おさるアイコン ほぼ日の怪談

「あたしの大事な人」

友人が体験したことです。

友人たちが車で旅行していたときのこと。
海沿いの大通りを走っていると、
友人の乗っている車の脇を
2台のバイクが通り過ぎました。
2台ともカップルの2人乗りです。
自分たちと同じように
この先の温泉地へいくのでしょうか。

そのとき友人は気がつきました。
2台目のバイクの後部座席に座っている
女の子の様子が少しおかしいことに。
顔に生気がないというか、
死相がただよっているというか‥‥。

その頃の友人は予知夢を見て
人が亡くなることを
あててしまったりすることがあったので、
同乗している友人たちに
今、感じたことを話しました。
「あの人たち、事故に遭うんじゃないかしら。」

車を進めていくと、
沿道のガソリンスタンドに
あのバイクが止まっています。
友人たちもそこに車を止め、
「道中気をつけた方がいいよ」と伝えようと
カップルたちに近づきました。
けれどそこには3人しかいません。
あの死相を漂わせていた
女の子の姿が見当たりません。
「トイレにでも行っているの? もう一人の子」
とたずねると、3人はとても驚いて、
この話をしてくれたそうです。

仲良くしていた2カップルだったんだけれど、
少し前に彼女は亡くなってしまい、
今日は供養も兼ねて、あの頃のように
バイクで出かけようということになったんです。
と。

彼女はすでに亡くなっていて、
友人たちが見たのは亡くなってもなお、
自分がいた場所、彼の後ろのタンデムシートを守る
彼女の姿だったのです。
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