おとなの小論文教室。 感じる・考える・伝わる! |
Lesson677 まほうの帽子 ―― 3.読者の声 服装や化粧、髪型などで、 自分の見え方はガラリと変わる。 自分らしさでガッチガチに固めるんじゃなく、 ちょっと「おマヌケさん」に見られたり、 いいカンジに「隙」があったり、 「ときにブレて見られても、いいじゃないか。」 そのブレが、 自分のふり幅になったり、 新発見につながったりする。 私は、そう思えるようになった。 家族がくれた、 およそ自分らしくない帽子を被り、 ひと冬過ごした経験から、 「ブレも、自己表現のキャパである」と。 そんな先週のコラムに続々と、 読者からおたよりをいただいている。 さっそく紹介しよう! <不恰好の美> 私は舞台衣裳の仕事を目指し 修行中の身ですが 常に思っているのは 「カッコいいよりもかわいいが強い」 という事です。 自分が作るものを人に「かわいい」と言われる事が とても嫌な気がしていました。 でも日本のわびさびや シンプルで簡略的な格好の良さ美しさが 本当に求めているのは 自然の中のかわいさ、 傷や色落ちなど人が持ったという物語の 不格好さだと感じている事に気がつきました。 私の中でまだ格好いいが認識出来ていないだけ なのかもしれませんが、 自分のいいと思うものが「かわいい」なら それが私の格好いいなのだと思うようにしようかと 思います。 自分と人との共感が出来ず戸惑う事が多いですが 自分にとって大事なものが 人にとっても大事だと考える事の大切さも感じました。 (ふく) <あしたキグルミを着て> 装いについてのお話、 私にとって旬な話題でした! 私は事務職をしてるのですが、 明日は着ぐるみを着て出張です。 真面目、おとなしいと思われがちな私ですが、 そのイメージを払拭したい! 一日だけでもはっちゃけたい!という思いから 着ぐるみ着たいと立候補しました。 明日、いつもお世話になっている職場の方々が、 私にどう接してくださるか、楽しみです♪ (みそら) <職場のデスクにある私物> 仕事場のデスクの上に置物や写真を置いている人は 多いと思いますが、 私のデスクには、いっさいそういうものはありません。 そこから仕事以外のその人の一面が見えたり、 雑談のネタになったりして親しみを持てる ということはあると思うのですが、 私はそういうものから、 自分の好みや一面を覗かれるのに抵抗があるのです。 自分について知られる、 もっと言えば自分の抜けている、隙のようなものを 周りの人に感じ取られたり、 それについて言われたりするのが苦手なんだろうな、 と思いました。 ズーニーさんの帽子のような 人の意外性を見ると親しみが湧きますね。 でも、それを抱かれたくないと思っている自分が いるのです。 何故だろうな‥‥まだ答えが出ていません。 でも、 「こんなに頑なでいることも無いのかな、 そういうものをきっかけに 周りと仲良くなればいいのかな」 と思えました。 人からの見られ方を、 もっと上手くコントロールできる人間になりたいな と思いました。 (赤香里 Akari 東京在住 27歳 会社員) <キミドリの眼鏡> 蛍光オレンジの帽子、 自分にも心当たりがあるなぁ〜。 私の場合、黄緑色のフレームの眼鏡。 普段はコンタクトレンズを使用しているので、 眼鏡はたまにしかかけないんです。 OLっぽいシャツ、タイトスカート、黒いパンプス とゆう制服で接客業務をしていた当時、 その眼鏡は明らかに浮いており、 ふざけた「ざ〜ます 調」のオバサン にも見えかねないルックスに 私をさせてくれるのでした。 ですが、その眼鏡をかけると 普段は挨拶を交わすものの、 互いの目は合わせない程度の 同じビルの他のテナントの方が しっかり目をみて挨拶をしてくれる。 接客中、 提示の書類の方ばかりみてムッツリと頷くだけのお客様も なぜか笑顔を交えた表情で 私の顔を見ながら説明を聞いて下さる。 なぜだか業務が スムーズに運んでいるように感じるのです。 同じ職場の人達には 「PTAの会長みたいだね!」とか 「さすが、一味違うわ〜」など 誉め言葉なのかよくわからない言葉をかけられまず。 それは決して気分の悪いものではないし、 また、相手も「ヘンなやつだけどまぁ、いいか〜」的な 余裕を感じる反応。 地味な制服で地味な顔で笑顔もあまりない (自分では笑ってるつもりでも)私にとって、 あの眼鏡は「隙」だったのかな、 とコラムを読んで納得がいきました。 今では介護の仕事をしているので 服は動きやすさ優先。 また奇抜な柄のものも 利用者さんが珍しがってくれたりするので 好んで着用します。 表情、仕草も大袈裟なくらいになり、昔とは真逆な自分。 仕事上、コンタクトレンズのほうが動きやすいので 眼鏡は、ほとんど使わなくなりましたが、 今ではそれにとって代わる隙がたくさんあるのか、 職場以外でも年配の方に道を聞かれたり、 何気なく話しかけられます。 黄緑色の眼鏡は、 買いに行った時、 黒とか茶色とか地味な色のフレームを試着している私に 「お客様はこれですよ!」と勧めて下さって その勢いに思わずスンナリと買ったものです。 自分ではまず、選ばない色でした。 自分なりのこだわりを持つのもよいけど、 こうやって他者目線に身を委ねるのも悪くないな、 と思えたエピソードでした。 (アヤタコ) 「カッコいいよりもかわいいが強い」 という、 舞台衣裳の仕事を目指すふくさんの言葉に、 ピン! ときたことがある。 「よくできた男性は、なぜヒロインを奪えないのか?」 というのが、 私の中でひっかかっていた。 恋愛ドラマで、 頭も、性格もよく、 ヒロインに尽くし続ける男性は、 なぜか、勝てない。 性格が悪かったり、 どこか抜けていたり、 いつもヒロインを困らせたり、泣かせたりする男性が、 恋の勝者になるパターンが圧倒的に多い。 ほら、「花より男子」だったら、 完璧な花沢類より、 あちこち欠点の目立つ道明寺司のほうが、 ヒロインを射とめる、あのパターン。 なぜかな? と思っていたけど、 「かっこよさより、かわいさ」 容姿も、頭も、人格も、 八方よくできた人間よりも、 ほころびがある人間のほうが、 他人がかかわったり、突っ込んだりする余地が生まれ、 そこに「かわいげ」を感じるからではないかと。 「自分のこだわりを壊す」 ということの気持ち良さを、 今週の読者のメールから感じた。 ファッションでうまく自己表現してきて、 自己確立した人は、した人で、 壊したら、さらに自由になれそうだし、 自己を表現するのが恐い、と ガードを固めてきた人は、固めてきた人で、 壊したら、気持ちよさそうだ。 「自分のこだわりを壊す」 それはそんなに難しいことじゃなく、 きょう、偶然、入ったお店で 店員さんが、あなたにすすめてくれる 「意外な何か」。 そこからはじまるのかもしれない! |
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2014-03-19-WED
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