ガンジーさん。
いつ途切れるかわかりませんが
今後ともよろしく。

102.ふたりは弱気?

いつも元気でだじゃればっかり言ってる
ガンジーさんだけど、
たまに、ちらちらっと、
寒い日の降り始めの粉雪みたいに
弱さというか、哀しみみたいなものが見えることがある。

ちょうどよく、ぼくもそんなふうに弱気だったので、
そういうことを書いてメールを出した。

___________________________

最近弱気なのは、ひとりじゃない。

ガンジーさんへ。

最近弱気なのは、ひとりじゃないですよ。
糸井重里です。

ちゃーんと、しっかりぼくも弱気です。
快調にぶっ飛ばした後は、必ずその反動がくるもので、
弱気気味にじっくり考えなければいけないことが、
山積みに残ります。

若いときのように、善悪や好き嫌いだけで
いろんな判断ができたら、
きっともっと楽なのでしょうが、
もっと物事は複雑ですものね。

ガンジーさんの気持も、幸福感のいらないお釣り
みたいなものなのかもしれませんね。
「釣りはいらねぇ。それであったかいもんでも食いな」と、
気取ってみるしかないでしょう。

今日の転送は、
ガンジーさん宛てでないものにしてみましょうか。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

娘の誕生日

今日は娘の誕生日。17歳 おめでとう!
このごろ あんまり 話もしなくて 話す時は
お互い いつもけんか口調になっちゃって
ごめんね。ホントは もっと いっぱい いろんなこと
話したいのよ。

7ヶ月の早産で 830グラムという ちっちゃなからだで
一所懸命 保育器のなかで がんばってたよね。
私も 毎日 おっぱいを 搾って 病院へ届けてた。
たった 1ccの母乳を 鼻から 
管でとおしていたんだよ。

1000gを超えた、1500gを超えたって 喜んで
1700gになった頃 
はじめて おっぱいを 直接 飲ませた時は
とっても 感激した。
もう これで 大丈夫かなって 思えたよ。

今 その頃の事を 忘れて 
あなたに いろんなこと 要求したり
いろんな勝手な親の思いを ぶつけたりして 
反省してます。
あの時は 生きていて欲しいって 
純粋にそれだけを願ってたもの。
こんなに 元気で丈夫な子に 育ってくれてありがとう。
これからも 健康で いろんなことに チャレンジしてね。
いつも 応援してるよ。         hahaより


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(この後に、とても相手を思いやりあっている
若いふたりのメールの抜粋をペーストしました。
そっちはとてもプライベートなので、中略します)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

どういえばいいのでしょうか。
ぼくは、ガンジーさんから見たら
まだまだ若いのでしょうが、
それなりに人生の折り返しを走っている人間です。
でも、次の時代を走ってくれる
「新しい、若いランナー」が、
確実に育っているんだと、実感します。

弱気な日には、こういう若い生命を愛おしむことで、
心を休めます。
長すぎるメールでもうしわけありませんでした。

おやすみなさい。

___________________________

というぼくのメールに、翌朝。
さらにガンジーさんから着信。
___________________________

先生っ! ガンジーです。

弱気なのは....の件ですが、
おなじ目せんまで、降りてきてくれる、って、
何か嬉しいですね。
教師だったら最高の資質、才能の大先生です。 
もっとも、いきなり、そんな風に言ったとしても、  
”先生は、わかっちゃいない”
と、思われるでしょう。  
”辛いのは、お前だけじゃない” なんて。

毒舌、って言われる人が、
普段のフォローをしっかりやってるのと
同じだとおもいますが、如何?
教会の牧師が、懺悔を聞く時は、どうなんでしょうね。

転送して戴いた3通のメール、
人生の奥深さ、を知りはじめたって感じですね。 
この次、赤城山を掘る時は、
こういう人たちを仲間にしましょう。

勿論、ガンジーがわかるというわけでは、ありませんが。
66年の生涯のうち、
(ただいま崖っぷちが伸びてますが) 
今ほど、不安のない、楽しい日々の記憶がありません。
これって、坊主の言う、
”悟り” っていうやつでしょうか?

崖っぷちに立っていて、不安がない、
といきるのは我ながら、”やるねっ” って、
てめぇのこと誉めてます。
子どもたちの、先行きを案じることもありません。
「親戚新聞」 が、役に立つとも、立たないとも、
それは彼らの器量次第だと、おもっています。

いい料理人と出会えて、”おもしれぇなぁ、人生って” と
今日も、食欲をさがしに、
これから散歩×1000を歩いてきまーす。

___________________________

「まだ、会ったことのもない年上の男性」と、
こんなふうなメールのやりとりをしているのは、
はたから見たら、脳天気なお調子者なのかもしれない。
だけど、何度も会っても、
どうしても心開く気になれない相手もいる。
世代が近くても、話の通じない相手もいる。

ぼくがお調子者であるように、
ガンジーさんがお調子者で、
ほんとによかったと、ぼくは思っている。

先日「今日のダーリン」にも書いたけれど、
巨人の村田捕手のことば。
『いいかっこするわけじゃないけど、
いいかっこしたいじゃないですか』
人間なんて信じられない、裏切り合いだ、ということが、
より真実に近いのだとしても、
そうじゃないほうが「かっこいい」と、ぼくも思うから、
いいかっこしたい。
きっとガンジーさんも、そういう性格の人なんだと思う。

(つづく)

2000-12-04-MON

BACK
戻る