糸井 |
今回おふたりが出されたCD『家族の肖像』は、
1作目の『クレーの天使』、
2作目の『kiss』につづく3作目です。
今までに2作の例があったものだから、
ふつうだとその流れの中に入っちゃって
一種のルーティンワークになりがちですよね?
この1、2、3部作を並べてみると
3作目のタイトルだけが「あれ? 違うな」
という印象があったんです。
でも、まあ、とにかく
前2作の流れで聴こう、と思ったら
大まちがいでした。まいった! |
賢作 |
気分屋のわたくしどもの、
いいところが出たのでしょうか(笑)。 |
糸井 |
谷川さんが
このCDについてやったことは、
どういうところなんですか。 |
俊太郎 |
詩を新しくふたつ書いたことと、
詩や曲の配列を、
ちょっと直してもらったくらいかな。 |
賢作 |
でも、最初は「ゆうぐれ」の詩も
入ってたんだから。 |
俊太郎 |
そうそうそう。
「ゆうぐれ」って、お父さんとかが
死んでるっていう詩なんだけど‥‥。
自分では、すごい気に入ってるんだけどね。 |
糸井 |
ああ‥‥「ゆうぐれ」は、
僕は入っててもいいとは思いますよ。 |
俊太郎 |
はははは。 |
賢作 |
いやぁ、どうだろうなぁ(笑)。 |
糸井 |
「ゆうぐれ」を入れるのは
やめておく、ということの意味も、
もちろんわかります。
でもこのCDは
売れっ子ミュージシャンのように
「とにかく売れたい」っていう
種類のものじゃない。
今いちばんしたいことを
思い切ってやると、逆に
遠くまで飛ばせるような気がするんですよ。 |
俊太郎 |
うん、それはほんと、
そういう気がしますね。 |
糸井 |
「ゆうぐれ」は
このCDには入れなかったかもしれないけど、
それに近いものは、
この中にたっぷり感じられますよ。 |
賢作 |
すごいな。 |
糸井 |
このCDは、
誕生についてさかんに語ってるんだけど、
死について、語ってる分量が
ものすごく多いと思うんです。
生まれて終わるっていうことが
しっかりとこの中にあるんで、
気持ちいいんです。
始めと終わりが見えていて、
そのルールの中に
自分たちが生きてるということが
このCDの中にちゃんと入っている。
だから、感動しちゃったんだと思うんです。 |
俊太郎 |
うん、そうね。 |
糸井 |
僕が以前、テレビの番組をやっていたときに、
「死」のテーマの回に、
谷川さんに出ていただいたことがありますね。
死を語りやすい人ということで、まあ、
ここでも、つまりは、粗末に扱ってんですけど。 |
俊太郎 |
(笑)。 |
糸井 |
人間はある程度年をとったら、
たとえば60歳を過ぎたら、
死の話をしないようにしよう、みたいなことが、
どこかのとこにマナーとして出ちゃいます。
ところが、谷川さんとか、養老さんもそうですね、
自分でバンバンお書きになってます。 |
俊太郎 |
うん。 |
糸井 |
死について語れる老人というのが、
ときどきいるんですよね。 |
俊太郎 |
そうね。で、今、
ちょっと増えてきてますね。 |
糸井 |
それは、とってもいいことだと思うんですが。 |
俊太郎 |
そうそう。ほんと、そう思う。 |
糸井 |
そして、そのことこそ、
僕らは聴きたい。 |
俊太郎 |
そうですよね。 |
糸井 |
「生きて死ぬ」っていうことは、
すばらしいことだし、なんでもないことだし、
それを、先に生きてるものの役割として言うよ、
ということが、このアルバムに入ってるんですよ。
だから、「ゆうぐれ」が入ってても、
なんにも揺るがないですよ。たぶん。 |
俊太郎 |
うん。 |
糸井 |
もう、僕はこのCDをまるごと
買い取りたいと思ってるくらいなんですよ。 |
俊太郎 |
ほぉお(笑)。 |
糸井 |
谷川さん、
会社を作って売り歩きませんか? |
俊太郎 |
はっはっは。いいですけど。 |
賢作 |
それ、おもしろい、おもしろい(笑)。 |
糸井 |
これをどうやって
いちばん大勢のところに届けられるかを
考えるんです。
ヘリコプターでまくとかさ。 |
俊太郎 |
じゃ、資本金の振込先は、
ファックスで(笑)。 |
糸井 |
はい、よろしくお願いします。 こないだはタダで社員にしたから。 |
俊太郎 |
そうですよ(笑)。
|