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質問:
書く時に注意していることは何ですか? |
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ひとつの小説で自分がイメージしている
「言葉の使い方」や
「流れ」があるはずなのに、
つい、そうではないものを書いちゃうんです。
読みなおした時点で「ヘンだな」と気づいたら
面倒くさがらずにぜんぶ変えていくと、
まちがいなく自分がはじめに
イメージした線に沿うものに
なるはずなんですけどね。 |
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小説作品とは、
むしろ最初のイメージよりも
ふくらんでくるはずのものなのに
「つい書いちゃったところ」を
いいかげんに放っておくと、
最初のイメージ以下のものにしかなりません。
因果関係や論理性で作ってしまうと
小説は漫画になると言いますか……
ほんとにリアリティのあるものって、
因果関係に沿っていないんです。 |
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もちろん小説は現実にないことを
いくら書いてもかまわないけど、
構築の仕方は手触りとして
ヘンだとつまらないわけです。
論理性に沿っているだけだと
現実の中で起きているものごとの
つながりはわからないし、因果関係なんかで
言いきれる現実はおもしろくない。
なぜこのことが起きたのかは
説明がつかなくてもかまわないし、
むしろ説明がつくものの方が
チンケになってくるんですね。 |
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現実をよく見れば、
因果関係に沿わない流れの方が
あたりまえだということぐらい、
心の中ではわかっているはずなのに、
つまらない読み方をする人は、
論理だけで読んで
「こんなことはありえない」
と言いたがるものなんです。 |
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ヘタな小説を書く小説家志望の人たちは、
現実と切り離したところで
小説を作ろうとしていて、
小説としてしか書いてないんです。 |
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小説としてしか書いていないというのは、
頭の中で生みだした
「これが小説だ」
というイメージだけということで、
説明がうまくつかないところも含めた
「現実のように」
小説を組みたてようとしないと
小説にならないわけです。
現実から一回きれいに切り離してしまうと、
小説はおしまいなんです。 |
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小説とは現実か虚構かというと
基本は現実を扱うはずで、
虚構と割りきるところからはじめると
もうダメなんですよね。
前の『書きあぐねている人のための小説入門』で
使った例なんだけど、
「花を見て描く絵」ではなく
「花の絵を見て描く絵」になってしまうんです。 |
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火曜日に続きます。 |
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