怪・その1 「三段壁」
かれこれ10年ほど前、
和歌山県の白浜に泊まりで遊びに行ったときのことです。
白浜と言えば、
自殺の名所で知られる三段壁があるところ。
僕を入れて四人。
昼間に見た景色とは一変して、
月明かりで照らされた海面を眺めていました。
そのとき、白いネグリジェみたいなものを着た
人らしき形を取ったものが、
横からスッと現れて視角に入ってきたのです。
「へ!?」
と思ったら、その人らしきものは、
ストーンと海に落ちていって消えました。
「‥‥今、人が落ちていった」
と思わず口ずさんでしまったら、
一緒に来ていた三人は大騒ぎになり、
「だったら下に降りてみようや」
などと言ってきたのです。
とにかく引っ張られて、
下方へと続く両側が木に囲まれた道に
一歩踏み入れたその時でした。
突風のようなものが正面から吹いてきて、
僕は少し後方に飛ばされるような形で
へたり込んでしまったのです。
「あかん、やっぱり降りられへんわ。
行くなって誰かが言うてるんやと思う」
何となくそう思ったのを今でも覚えています。
無視して降りていたら、どうなっていたんでしょうね。
(おにゅう)
2005-08-05-FRI
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