|
(前回につづき、
糸井重里による談話をおとどけします) |
今回の4人のお話を聞くことが、
「その日からあと、なんか、世の中が違って見える」
という体験になればいいなぁと、ぼくは思っているんです。
すぐ手に入る情報としては、
今回のイベントで聞くような話の内容は、
どこかの本でも、読むことができるかもしれません。
ただ、その話の届き方が、ナマだと、変わると思うんです。
本や知人からのまた聞きだと、「へぇ」で終わってしまう。
ところが、あることを、心からそう思っている人の声って、
やっぱり、歌とおなじで、しみるんですよね……。
「……そのすぐそばで、見つかったんですよ」
惑星物理学の松井孝典さんが、
実感を込めて言う「すぐそば」って、よく聞いてみると、
「せいぜい100光年なんですけどね」って……遠いじゃん。
でも、なんか、気持ちがいいんですよね。
例えば、松井さんは今回、人のアタマを混乱させる役です。
だけど、その言葉を真剣に聞くと、
やっぱり、ピーンとロジックの糸が、張っている。
それに、哲学のある言葉、なんですよね。
哲学に関しては、今回、4人とも、ちゃんとある人ばかり。
さっき言った松井さんや、経済学者の岩井克人さんは、
「今の時代の常識は、ある時代の常識に過ぎない」
という話をしたいという時期にいるんじゃないでしょうか。
しかも、ちゃんと、事実を押さえている。
現実を見てしまうと、科学や経済学としては、
「結局、何をしても、人間ってほろびるじゃない!」
という結論に、行ってしまうかもしれない。
「何をしたって、何もしなくったって、同じかもな」
と、ニヒリズムに陥る人だって、いるかもしれません。
だけど問題は、厳しい現実を、そう受け取ることではない。
つまり……。
松井さんの話で言うとすると、
昔に比べて、「十万分の一の速度」を得てしまった文明の、
自分たちにとっての最適な判断を、ほんとうに考えること。
ほんとうに見つめたらどうなるのか、そこに、力点がある。
岩井さんにしても、
「利益をあげるため」と言ったら
何でも許されがちな常識を、ちゃんと見つめているんです。
その「利益」が、どれだけいろいろなことをダメにしたか。
ただ、その「ダメにした」加減って、
どのぐらいまでは、しょうがないのか?
どのぐらいまでは、しょうがなくない、重大なことなのか?
これを売ってしまったら、明らかに人の寿命が縮まる。
そういう商品だって、きっと、どこかにあるんだと思う。
それは「仕事だから」で通るのかと言えば、通らないはず。
だけど、今の時点では、まだ、
「仕事だから」「会社だから」で、
そうとうな地点までのことが、オッケーにされちゃいます。
「株主さまの利益を何よりも重視して……」
そういうことばかりになると、世の中が、つまらなくなる。
それって、文学的なつまらなさだけじゃないと思うんです。
人間が作った会社なんだから、
人間が使う道具として活用できなかったら意味がない。
そういうところから、根本的に、
「もともと、会社は、なんでできあがっているのか」
「どうして、会社は、人間を幸せにできるのか」
そのあたりを、ちゃんと考えていかないと、そのうち、
会社のために自殺する人ばかりに、なってしまいますよね。
そういうことを、チラッと考えたことのある人にとって、
すごく有効なアプローチをしているのが、岩井さんです。
「ほぼ日」でも、インタビューをしていますけれど、今回、
そこのところ、「会社」を、一気にわかってしまうような、
そんな八〇分をくださいと、岩井さんにはお願いしました。
(糸井重里による談話は、月曜日に、つづきます!) |