自分の国ですから、日本んは素晴らしいものを作れると言いたいですよね。 川久保玲「アンリミテッド:コムデギャルソン」(平凡社)より引用
03 質問: 海外からのコム デ ギャルソン評価で 印象深いものはなんでしたか。
欧米のデザイナーやバイヤーや ファッション誌の編集長クラスに 話を聞いて川久保さんの評価を実感しました。 ほとんどのデザイナーが 彼女に影響を受けていたし、 デザイナーやバイヤーは川久保さんが 「市場の反応」を意識して 服を作る点を高く評価してますね。
誰がこんなものを着るのだろうと訝る服が、 数年後には当然のごとく主流になるところを バイヤーたちは信頼しています。それは 彼女がビジネスを忘れていないからなんですね。  「ビジネスを考えないなんてありえません」 という川久保さんの言葉も印象的でしたが、 ビジネスを考えながらも革新的な服を 二十年以上も作り続けるということに対する評価が 絶大なのですね。
彼女には商業主義に走って 大儲けする必要はないという 確固たる姿勢があるようです。 格別、会社を肥大化する必要もなく、 川久保玲という人の見えている範囲で 作ればいいのだという謙虚さが またすばらしいなぁと思います。  独創的で革新的なものを作るけど、 常にビジネスのことを考えていて、 しかも背伸びしたものではない 手のとどく範囲での仕事…… そういう川久保玲さんのトータルな姿勢が、 おそらく世界のいろいろな人に、 尊敬されているのだろうとぼくは思いました。
日本では、ファッションが 大切な文化と見られていません。 欧米では、欠かせない文化、 その認識は格段に違うわけで、 そこで評価されている川久保さんは ものすごいんですね。  川久保さんは 世界の中の日本も見据えています。 織職人も含めて日本の技術は 他にないすばらしさがあるけど、 どんどん衰退していると言うんです。 大きな職人文化が崩壊していくことを ものすごく悔しがっている。
川久保さんがえらいなぁと思うのは、 自分の仕事が日本の技術を どれだけ活性化できるかというところまで 考えているところなんですね。
パリコレで毎回何十種類の生地を作るすごさは 他にはないし、日本の産業のすばらしさを 誇りに持ちたいと彼女は思っているし、 それがなくなると すべてイタリアや中国から 生地をもらうことになるので、 だからこそ、新しいものを 一緒に作り続けなければならない と考えてるんです。  川久保さんは、 織職人が自分を支えてくれているという 意識が非常に強い方です。 コム デ ギャルソンと仕事をする織屋さんは 川久保さんの言葉から 新しい糸を開発するわけですけど。
『Unlimited : COMME des GARCONS』
(清水早苗+NHK取材班・平凡社刊)
感想をおくる 友達に知らせる もどる 2005-07-11 
Photo : " Unlimited : COMME des GARCONS " ( COMME des GARCONS + NHK )
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