怪・その7
高層ホテルの窓を
20代の頃に勤めていた会社で
泊まりがけの忘年会をしたときの出来事です。
地元の温泉に宿泊したのですが、
そこはタワーと呼ばれる
高層の新館が有名なホテルでした。
私たちの部屋は市街が見渡せる眺望のよい部屋で、
皆ごきげんでした。
深夜1時を回り、
ほろ酔いの私たちは皆大人しく就寝。
暗くすると眠れない、という先輩がいたので
床の間の明かりをつけたまま眠りました。
しばらくして、物音がして目が覚めました。
時計を見ると3時15分でした。
気のせいかなあ?と、またうとうととしたとき、
バン!バン!バン!
とガラスを叩く音が。
高層のタワーですから窓ははめごろしです。
ロールカーテンが下ろされているので
外は見えません。
しかも、室内では床の間の明かりがついているため、
外の影も映らず。
隣の部屋にいる男性陣の誰かが酔って、
部屋からしめだされたのかな、と考えつつも、
頭の隅では、窓は開かないはず、
しかも雪国の真冬の深夜なのにありえない、
と冷静な自分がいました。
そのあいだも、
バン! バン!
と不規則な感覚で窓を叩く音が続きます。
両の手のひらでガラスを叩く音。
声は全くしません。
ただ叩く音はとても強く、必死なかんじがします。
まさかこんな高層階のベランダに
人がいるはずがない、
鳥か何かがぶつかっているのかも、
と思おうとするのですが、
どう考えても手のひらでガラスを叩く音なのです。
だんだん怖くなって
寝返りを打つこともできずにじっとしていました。
するといきなり先輩が起きてトイレに行きました。
先輩はトイレのあと、玄関をあけ
廊下を確認して戻ってきました。
私はこの状況をどうにかしたかったのですが
怖くて声を出せず、先輩はそのまま
また眠ってしまったようでした。
ロールカーテンを上げる勇気もなく、
脂汗をかいていると、
20分程して急に静かになったのです。
私はいつのまにか眠っていました。
次の朝、確認したら皆にも聴こえていて、
やはり怖くて動けなかったとのことでした。
起きてトイレに行った先輩は、
玄関で誰かがイタズラしてるのかと思って
確認しに行ったけど、廊下には誰もいなくて
急に怖くなった、と言っていました。
ちなみに窓の向こうには
50センチ幅の非常用と思われる
ベランダ(通路)があったのですが、
そこには膝丈程度の手すりしかなく
積雪のうえには足跡もなかったのでした。
念のため男性陣に、
深夜にベランダにでたひとがいないか
たずねましたが、
もちろん誰も出ていませんでした。
(こずえ)
2009-08-09-SUN