おさるアイコン ほぼ日の怪談2005

怪・その31
「ささやく声」

中学1年生の夏でした。
私は一軒家の2階の自分の部屋で、
本を読んでいました。
ベッドに1人座って音楽もかけず、
部屋は静かでした。

そして夜の9時過ぎだったと思います。

突然耳元で、
がさがさっとした男のしゃがれた低い声が、
「まだ本読んでるの?」
と聞いてきたのです。

どんなに見回しても、部屋の中には誰もいませんし、
男性ならば、
1階の居間で父がテレビを見ているだけです。

階段を転がるように下りて父に確認したところ、
そんな事は言ってないといいます。
1階にいる人間が、2階にいる人間の耳元で
ささやくなんてできないですよね。

他に家にいるのは、
隣の部屋で眠っていた妹だけでした。

でも確かに私は耳元で言われたんです。
その夏は自分の部屋で眠れませんでした。

(ハヤシ)


「ほぼ日の怪談」にもどる もう、やめておく 次の話も読んでみる
2006-08-28-MON