「赤いバッグ」
私の知り合いS君が実際遭遇した話です。
釣りが趣味のSは
その日も友達と男2人で川釣りに出かけ
陽もそろそろ傾き家路についたそうです。
友達と車中で他愛無い会話をしながら、
車はすっかり暗くなってしまった山中を
走っていました。
途中、雨も降ってきて
山中の道は少し気味悪い感じだったそうです。
暫らく走ってると、
女の人が道の脇を歩いてるのが見えました。
この山の中で雨も降ってるのに
傘もささないで歩いてる女の人を
Sは「あ、これは‥‥」と思ったそうですが、
一緒に車に乗ってる友達もいるし、
もし、突然降りだした雨に本当に困ってる人ではと、
車を止めて声をかけてみたそうです。
その女の人は知り合いの家が
この道の先でお葬式で急いでると言ったそうで、
ならば通り道だし乗せて行きましょう、
という事になり、
女の人を後ろの席に乗せてあげたそうです。
暫らく走ってると
前方に明るくなってる家が見えてきて、
女の人が「あそこです」と言うので
家の入り口の前の方で車を止めたら、
女の人はお礼も言わず、
車を飛び降りて
走って家に入って行ってしまったそうです。
Sも一緒にいた親友も唖然としたのですが、
知り合いの葬式で焦っていたのではと思い
そのまま帰ろうとしたところ、
後ろのシートに赤いバッグが忘れられていて、
お葬式の最中に見ず知らずで
持ってくのもどうかと思ったそうですが、
そのままバッグを持ち帰る訳にもいかず、
Sと友達はバッグを持って
その家へ向ったそうです。
家の玄関で「すいませーん」と声をかけたら
奥から喪服の女の人が出てきました。
少し不審そうな顔をされたので、
今あった話をして
「バッグを忘れて降りて行かれたので
持ってきたんです」
と言ってその赤いバッグを見せたところ‥‥
その女の人は血相を変えて奥の人を呼んだそうです。
赤いバッグを見たその家の人達は
騒然となってしまって、
何事かと思っていたSと友達に
家の人の一人が話しはじめたそうです。
「これは、今日葬式をしてる本人が
川で溺れて亡くなった時に持ってたバッグで、
いくら探しても
このバッグだけ見つからなかったモノなのです」
と話されて‥‥
祭壇にはやはりその女の人らしい写真が
飾られていたそうです。
家の方達も驚いてはいながらも赤い鞄を見て、
泣いて感謝したそうです。
亡くなってからも
その赤いバッグが心残りだったのでしょうね。
その後の車中はSも友達もほぼ無言状態で
さっき遭遇した不思議な出来事に
呆然としたとの事でした。
流石に霊感の強いSも
この出来事には驚いたようでした。 |
|