フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

ASローマの運命は?!

derossi

お金持ちがイタリアでショッピングとなれば、
たとえばローマでは、
伝統あるコンドッティ通りやスペイン広場で
ヴァレンティノの最新モデルや
ブルガリの宝石を買うことが予想されますが、
大金持ちのアメリカ人たちや
オイルマネー満杯のアラブの富豪たちは、
何を買うためにイタリアの首都まで来るのでしょうか?

正解は、
「サッカーチームの
 ASローマを買いに来る」です。

本当に、ここ2年間インテルのライバルとなって
スクデットの奪い合いをしているASローマを買うために、
彼らがやって来たのです。

franco

センシ・ファミリー、ローマを手放す?

ASローマの大株主であるセンシ・ファミリーは、
借財を返済するために、ここ2年ほどで、
ローマ中心街のホテル数軒と
不動産などを売却せざるを得ませんでした。
そして数ヶ月前のこと、銀行融資の返済のために、
自分たちが保有するイタルペトローリ社の、
株の束を担保にしました。
この会社はアラブ諸国から原油を買い、
精製してイタリア市場にだしており、
大きな利益をあげています。

今日という今日、石油は富の泉みたいなものです。
その業界にいる人間は
石油が生み出す大金を有り余るほど
手にできる大金持ちばかりです。
例えば、民間会社ではヨーロッパで最大手の
製油会社サラスのオーナーであり、
インテル会長のマッシモ・モラッティも、
その一人ですね。

さて、もう一方で大金を稼いでいるのは
ファンド業界の人間です。
ここにジョージ・ソロスという
ハンガリー出身のアメリカ人で
世界屈指の富豪がおります。
彼はASローマを買うために3億ドルを提示しました。

francorossi

日本でも彼の名前は知られているでしょう。
10年ほど前にセンセーショナルで議論の余地のある
雑誌『TIME』の表紙にもなった
ファイナンシャル操作で富を築いたソロスですが、
彼がサッカーに興味を持っているとは、
とても思えません。
たぶんトッティやデ・ロッシのことも
知らないのではないでしょうか。

francorossi

しかし、彼がASローマの代表取締役である
ロッセッラ・センシに提示した額は、
話し合うには充分に莫大だったので、
先週、両者が会ってほぼ合意に至ったらしいと
報道されました。

francorossi

ソロスはスポークスマンを通して、
サッカー・マーケットにも
多額の投資をする用意があると、
いかにもサッカーに興味があるような
発表をしたのですが、でも、本当はどうでしょう。
ASローマを買うのは、
本当はセンシ一・ファミリーの真の宝である
イタルペトローリ社への足がかりにするためだ、
という印象を持った人が多いのです。

franco

アラブ側から、2倍額の提示が?!

ところが、製油会社へのアプローチとなれば、
アラブ側も黙ってはいないようです。
ソロスとセンシの取引がオフィシャルになる前に、
全ての商談を管理する弁護士が、
あるドバイの族長がソロスの2倍の金額を用意していて、
彼からも提示があるかもしれないと、すっぱ抜きました。

事ここに至っては、
大富豪たちが触手を伸ばしている相手は
サッカーチームのASローマではなく、
じつはイタルペトローリ社の方ではないかとの印象が、
いよいよ確かなものになります。

そして今、トッティやデ・ロッシは
ASローマのパワーや旗頭としてではなく、
チームに利用される可能性も出て来ました。

ASローマのティフォーゾたちはのんきなもので、
「ソロスにせよアラブ人たちにせよ、
 だれかチャンピオンを買ってくれるかもしれないし、
 それも良いのではない?」と、期待しています。
しかし現実には、その反対のことが起きうるのです。
つまり、逆にASローマが宝石のような選手たちを
メルカートに出すということが。
ASローマのチームを身売りさせないためには、
大きな収入が必要ですから。

その場合、32歳で最近膝の手術をしたばかりの
トッティよりも先に、デ・ロッシが
メルカートに出されるとしましょう。

そうなれば、ことはASローマの競売ではなく、
イタリアで最も完璧なミッドフィルダーである
デ・ロッシ選手の落札合戦になります。
結局はACミランかインテルに終わるのでしょうが、
彼が出されたとなれば、マンチェスター、チェルシー、
レアル・マドリード、バルセロナなど、
ユーロッパで最も強く裕福なチームが
総出で競売に参加するのではないでしょうか。

こうしてASローマの衰退が始まるのかという、
嫌な予感がします。

訳者のひとこと

ロッセッラ・センシさんは
「チームは売却しない」と語った
との報道もあるようですが、
さて、どうなることでしょうか。

トッティは
「ASローマのオーナーは
 ローマ弁をしゃべらなきゃ」と言ったようです。
これはギャグのふりをした本気のような気が‥‥。

翻訳/イラスト=酒井うらら

franco

フランコさんのくわしいプロフィールは
こちらからどうぞ。


フランコさんの個人サイトは
http://www.francorossi.com/
フランコさんのビジネスのサイトは
http://www.taro23.it です。

urara 酒井うららさんのプロフィールは
こちらからどうぞ。


酒井うららさんのイラストを
まとめて見るならこちら!

2008-04-29-TUE

BACK
戻る