自由な精神の入った服でしたら、それはきる方にも伝わると思います。 川久保玲「アンリミテッド:コムデギャルソン」(平凡社)より引用
03 質問: コム デ ギャルソンのドキュメンタリーを、 NHKで企画、取材、放送するまでの経緯は どのようなものでしたか。
NHKの番組に出ていただくまでは 清水早苗さん(ファッションライター)と 何年も依頼を続けました。 何度頼んでも、彼女は 「他に出る人が沢山いるでしょう。  私はテレビに出る必要がないし」 と言うんですよね。それを聞くと余計に 「これはなんとしても」という気持ちになりました。
一九八二年にパリコレに進出して以来の 二十年を番組にしたいと伝えると 川久保さんはこう言いました。  「私を取りあげるなら、番組はやりません。  コム デ ギャルソンは作品がすべてです」  どんな番組をするかについて 彼女自身もアイデアを出してくれたんです。 すごいのは、 「私の言いぶんは伝えました。  それを聞いてくれるかどうかは、  そちらの判断だけです」と言うんですね。 それからは、 まったく注文をつけなかったところが 川久保さんらしいところなんです。 私の作る番組ではない、私の作る書籍ではない、 作るのはあなたたちですと預けてくれる。 そういう他者との距離を強く持つ方なんです。
彼女の案を聞いて、 明らかに川久保玲さん個人より コム デ ギャルソンという集団を 大切にしているということはわかりました。 川久保玲という人物ではなく、 コム デ ギャルソンという創造集団が服を作り いろいろなことをやっているという意識が強烈で…… もちろんテレビはテレビで 番組の作り方があるのですが、 意見は充分にうかがいましたね。
テレビ番組では、 川久保玲さんの頭の中は描けません。 テレビ屋がかなうはずがありませんから、 そんなことはしてもムダだとわかってました。
パリコレデビュー以来の 全コレクションをビデオで拝見したのですが、 あの蓄積には驚嘆しました。 二百数十着がレディスだけで四十回以上…… コム デ ギャルソンは 作品そのものでしかないとわかりましたし、 美しいもの、新しいものを追求してきた軌跡が すべて古びていないところに感動します。 誰が何を語るより あのコレクションを見るのがすべてで、 ぼくはあの関係者に見せるための ビデオだけを放送できないものかとさえ思いました。
百%のものをやろうとしても 七十%ぐらいしか実現できないものですが、 だとしたら川久保さんたちは 百何十%を目指したのだろうかと……。 川久保さんはデザインだけをしていずに、 コム デ ギャルソン経営のすべてを 考えて実行する人ですよね。 だから番組のアプローチは、 彼女はなぜ世界に評価されているのだろうか という方向になりました。
『Unlimited : COMME des GARCONS』
(清水早苗+NHK取材班・平凡社刊)
感想をおくる 友達に知らせる もどる 2005-07-08 
Photo : " Unlimited : COMME des GARCONS " ( COMME des GARCONS + NHK )
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