Lesson966
失われた「息」
2020-05-13
失われたのは、「息」だ。
息が合う、息が合わない、の息。
いつものテレビ番組、いつもの出演者、
でもコロナ対策のため、
何人かが「リモート出演」している。
ただそれだけで「何か」が決定的に違う。
何だろう? と思っていたけれど。
「息」
と気づいた。
会話を聞くとき、それが楽しく感じるとき、
テンポやリズムも楽しんでたんだな。
私が「息」を最初に意識したのは、
生まれて初めてテレビに出る時、
4回シリーズで教育テレビに出るにあたり、
コーディネーターにこう言われた。
「あとは、MCとの息。
つまりMC(司会)のアナウンサーさんと、
ズーニーさんの息が合うかどうか。
気をつけるのはそこだけ。」
私はびっくりした。
内容とか、話し方とか、表情とか、
姿勢とか、服装とか、目線とか、
じゃなくて、
「息?!!!」
その日からテレビを見る目が変わった。
司会者2人の息が合ってるかとか、
番組パーソナリティーとゲストの息とか、
意識して見ると、なんと、なんと!
私が好きでよく見ている番組は、ことごとく、
MCどうしの息が合っている。
片方が空気をまずくしても、
片方が絶妙の間できりかえす。
やりとりのテンポがいい。
軽妙で心地いい、しあわせな気分になる。
逆に、ストレスを感じて見づらいのは、
出演者どうしがギクシャクした番組、
噛み合ってない番組、ばかりだった。
いま、コロナ対策で、
この絶妙な「息」が損なわれている。
スタジオにいる人を少なくするため、
離れた場所から、
テレビ会議の要領で、出演する人がいる。
スタジオで湧いた疑問について、
司会者が、離れたところにいる専門家に、
「どうですか? 先生。」
と呼びかけると、
すぐに答えは返ってこない。
不穏な間があいて、返事がくる。
それがどうして私にはストレスなのか?
「理解は息に表れる」からだ。
自分と相手、
おたがいに対する理解の程度が、
息が合う、合わない、を左右する。
たとえば、ずっと寝食をともにし、
長い年月連れ添って、
おたがいよくわかった者同士なら、
あうんの呼吸でコミュニケーションできる。
初対面同士だと(それも楽しいが)、
多くの場合、
予想した間で返事がかえってこなかったり、
何気ない所で相手が食い気味に大きく反応して、
とまどったり、なかなか息が合わない。
人と人が理解しあって、通じ合っている。
そこから生まれる絶妙な息を、
考えたら私は、味わい、楽しんでいたのだ。
その習慣からくる「錯覚」。
いまコロナ対策で、
番組の出演者どうしに不自然な間があくと、
「息が合わない=理解し合ってない」と
勝手に錯覚して、ストレスに感じていたのだ私は。
でもそれはあくまで錯覚。
リモート出演者とスタジオの司会者は、
息が合わないわけではない、無理解でもない。
技術や機械で生じた「時差」だ。
だから、失われた息の試練を乗り越えたい。
テレワークにしても、オンライン授業も、飲み会も、
息に頼らないで、「理解してるよー!」
「通じ合ってるよー!」を、
伝える術(すべ)、受け取る術を編み出したい。
「人と人が理解し、通じ合っている。」
そこに歓びを感じる私は、
これまで「息」に頼ってきた、たがいの理解度を、
別の方法で表したり、感じたり、習慣づけていけばいい。
いまこそ言葉!
話す内容への理解と理解で通じ合いたい。
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●「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
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聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
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ありがとうございます!
▲『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。
『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
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あなたの“へその緒”が社会とつながる!
『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
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「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
――山田ズーニー。
▲『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。
『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!
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あなたの表現がここからはじまる!
『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)
ラジオ「おとなの進路教室。」
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おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
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まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
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「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
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相手に通じる文章になる!
『考えるシート』文庫版、出ました。
『話すチカラをつくる本』
三笠書房
NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
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いちからわかるやさしい入門書。
『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
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自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!
『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社
『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社
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PHP新書
内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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