YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson729
  伝えるポジション −2.読者の声


「言わずに我慢しよう」
とするほど、どんどんたまってツラくなって、
たまらず言ってしまったときには、
相手の気持ちも言い方も
何も考えないカタチで出てしまう。

最初から「伝えるポジション」をとろう。

「いいカタチで伝えるにはどうしたらいいか?」
と考えていき、見つかったら伝えるようにしてみよう、
という先週のコラムに反響をいただいた。

きょうは、仕事の現場で、
お客さんとのコミュニケーションをがんばっている
読者のメールを紹介する。


<伝えるチャンスとはいつか>

お客様相談室やクレーム対応を業務としています。

お客様が、
怒りに任せて話しているとき、
話しながらどんどん感情がエスカレートしていくときは、
色んな要素が添加され、話が複雑化していきます。

言いたいことがある時が、
伝えるタイミングではなかったりします。

相手が聞ける時に、
相手に伝わる言葉と表現で伝えれば、
伝わる確率が上がる、

と思います。
私自身、客として店に行ったとき、
明らかにこちらの意見など、聞く気がないという態度の
お店の方に出くわすことがあります。

こんな時に怒りにまかせて伝えても、
大抵こちらの期待する対応はとってもらえず、
余計ストレスが溜まったりします。

感情にとらわれたり、善悪で物事を見たりすると、
「伝えるチャンス」を独りよがりで決めてしまい、
相手とズレが生じます。

大抵は、こちらが言いたくても
伝えるタイミングじゃなかったり、
こちらが何も考えてない時に、
伝えるタイミングが来たりします。

そう考えれば、先週のコラムにあったように、
自分勝手な判断で
「言わずにおこう」と決めて我慢したとしても、

ためきれず出てしまったとき、
その「伝えるタイミング」は、独りよがり、
ため込んで怒りが増幅したぶん冷静さも欠くため
まず伝わりません。

人の心に落とし込むには、
人の状態への観察力が問われます。

伝えるか伝えないかではなく、
「伝わる確率を上げる」こと。
そこに意識を持つ人が増えているように感じます。
(ペリコ)


<時期を待つ>

ひとを治療する仕事を始めて、10年になります。

はじめのころは、色々なセミナーに参加して、
ノウハウを身に付けようとしていました。
自分の治療に自信がないから、
すでに完成された方法を
身に付けようとしていたのですが、
結局それは借り物に過ぎませんでした。

仮に身に付いたとしても、
からだへ触れる経験も知識も足りないから、
応用も利きません。

患者さんはひとりひとり違うから、
すぐに行き詰まります。

結局、お金と時間をさんざん使っても、
土台がないところでノウハウを学んだのでは、
表面しか理解できないし、身に付きませんでした。

それから、ようやく腰をすえて、からだの仕組みを学び、
患者さんに触れる経験を積み重ねられるように
なってきたように思います。

先週の「伝えるポジション」、
興味深く読ませていただきました。

思いにふたをし続けると、自分の中で膨れ上がり、
かえって振り回されることが多々あります。
その時に心がけているのが、

「時期を待つ」

という態度です。
治療する仕事で、駆け出しだった頃に言われた心構えで、

「もし患者さんに見切りをつけられたとしても、
 そこでは私はあきらめない。
 来るかどうか分からなくても、
 いつ来られてもいいように、
 準備だけはしておく。」

というものがありました。
今うまくいかないから、
そこですべてがダメになるわけではないですし、

自分の方だけでも関わる可能性を持っていれば、
チャンスはあるかもしれません。

チャンスを逃さないためにも、
開ける自分でありたいのです。
今のところ関係を結ぶのが難しいとしても、
かかわりたい思いは大事にしたい。

行き所がなくなったとたん、
その思いは大事にしてくれなかった自分自身に
牙をむいてきます。

だからこそもてあますし、振り回されます。

あげくに自分自身と一体となって、
相手にまで向かっていきます。

それでお互い傷ついた時、後悔が残るのでしょう。

伝えたい相手だけでなく、自分も粗末にしないためにも、
伝えたい思いは大事にしたいのです。
(たまふろ)



読者お二人とも、
お客さんに伝える努力を日々積み重ねているだけあって、
地に足のついた考えで、希望があった。

「伝えるチャンス」って、いったいいつ?
独りよがりで決めつけてませんか、
というぺリコさんの問いかけに、
私自身も耳が痛かった。

なかなか勇気が出ない私たちは、
逆に、勇気さえ出して伝えれば、
という幻想を抱きがちだ。

だから「伝えるタイミング」も、

誰かにパワーもらったとか、何かに感化されたとか、
とにかく自分の気分が盛り上がったとき、
と誤解しがちだ。

伝えるタイミングとは、
「相手に伝わる確率が高い時」であり、
自分にとってはありがたくないタイミングかもしれない
ということ、再認識しておきたい。

また、たまふろさんの、

「いつ来られてもいいように、準備だけはしておく。」

という言葉に奮い立たされた。
ほんとにそうだ。

「時期を待つ」

とは奥が深い。
その間、自分の想いをあたため、
技を磨き、腕を鍛え、精進して待つ。

これなら結果に関わらず有意義な日々になる。

これなら待つのも苦じゃなくなる。

「伝わらない」と傷つくとき、

絶望なんかしておれない、やることはたくさんある。
言葉を磨き、書く筋トレを怠らず、視野を広げ、
自分側の伝わる可能性だけでも高めていきたい、
と私は思う。

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2015-04-15-WED
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