おさるアイコン ほぼ日の怪談2005
怪・その8
「エアバス」

国際線の客室乗務員をしています。
エアバス340型機には長時間のフライトに備えて、
地下に7つの小さいベッドを擁する休憩室があります。
もちろん乗務員以外は立ち入り禁止です。
同僚がある日、自分の休憩時間に
一番乗りで下に降りて行くと、
自分が寝ようと思っていたベッドに、
アジア系の年配の女性が寝ているのを発見。
「すみませんお客様、
 ここは乗務員以外は立ち入り禁止ですので‥‥」
と何度通達しても、
「いや、ほんとに気分が悪くて‥‥」と
繰り返すのみ。
業を煮やしてパーサーに言いに行こうとしたら、
「そうそう、主人が座席4Dに座ってるから、
 私(女房)はここにいるって教えてあげて」
とのたまわれ、仕方なくビジネスクラスの4Dへ。
「すみません、お宅の奥さん、
 乗務員専用の休憩室のベッド占領して、
 挙句の果てには主人に私はここよ、って伝えてとか、
 もうむちゃくちゃなんですけど‥‥」
と知らせるやいなや4Dの男性は、
怒りでこぶしを震わせ
「君のユーモアのセンスは最悪だ。
 ぼくは女房の故郷へ亡骸を戻しに行く
 傷心の旅の最中だということを、
 客室責任者から聞いていないのかい?」。
気持ち悪くてパーサーと一緒に再び階下に降りたら、
彼女の姿はもうなかったそうです。
そのベッドがひんやり濡れていた、というのは
良くあるパターンですが、
そのときは実際、
なんともいえない生臭い匂いが立ち込めていたそうです。
(なつこ)

2005-08-10-WED
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