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みなさんもご存知のように、
イタリアの首都はローマです。
そして、ぼくの住んでいるミラノは、
イタリアの商工業の中心地です。
話は1950年代初頭にさかのぼりますが、
第2次世界大戦で何もかもをなくし、
疲れ切っていたイタリアも、
復興を目指して大きく動き始めていました。
ミラノがイタリア商工業の中心地になるまで、
さほど時間はかかりませんでした。
イタリアの中でも貧しい地域である南部から、
数百数千の労働者たちが職を求めて
ミラノに来てくれたおかげでもあります。
新しい参入者たちへの歓待ぶりと、おおらかさから、
当時のミラノは「手にハートのある街」、
つまり「真心のある街」と言われました。
その時代から半世紀以上が過ぎた今、
南部から職を求めて来る人たちは激減しました。
今や、どこであっても
仕事が減り続けているという事情も原因しています。
状況は変わったとは言え、ミラノは今でも、
ずっと変らず「手にハートを持つ街」であることを、
再確認できるような出来事が起こりました。
先週のこと、ミラノの街は、
遠い南のシチリアで捨てられた犬たちを、
大量に迎え入れたのです。
シチリアにある
個性的な街のひとつであるモディカは、
職人技で作られる特別なチョコレートを
生産することで有名な街です。
スペインがメキシコを制圧した時代に作られた、
古いレシピをそのまま引き継いで作られるチョコです。
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このモディカの名前が、残念なことに先月、
イタリア国民たちを震撼させる記事で、
新聞の第1面に載りました。
モディカの街の路地には、
たくさんの捨て犬たちが暮らしているのですが、
その中の野生化した数匹が、
ジュゼッペ・ビアフラという10歳の少年に襲いかかり、
噛み殺したというのです。
こうして、モディカの街でもモラルの退廃が進み、
犬を虐待したり捨てたりすることを
なんとも思わない人々が少なからずいる事実が、
明るみに出されました。
イタリアのテレビ局は
カメラマンをモディカに送り、
路地にも近くの浜にも沢山の野良犬たちが
なかば野生化し、まるでオオカミのように
誰かれ構わず食いつこうとしている
映像を流しました。
これを見た視聴者たち、
特にミラネーゼたちは仰天しました。
イタリア人は犬が大好きで、
哀れで可哀想な犬にこそ
愛情を注がなくては、
という気持になります。
OIPA(国際動物愛護団体のひとつ)からは
数名のボランティアたちがモディカに行き、
里子に出せそうな犬を探しました。
野性的な環境で暮らしてはいるものの
健康そうな犬を数十匹ほど見つけ、
病気を持っていないかどうか診察した後、
OIPAのメンバーは
その犬たちをミラノ近くの
パウッロと言う街に連れて来ました。
そこでもシャンプーなど、いろいろなケアをして、
里子に出せる状態に整えたのです。
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その犬飼育施設の名前は
il Ponticello(小さな橋)と言いますが、
その犬たちが特別チャーター便の飛行機で
ミラノのリナーテ空港に到着した映像を見て、
すぐに人々の動きが起こりました。
映像の放映直後には、何十件もの家族から、
モディカの地獄から救われた犬を
引き取りたいとの連絡が来たそうです。
モディカの犬たちは、
希望者たちにあずけられる前に、
子どもたちのそばでも危険なく
おだやかに暮らせるかどうか、
特殊なテストを通過しなければなりません。
でも、連れて来られたのは、
とりわけ従順でおだやかな、
生後数ヶ月内の子犬たちがほとんどですから、
空腹や虐待にさらされて
やむなく野生をむき出しにした
成犬とは、違います。
この子犬たちはすぐに
平和とおだやかさをとりもどすでしょうし、
里親たちもそういう環境を、
子犬たちに与えられるレベルの家庭でしょう。
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そんな、モディカの地獄から救われた犬の話題、
数週間はもつとしても、
いずれきれいに忘れ去られてしまうのかもしれませんが。 |