フランコのミラノ2008-2009秋冬
メンズコレクションレポート!
今、イタリアの創造性が伝統にたち帰り、
過去からインスピレーションを受けようとしています。
まずは料理界でその動きがありました。
「伝統的な料理にもどろう」という流行があり、
次いで、イタリアン・ファッションも
時間を一歩もどろうとしています。
毎年1月に、次の秋冬をかざる最高のメンズファッションが
ミラノに集結する「ミラノ・コレクション」は、
今回も期待を裏切りませんでした。
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ドルチェ&ガッバーナ、
牧歌的に、伝統的に、イタリア的に。 |
ドルチェ&ガッバーナは未来的な素材を捨て、
よりイタリア的伝統の布を採用しました。
ウールです。
そこには、
かつて南イタリアのお婆さんたちが
編んでいたような厚いセーターも見られました。
第1次世界大戦が終わってすぐのころ、
南イタリアでは、特にシチリアでは、
羊(ペコラ)がもっとも貴重な動物でした。
羊は食用の肉や、
子どもに栄養を付けるミルクを提供し、
そのミルクからはイタリアでいちばん美味しい
ペコリーノ・チーズが作られます。
そればかりか、冬の寒さと闘う毛皮や、
ジャケット、パンツ、セーターなどを作るための
ウールも提供してくれるのです。
来年の秋冬のために、ドルチェ&ガッバーナは、
昔あったようなウールのセーターやマフラー、
そして「コッポラ」という帽子を、
また身につけようと提案しています。
「コッポラ」とは、
シチリアの羊飼いたちが愛用していた
伝統的な「ひさし付きベレー帽」のことです。
まさにコッポラ監督の映画
「ゴッドファーザー」を観た人は、
アル・パチーノ演じるマイケル(ミケーレ)が、
結婚のためにもどったシチリアにいるあいだじゅう、
銃を肩から斜めにかけて
頭に「コッポラ」をかぶったボディーガードに、
常に守られていた映像を思い出すかもしれません。
ドルチェ&ガッバーナにとっては、
かつてのマフィアっぽいコッポラ帽が、
来年の冬に若者の間で流行するアイテムなのです。
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イタリアブランド、元気いっぱいです! |
ヴェルサーチも、少なくも布については、
伝統に回帰しています。
ウール使いの、ほとんど足まで届きそうな
様々な色をしたロング・コートなど。
毎年成長を続けているボッテガ・ヴェネタは、
クラシックとカジュアルのミックスを提案しました。
1950年代風の帽子や細身のジャケットに、
センツァ・クラバッタ
(ネクタイをしないシャツの着こなし)などです。
もちろんジョルジオ・アルマーニは彼の伝統である
「脱構築的」ジャケットを発表しましたが、
それらには、スレンダーな若者たちしか
着こなせないという面もありますね。
「30歳すぎ」より「20歳代」に
ふさわしいスタイルと言えるでしょう。
でも、待ってください、
巨匠アルマーニは若くない人たちのことも
ちゃんと考えています。
カラフルで暖かいセーターや、大きな革のバッグなど、
すぐにもフェラーリに乗って
夢のバカンスに旅立てるような、
人生経験の豊かな人こそが、
自然な感覚で着こなせる物もありました。
ミラノ・コレクションのショーの会場は、
観客席にいる世界のVIPたちによる,
おなじみの「ファッションショー」の場でもあります。
有名サッカー選手たちも、
そこにいないわけはありません。
マッテラッツィをはじめ、
アルマーニ・ジーンズのイメージキャラクターである
カカらが見受けられましたが、中でも
ルイス・フィーゴ夫妻が大きな喝采をあびていました。
サッカー選手を引退したら、
彼はファッションデザイナーになっていた、
なんてこともあったりしたら、面白いですね。
訳者のひとこと |
「コッポラ」ですが、
coppola storta ゆがんだコッポラ と言うと、
マフィアのちんぴらを意味するようです。
厚ぼったくて暖かいセーターは、
暖房を控えめにしたエコ生活にも役立ちそうです。
ファッションも世相を反映するもの‥‥なのかしら?
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翻訳/イラスト=酒井うらら |
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