YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson794
  ねじれない表現−2.読者の声



自分に「無い」ものに、
人はついついとらわれがちだけど、

「有る」ものを生かして表現した方が、

やっぱりアウトプットは
数段おもしろくなる!

そんな先週のコラムを、読者はどう読んだのか?

さっそく紹介しよう。


<もうすぐ就活>

先週の「おとなの小論文教室。」
とても胸に響きました。
以下、感想を送らせていただきます。

………
なんとか、
なかった気持ちをあたかもあったように書いてみて、
他人に見栄えがいいように体裁を整えて
エントリーシートを書いてみる。

そうすると、だいたい落ちる。

なんでだろうなあ、何がいけなかったんだろうなあ。
正解が与えられないまま、
自分が否定されたような気分だけが残り、
心がざらざらする。

もうすぐ、就活が始まる。

戦いへの準備はまだできていない。

就活で必須といわれる「自己分析」という言葉に
疑問を持ってきた。
てきとうに質問に答えて導き出される
自分の「適性」だとか「強み」を発見することで
分析可能な自分なんてくそくらえ!と思っていた。
きっとその感覚自体は間違っていないと思うけど。

私が何と出会って、
何をもらってきたのかをうけとめること。

そういう自分をふりかえってみること
それが自己分析なのだとしたら、
私は、自己分析へ理解も、私自身への理解も、
足りていないことになる。

理解が足りないから、
他人にも伝えられないのかもしれない。

順風満帆とはいかないが、
私は私の人生を結構気に入っているし、

私が生きていることのおもしろおかしさを
誰かにも伝えてみたい。それは、

私だけに可能な人生の咲かせ方なのだろう。

就活を通して、私も私自身と向き合ってみたい。
………

以上が感想です。
ちょっと落ち込んでいた気持ちを
上に持ち上げることのできた回でした。
今の私に必要な文章でした。
(ゆうきゃん)


<さらりと夢を言えた友人>

「ねじれのない表現」を読んで、
友人の事が頭に浮かびました。

高校2年生の時、

3年生のクラス編成のために理系か文系か
紙に書いて提出する必要がありました。
私は将来の夢が浮かばず、
友人に聞くと、

「理学療法士になりたいから理系に進むよ」

とのことでした。
理学療法士という初めて聞く言葉に
いくつか質問をしたのを覚えています。
友人は、詳しく理解した上で将来の道を決めたようでした。

あれから10数年が過ぎ、
私は今年30歳になりました。

友人は理学療法士として育児と両立しながら働いています。

高校時代にさらりと自分の夢を他人に語ることができる程、
友人の思いは強く、一貫していたことを
この年になって実感しました。

久しく会っていない友人の「ねじれのない言葉」が
聞きたくなりました。
(苺)


<書く気がムクムク起ったワケ>

仕事人間で、私の中に結婚の文字など無い
と思って生きてきて47歳のとき、

知り合って半年足らずで結婚。

そこでやっと仕事、家庭、自分自身のことの
3つのバランスがとれるようになった気がします。

そんな頃、

自分の中で書きたい気持ちがムクムク湧き上がって
ブログやエッセイを書くようになりました。

多分そこで「自己受容」が出来たのだと思います。
(52歳のメグモグより)



ここ数年、私は、

エントリーシートの文章指導で、
多数の大学に出講したり、

高校や中学におうかがいして、
100人、200人の生徒と
「将来の夢」を文章に書くワークショップをしたりして、

つくづく思うのが、

「全員、必ず書けるようになる!」

ということだ。

半日の指導で、

テーマについて、
自分の経験に基づいて正直に、
実感が伝わり、読む人にも何かしら響く文章を、

全員、書ける。

これには、キャリア支援センターの方も、
「あのキャリア支援センターの窓口で、
 さんざん手こずっていた学生までが、
 こんなにしっかりとやりたいことを表現している」
と涙するし、

中学、高校の担任の先生も、
「まさかここまで書けるとは」
と驚いている。

何より本人が、
「自分のなかに、
 こんなにしっかりとした想いがあったとは」
と驚いている。

これは、裏返せば、常日頃、

自分の中に、
表現したい・表現すべきものが
ちゃんとあるにもかかわらず、

いかに、多くの人が、
自分に「無いもの」にとらわれて、
あさっての方向に題材を探しているか、
ということだ。

自分に「あるもの」を知るには、

「自分に聞いてみる」ことだ。

自分に聞いては、答えを引き出し、
自分に聞いては、答えを引き出し‥‥

「自分に問う=考える」ことだ。

テーマを書くのに必要な事項について、
自分に問うべきことを、すべて問えば、
文章は書ける。

エントリーシートなら、

必要な事項とは、
「仕事」と「社会」と「自己」だ。

「やりたいことは?」

と大上段に聞かれて、なにもなくて焦る人は、

「気になってる仕事とか、会社とか、ないの?」

と自分に聞いてみる。

「こどものころ憧れてた職業とかホントにない?」
「いままで見聞きしてきた仕事のなかで
 ビビットきたものは?」
というふうに、自分に聞いて、
書き出していく。

その中から、もっとも想いが向くもの1つを選び、

それよりも想いが向かないものを
すべて斜線で消していけば、
やりたい仕事の候補ができる。

「その仕事は、誰に対して、どうすることで、
 どんな価値を提供する仕事なの?」

と自分に問えば、
自分なりの「仕事理解」が文章になる。

同様に、

「その業界をめぐる社会背景ってどう思う?」

「その仕事にふさわしい自分の経験や長所は?」

と自分に聞いて行って、
自分にある、経験・知識・見聞・想いを書き出し、
その中から選び取っていけば、

自分なりの「社会理解」「自己理解」が書ける。

あとは、仕事と社会と自己を関連づけて、
「将来その仕事に就いて、
 人や社会をどうよくしていきたい?」
と自分に問えば、文章にできる。

「あるもの」は、だいじなのだ。

こんなに情報が溢れるなかで、
多くのものが素通りし、
憶えておこうとしても、多く忘れてしまうのに、

自分の記憶のなかに消え去らず「あるもの」、
自分の想いの底にいつまでも「あるもの」、

というのは、ささやかなように見えても、
自分という存在の根幹をなす何かに触れたものだ。

だからこそ、
制限時間に手早く書き出しても、
「仕事」と「社会」と「自己」が、
バラバラになることなく、

脈絡を持ってつながっていく。

ここが、ウケウリや、付け焼刃で仕入れた情報で
書いた文章とは、決定的に違う。

「あるもの」は、
あなたという存在の根を成すもの。

そこをだいじに、
書いたり話したりしていこう!

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2016-08-31-WED

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