YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson869
  読者の声2―やりたいことが見えないときに



「やりたいこと、できること、やるべきこと」って、

3択で1つ選ぶととらえれば、
苦しくなったりもするけれど、

「循環」、ととらえれば、

つまり、どんなやりたいことをやるにも、
やるべきことを嫌でもやらねばならない部分はあるし、

やりたいと思う気持ち1つで、
嫌なやるべきことも、苦じゃなくやり通せて、
できることに変わったり、

3つをうまく循環させる。

3つのどれから入っても、たがいに連動しあって、
他の部分も強くなる。

正解はないけど、そんなとらえ方をしてもいいなと、
近ごろ私は思っている。

「Lesson867 やりたいことが見えないときに」
に引きつづき高い関心が寄せられており、
今週も「読者の声」をお送りする。


<春、浪人生になります>

私はこの春高校を卒業し、浪人生になります。

医学部を目指していますが、
今までずっと、

自分が本当に「やりたいこと」なのか?

毎日のように考えていました。
小さい頃から将来の夢は?と尋ねられ、
文理を決めるときも
「やりたいこと」を軸にと言われて育ち、

無理やり私の「やりたいこと」は生命に関すること、
人を助けること、と結論付けました。

しかし、特別な動機があるわけでもなく、
自分のやりたいことは
どこか別の場所にあると思っていました。

模試で結果が出ないとき、
試験前など不安になると

やっぱり自分はこの道に向いていないのではないか、

と考えました。
高三の一年間はこの繰り返しで
わからないことがわかるようになる、という喜びは
徐々に消えていきました。

勉強一色の毎日なのに、成績が伸びないつらい日々でした。

コラムを読んで、
私は「やりたいこと」が見つからないからやる気が出ない
と言い訳をし、

「やるべきこと」をやらず、
「できること」も増えず、
「やりたいこと」に悩むという悪循環を繰り返している
ことに気づきました。

今「やりたいこと」が見つからなくとも、
大学に行って勉強し、
仕事をしてから見つけるのでも間違っていないと思うと、
とても気が楽になりました。

仕事をするときに、「できること」が少しでも多くなり、
「やりたいこと」を実現できるように、
医学部を目指して一年間がんばります。

「できること」が増える喜びを噛みしめながら、
日々進んでいきたいです。
(N)


<都会で生きたい>

私は大学を卒業して1年経ちますが、
まだアルバイトの身です。

都会の大学を出ましたが、
就職先が見つからないまま田舎に帰ってきました。

「いつか地元に帰らなければならない」

故郷に貢献して、家族に恩返しをして‥‥、
とずっと思っていました。

だから就職活動も、
都会で仕事を探しながらも、
「いつか地元に戻った時に貢献できるように‥‥」
「地元でも活きるスキルを‥‥」
と考えました。

しかし、結果はどこにも採用されず、
なんの力も持たないままの帰郷となりました。

現在、アルバイトをしながら就職活動をする中で、
ようやく気づけたことがあります。

「私は、都会が好きだった。都会に居たかった。」

けれど、仕送りをもらっていた私は、
家族に後ろめたさを感じ、
処理できない罪悪感を感じてしまっていた。

その苦しさから逃れようと、
就職活動で「地元」を引き合いに出し、
就職という自立のタイミングを、
罪悪感を拭うための機会にしようとしていた。

都会で生きたいと思いながら、
地元と繋がろうとするチグハグな志望動機を書くのは、
ただただ辛かった。

本心を隠して伝えた志望動機は、
どの企業にも響きはしませんでした。

自分ひとり生かすことができないまま、
逃げてばかりいたのだと思います。

都会で生きたいという思いを認めることは、
家族や今までの思い出を裏切るようで、
身が千切れるほど辛い。

「でも、私は、都会で生きていきたい。」

「そして、今までと変わらず、
家族と故郷を大切にも思っている。」

言葉にするとなんとも簡単で、
矛盾するものでもありません。
思いを混線させ、繋がらないものを繋げようとするのは、
もうやめようと思います。

まずは、自分の思いをまっすぐ叶えられるように努力する。

そして、自分で生計を立て、生きる術を探りながら、
それとは別に家族に対しての恩返しも目指していく。

これからは、叶えたいことを実らせるためにもがきたい。
(モカテーブル)



やりたいことがある人は、やればいい。

見つからない人は、
やるべきこと、できることからやればいい。

でも現実はそうではなくて、

やりたいことが見つからないからといって、
落ち込んだり、自分探しをして迷走する人も多い。

やりたいことに、まっすぐ向かっていかない人も多い。

本気でやりたいことほど、
向かっていって、もし失敗したら…と恐くて、
逃げたり、すり替えたり、
自分の中のやりたい気持ちに蓋をして
消し去ろうとまで、したりする。

表現教育を通してそういう人をたくさん見てきた。

自戒も込めて、そこが人間臭さであり、
のりこえなきゃいけないところだな、と。

だからこそ、最後にこのおたよりを紹介して
きょうは終わろう。


<次に進む>

30代男です。
ズーニーさんの本を読んでいて思ったことがあります。
それは

「スタートラインに着く勇気」

です。

「欲しいものを得るためには
今の状態から先に進むしかない、
このままでは不安や焦りはなくならない、
でも怖い‥‥」

会社を探し面接を受け、
また立場を作っていかなければならない。
このような転換期は、
自分と周りと比べたりして、
自信や自分の立ち位置が大きく揺れます。

そんなとき、自分の考えをやりくりしたり、
言葉で自分を励まそうとしても
不安は小さくなってくれないのです。

「進んでいるという実感」

を感じ、
自分の立ち位置を安定させなければ、
劣等感や焦りはこれからも続く。

自分が何故次に進めたかというと、

立派な理由ではありません。
現状をなんとかしようとあがいているうちに、
動かざるを得なくなったというのが本音です。
出来ることを少しずつ、
書類づくりや面接をちょっとずつ

進めていくなかで、

ご縁がある場所があったと‥‥
何とか進もうと、就活や勉強、読書を、
興味深い文章を見つけました。

「人は不安をつくることによって、
課題に取り組む事を避けている」

スタートラインに着く勇気は、

自分にとって足りない事や
現在の自分の持ちカードを受け入れ、

「さぁ、これからどうやっていくか」

と考える事です。
(yoneson)


ツイートするFacebookでシェアする


山田ズーニーさんへの激励や感想などは、
メールの表題に「山田ズーニーさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2018-03-28-WED

YAMADA
戻る