おさるアイコン ほぼ日の怪談2008
怪・その10
いつもの車窓


高校生だった当時、私は池袋から出ている
T線という電車で通学していました。

いつもは友人たちと一緒に帰っていましたが、
その日は部活の片づけで遅くなり、
友人たちには先に帰ってもらいました。

電車内は少し混んでいたために座れず、
私はドア付近に立って
車窓をぼんやりと眺めていました。

すると、ポン、と背後から誰かに
肩をたたかれました。

私は友人の誰かだと思い振り向きましたが、
私の周りには誰もいませんでした。

気のせいか。
と再び窓の外に視線をもどすと、
そこには墓地が広がっていました。

その路線沿いに墓地がいくつかあったので
そのとき墓地が見えたことを
大して気にしませんでした。

数分後、ポン。

今度こそ友人だと確信した私は
「誰?」
と声を出して振り向いたのですが、
やはり誰もいません。

またしても、車窓に広がる墓地。

気味が悪くなった私は
ドアに背中をつけて立つことにしました。

しかし、数分後。


ポン。


窓の外を確かめる勇気はありませんでした。

(ぱいん)
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2008-08-08-FRI