怪・その40
見える人、見えない人
姉と私、そして共通の友人のAちゃんとで
旅行をして、ホテルに泊まった時の事です。
Aちゃんは、地下鉄のホームで
「それらしきもの」を見たり、
しょっちゅう金縛りにあったりする、
いわゆる「見える人」です。
私は幸か不幸か
まったくそう言った経験はありません。
ホテルはトリプルを取りましたので
三人一緒でした。
「何か飲む?」
「あ、ビールとって」
「Aちゃんは?」
「ジュース欲しい」
こんな感じでまったりと夜を過ごして、
Aちゃんもいつもと変わりませんでした。
夜も遅くなり、
お風呂から出てきた姉が
携帯を見てブツブツ言っていました。
しかし、疲れていた私は
構わずそのまま寝たのです。
翌日チェックアウトして
駅までの道を歩いている時。
姉が私たちに
「昨日私がお風呂に入ってる間に、
誰か私の携帯にいたずらした?」
と言うのです。
聞くと、待ち受け画面が
初期設定になっていたそうです。
私はまったく心当たりはないし、
Aちゃんも携帯は触っていませんでした。
姉がお風呂に入っている間
ずっと二人一緒だったので
間違いありません。
おかしいおかしいと私たちが話していると、
気が進まない様子で
Aちゃんが言ったのです。
「本当は黙っておくつもりだったけど、
子供がひとりいて、
ずっと部屋で遊んでいた。
その子、
携帯も触ってたから‥‥‥」
私は本当にぞっとし、
「いくら慣れてるからって、
全然そんな様子もなかった
Aちゃんが怖いよー!」
と言いました。
するとAちゃんは、
「その子の真横を全然平気な顔で
ビールとジュースを持って歩いている
なっちゃん(私)を見た時の方が
怖かったよ」
と私に言うのです。
まったく見えない人というのは
こういうものなのか、
とあらためて思ったそうです。
(ナツコ)
2009-09-01-TUE