
賢作 |
このCD、弱点は、
みんなでワイワイいいながら
聴けないところだよね。 |

俊太郎 |
そうだね。 |

糸井 |
内容がぜんぶ、
「オンリーワン」だからですよ。 |

賢作 |
だから、糸井さん的な聴き方してくれるのが
いちばん、とか思っちゃうな。 |

糸井 |
そういえば、『家族の肖像』を
スピーカーで流したことが、まだないです。 |

俊太郎 |
ずっとイヤホン? |

糸井 |
そうです。
まあ、かみさんが、家にいますよね。
スピーカーでこれを流すということは、
「おまえも聴けよ」「聴いちゃってもいいよ」
っていう、無言の圧力をかけることになるわけです。 |

俊太郎 |
うん、うん。 |

糸井 |
言葉が流れてくることは、
音楽が流れてくるのと違って、
「いいだろう」って言ってるふうなんですよ。 |

俊太郎
|
なるほどね。 |

糸井 |
言葉だけじゃなくて、
そういう音楽もいくつかある。
これはもう、まったく、そうなんですけど、
綾戸智絵さんと、矢野顕子さんについては
ほとんどかみさんに聴かせてないんですよ。 |

俊太郎 |
う~~~ん。そうか。 |

糸井 |
「いいだろう」って言ってるみたいになるのが、
嫌でね。
押しつけがましくなるんですよ。 |

賢作 |
確かにな‥‥。 |

糸井 |
そういうものって、 「届きすぎるもの」なんです。
届ける役目を持ってるものにふれるときって、
なんだか知らないうちに
「ひとり」になっちゃうんですよ。
谷川さんは、これを制作しているときは
どうやって聴いていたんですか? |

俊太郎 |
えーと。
そうだ、MDにして、
自分の部屋で、
わりと小さな音でひとりで聴いたのと、
それから、車の中でも聴きましたね。 |

糸井 |
車か。
あんまり泣いたりしなきゃ、
車でひとりで運転しているときが
いちばんいいかもしれないですね。 |

俊太郎 |
うん。僕、あんまりイヤホン使って
聴く習慣がないもんだから。 |

糸井 |
賢作さんは、いっしょに住んでいるご家族が
いらっしゃいますよね。
ご家族に、自分の仕事を
聴かせたりするんですか? |

賢作 |
します。妻には、します。
子どもたちにもするんだけれども、
どこまでわかってるのかな?
「ズッコケ三人組」とか、「ぶ~ば~が~」とか、
子ども向きのものは見せます。 |

糸井 |
それがしたくて、
子ども向けの仕事を受けるような
心境もありますか? |

賢作 |
いや、それはないです。 |

糸井 |
僕なんかは、明らかにそうでしたね。 |

賢作 |
へぇ! |

糸井 |
子どもに、自分が何かしてるのを見せたくて、
子どもの成長に合わせて仕事を引き受けてました。
「子ども」という動機がないと、
きっと、詩を書かなかったです。 |

俊太郎 |
あ、そう。ほんと! |

糸井 |
歌詞は、ゲームとして書けるんです。
だけど、音楽がつかない詩については、
書くつもりがまったくなかったんですよ。
「『一年生』の詩をやりませんか?」って
言われたときに、子どもが幼稚園だったから、
それ用に書いたとしかいえません。 |

俊太郎 |
うーん、なるほどね。 |

糸井 |
その後はほとんど書いてないです。 |

賢作 |
でも、子どもが劇中のインストの曲を
ハミングしてたりすると、
「あ、そこ、俺、俺」みたいな気になる。
あー、そうか! おとうか!
って言うの‥‥うれしいですよ。 |

糸井 |
だって、いちばん知ってるお客さんですからね。 |

俊太郎 |
そうね。
|