YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson727
    2とおりの自信−2.読者の声


自信には2つある。
1つは鍛え上げて成長して強くなって、
自分は「一人前だ!」という自信。

もう1つは、自分はまだまだで、
だから下手くそで失敗もするし、
当然叩かれたり傷ついたりもするだろうけど、
それでも辞めないでつぶれないで続けていくという、
いわば、

「未完成という自信」。

先週、未完成という自信について書いたところ、
読者からたくさん反響をいただいた。

きょう4月1日、新年度のスタート。

すべての新人と、
新しい境地へ踏み出す旧人へのエールとして、
「読者の声」を紹介しよう!


<自分の素を信じる>

先週の自信の話は、
今の自分にものすごい力を与えてくれました。

「未完成という自信」。

一見ネガティブとも捉えられるけど、
前を向いている言葉。

今、私は仕事を辞めて、転職活動を行っています。

しかし、なかなか思うように進めず、
体調を崩していました。

前職に就いている間は、
ただ「新卒で就職することができた」というだけで、
見えない自信がどこかにありました。
しかし今は、「なにもない自分」という存在が、
みじめでどうしようもありませんでした。でも、

「未完成という自信」。

この言葉は、私にとってとても力強い響きがします。
もっと素の自分を信じて生きたいと思います。
(瑞希)


<マネージャーになって、異動して>

マネージャーという役職になってから
社内異動をして、数週間。
今までとあまりに違う職場風土と、
慣れないチーム制の仕事に戸惑いながら

自信を失いかけていました。

新人なら先輩が
手取り足取り教えてくれるかもしれません。
でもマネージャーには、
なかなか教えてくれる人はありません。

「そんなことも知らないの?」

と思われそうなことを後輩におずおずと聞いたり、
自分で考えて、できることをやっていくしかない。

そんな毎日にヘトヘトになっていることに気づきました。

でも、自分はまだまだである「未完成の自信」
という考え方にとても救われました。

考えてみれば、今までだって
初めての仕事を慣れないながらもやってきて、
10年もやればベテランになっていた経験があります。

まだまだの自分だからこそ、成長していける。

のびしろがある。

そう考えれば、すこしくらいやりにくかったり、
孤独だったりしてもこわくない。

自信を持つことは、
自然体でいられること。

そう思ったら、とても気持ちがラクになりました。
(小春)


<守ろうとして傷つくのでなく>

私は、ずっと周りからバカにされることが怖くて、
手を差し伸べられると

「自分が弱くてダメな存在なのだ」

と言われているような気がして、
今までいろんなことにいちいち傷ついて、
怒ってきたけれど、

本当は、そんなふうに守る必要はなかったのに。

物語の登場人物は、
少しくらい欠点があったり、おかしな行動をとる方が
愛されるんだなと気が付いてから、
自分の欠点や才能のなさを、
いちいち恥ずかしく思う必要は
ないんだと思いました。

長い間たくさんの人の優しさに気付かずにいました。

恥ずかしくて情けない自分を隠すための努力でなく、
さらに自分を輝かせるための努力にできれば
もっと強く、自信が生まれて、
生きやすくなるだろうなあ。
(あなぐま)


<才能という言葉に負けた私>

私は、よく「もっと自信を持てばいいのに」と
ずっと言われてきました。

就職活動でハローワークに行った際には、
「自信を持ってください!」と怒られたほどです。

だけど、私は自信というものがわかりませんでした。
自信がないことは
最悪の欠点だとしか思っていませんでした。

今まで私が思い描いていたのは、
「自分には才能がある」という自信でした。

しかし、私が持っているのは
「未完成という自信」でした。

私には、天才の彼氏がいます。
家庭環境のため精神的に少し脆いですが、
頭はとても良いです。
大学にもあまり苦労せずに入ったそうです。

そんな彼に対して、私はいつも努力してきました。

要領を掴むのが遅く、人に貶されながら、
「私は人より理解が遅いから、他の人より努力しなきゃ」
と思ってがんばってきました。
過大に自分を見せようとしてすり減っていました。
何をしても天才の人には敵わないんだと、
自分自身を諦めていました。

彼と付き合い始めて、私は
才能という言葉に負けていたと思います。

「自分はまだまだで、だから下手くそで失敗もするし、
 当然叩かれたり傷ついたりもするだろうけど、
 それでも辞めないでつぶれないで続けていく」
の言葉から生きる希望をいただきました。
(Y)


<未完成とは変化>

おそい結婚で夫は35才、私は30才でした。
決め手は、「変われる人かどうか」。
出来上った人は無理だと思いました。

守るもののない、24時間自由に使える「男」から、
他人と癖や暮らしの折り合いをつけられる
「夫」に変化し、
さらには子供を中心に据えた「父」に変化できる人。

私は仕事をやめ、引っ越して姑と同居するわけだから、
大変な変化なわけです。
変化はストレス(刺激)。

一緒に変化を受け入れ、変わっていける人でないと、

一方的に自分が折れて合わせてでは、
結婚生活は維持できません。

結婚して20年、お互い人生イベントに対応し、
変わりあっていく覚悟が根底にあります。

そこが共通しています。

変化という波を先入観抜きで把握し、真摯に立ち向かい、
そして出来れば楽しめるような生き方がしたいです。

そんな覚悟があれば、
自信につながっていくのかなぁと思います。

「どんと来い、荒波。受けて立つ。」

なんて心につぶやき、変化に対応する勇気を
奮い立たせています。
(ひとそれぞれ)


<まわりを見る余裕が>

私はずっと、才能という自信によって、
ヨガや料理や英語や、
とにかく何か始めて何かを探していました。
そして、転職しようと退職もしました。

わたしは才能がある、
自分の大好きなことを仕事にして
充実した毎日を送りたいと思っていました。
でも転職活動を続ける中で、

「わたしは何もできない」

と思うようになりました。

そうしたら周りがどんどん見えるようになりました。
相手のことを考えるようになりました。

自分自分だったのが、
外を見る隙間が空いたように思います。

何にもできなくても、何もしていなくても
当たり前にごはんを食べられる場所があって、家族がいて
いきいきと働く人たちがいて。

なんか小さかったな〜と思っています。
(平野)


<才能がありそうな道にあえて行かず>

未完成の自信って、
力強い事実って感じがします。

私は芸人ではないですが、
長い時間をかけて習得していくしかない事をしています。

とても才能がある方ではないので、
自分で自信は持ったことはないです。

どちらかと言えば才能がありそうな方面のことを
何故やらなかったのかな、と思うこともよくあります。

本当に曲がりくねった道を歩いてきたと
ついこの間思った所です。
月並みですが、

「だから辞めなかったのかな」

とも思います。
何年かやってきたけど、今私が自信に満ち溢れ、
輝いているとは思えないです。

「でもいろんな逆境を乗り越えてきた」

そのことは本当です。
だったら私もいつかは、先週のコラムに登場する
先輩芸人のように輝く存在になれるかも。

「未完成であるからこそ、続いていくかも」

そう思うと勇気がわきますね。
大体真っ直ぐな物ってあんまし好きじゃないんです。
ちょっと曲がってて、
うまくいってない物の方が好きなんです。
だからこれからもちょっと曲がった道を歩いていく、
と思います。
(ラテ)



「弱い自分を悟られまい、みなに悟られないよう
 早く強くなって自信をつけて見返してやろう」

こういう気持ちのありかたで努力しているとき、
不思議に視野は狭く、
自分に差し伸べられている支えに気づけない。

でも、どんと来い!と弱さを受け入れたとき、

不思議にまわりを観る余裕も生まれ、
自分に差し伸べられている支えや愛情にも
気づけるんだな、と
読者のおたよりに改めて思う。

最後に、カズママさんのおたよりを紹介したい。

カズママさんは、
ご主人のお兄さまが障がいを持っておられるため、
自分の意志で、そのお兄さまを含めた
ご主人の家族との9人での同居を選択した。
まわりの人はみんな「うまくいかない」と言い、
カズママさんも、うまくやる自信はなかったのだけど、
でも、「産まれてくる赤ちゃんが育つ環境だ」、
そこに自信があったという。

あれから数年、いま、カズママさんの自信の持ち方は?


<減らない自信>

才能においた自信は、とてももろく、不安定です。
学生時代、躍起になって
資格取得に精を出していた日々を思い出しました。

自信はある日突然何かの称号を貰ったから
つくものではなく、
少しずつ内側に積み重なっていくものなんだと、
最近感じています。

この数年間、夫の家族と同居し、
子育てをしていて気付いたのですが

「人の為に」やったことへの自信って揺るがないな

ってことです。
子育てや家事、仕事などの、どんな小さな事でもです。

私は結婚したことにより、周りからは
「大変だね」、「私にはムリ」、「離婚したら?」
など不幸の称号のようなものをたくさん貰いました。

それでもどっしりと、この地に根を張って生きよう
と思えるのは、

少しずつ積み重なっている自信があるからだと思います。

母としても妻としても嫁としても、まだまだまだですが、
これからも頑張っていきたいと思っています。
(カズママ)

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2015-04-01-WED
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