怪・その3 「お遍路さん」
去年の夏、自宅で寝ていたときのことでした。
私の部屋は三階で、窓際のベッドで寝ていると、
家の前を「チリーン、チリーン‥‥」と数人の人が、
鈴を鳴らしながら、通り過ぎる音で目が覚めました。
夢うつつに
「まるでお遍路さんの鈴みたいな音だなぁ‥‥」
でも、こんな夜中に住宅街を歩くわけもなく、
「変だな」と目をつぶったまま、ぼんやり考えていると、
急に金縛り状態なり、息苦しくなりました。
それまでにも金縛り状態になったことは何度かあったので、
「またかぁ、このままじっと目をつぶったまま
金縛りが解けるのを待てば‥‥」
と思った瞬間。
「ドンッ」と誰かが私の胸の上に乗り、右耳の耳元で
「寝たふりしても、わかってるよ」
とささやいたのです。
その声は年配の男性で、ニヤニヤと笑いながら、
少しからかうような口調は忘れることができません。
その夜は恐怖のあまり眠ることも、
目を開けることもできずそのまま朝を待ちました。
朝になり、母に恐る恐る男の声が聞こえた話をすると‥‥
「やっぱり!
ここ2、3日ずっと、寝てると誰か知らない男の人が
布団の端を踏んで周りを歩くのよ」
(ゆう)
2005-08-08-MON
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