより) お願い、お詫び、議事録、志望理由など、 私たちは日々、文章を書いている。 どんな小さなメモにも、 読み手がいて、目指す結果がある。 どうしたら誤解されずに想いを伝え、 読み手の気持ちを動かすことができるのだろう? 自分の頭で考え、他者と関わることの 痛みと歓びを問いかける、心を揺さぶる表現の技術。 (書き下ろし236ページ) |
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2006-08-09-WED
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