349.先のことなんてわからない。
ガンジーさんは、ぼくのことを、
なにかと「向こう見ず」と言いたがるんだけれど。
それはそれで、ドラマとしてはおもしろいんだけれど、
向こう見ずと、そうでない人の境界線は、
どこで引けるのだろうか。
もともと『ガンジーさん』の連載がはじまる時に、
先がどうなるかなんて、誰がわかっていたか。
医者にも、本人にも、わからなかったんだと思う。
会ったこともないぼくにも、むろんわからない。
だけど、わかろうとするために、
どれだけ時間をかけたところで、
すっかりわかることなんて、ありえない。
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「ひとまず帰港」
良きにつけ悪しきにつけ何か大事が始まる前には
その伏線が敷かれているように思う。
突発的に発生するものではない。
ガンジーがこの1年間、生き長らえて来られた裏にも
それなりの理由があった。
その最初の芽は朋姫からのパソコンの贈り物であり
その次が糸井さんとの出会いであった。
そのきっかけはたった7文字ではじまった。
「癌爺です、ハイ」である。
今思うにたったこれだけの言葉で
この1年間を占った糸井さんの眼力に
ただただ驚愕するのみです。
ほぼ日を起ちあげて2年余、
まだ基礎の固まってない時だったともいえる
その大事な時に海のものとも山のものともつかぬガンジーを
外郭の仲間に加えてくれたのは
いわば冒険としかいいようがない。
スタートさせたはいいけれど、
どんな事を書いてくるやらどんな展開になるやら
まったくわからない、
すぐ死んでしまえばそれなりに納まる事だが
そうでない場合は皆目先のわからない計画だ。
みずから起ちあげた「ほぼ日刊イトイ新聞」の
足かせになりかねない。
やっぱりdaring,darlingだ。
向こう見ずな人だね。
ちょうどサントリー社是の
「やってみなはれ!」とおなじだ。
続けることは大切な事だが何でもそうではない。
長い間の勉強の結果が、経験が
勘となってあらわれたといえるかもしれない。
連載をはじめてまもなくだったか
連載が始まる前だったか
よくおぼえてないが、
「この人と知り合えてよかった」
とのメールをいただいた時ガンジーは思った、
何故まだ会ってもいないのに
そんなことが言えるんだろう?
と不信感をもったことも白状するよ。
でも世の中にはいろんな人がいるもんだ。
凄いなぁと思うとともにあきれてもいる。
そしてガンジー丸は1年の航海をおえて
いま港に帰ってきた。
船長も出航時には想像できなかった数々のお土産と
航海術を学んで無事帰港でき感慨無量である。
さらにこのささやかな自信をもとに
装備を充実し次ぎの航海への準備をしたい。
この1年を振り返って思うことは
人生ってわからないものだなぁ、ということで
それはますますわからなくなってしまったよ。
諸君にあらたまって言いたいのは
何があっても
決して人生をあきらめてはならないということ。
今は無事でもこの先に何があるかわからない。
病気や失職だってありうる。
他人の浮気や不倫を笑っていても、
もしかしたら自分がそうならないとは断言できないからね。
離婚を考えるなんて
幸せの時にはまずできないことだもんね。
でもガンジーが予想もしなかった病気にかかったのと
おなじようにいつなんどき災難がふりかかるかもしれない。
ガンジーは父親が70歳、
それも信じられない老衰という医師の診断で
あの世へ旅立ち、
母親は89歳まで
最後の数ヶ月をのぞいて元気に過ごしていた。
だからこの病気は、まさか?とのおもいだった。
70歳ぐらいまでは現役で働き
それなりに楽しめる人生と考え、
たかをくくっていたんだよ。
人生何があるかわからないとは
イイことばかりではないというわけで、
人間万事塞翁が馬と順番にくるものでもない。
続けざまに吉事が続くかもしれないしその反対もありうる。
経済的なことならばイイ時に貯金しておくこともできるが
そうはいかない場面もあるだろう。
家庭をきずいたからには楽しみもあるかわり
問題もおきるだろう。
そんな時諸君はどうするか。
それはいい家族、親戚そして友達だ。
そんなこと縁起でもない、と
くさいものに
フタみたいな考えをすて人生をしっかり構築しょう。
ガンジー
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反対意見もあることは承知だけれど、
円周率を「とりあえず、3」にして計算しよう、
とすることを、ぼくは悪いこととは思わない。
どうせ、いままでだって、せいぜい3.14という
100分の1の単位までしか教えてなかったわけだから。
無限につづく数字の不思議については、
それはそれでそういう物語を聞かせればいいではないか。
そんなことを、ぼくは思う。
ガンジーさんの連載の先行きが予想できたとしても、
10年も20年も先までわかるはずがないわけで。
書くことがなくなったら休めばいいし、
ちがうなぁってことを思えば、ツッコミを入れればいい。
スタートからしばらくは、
特殊な状況にある人の連載だからと
ブームのように読者がつくだろうけれど、
そういう勢いは、必ず収束していくものだ。
「読者みんなに飽きられるほど続けましょう」と、
ごく初期の頃から言っていたのは、本気だ。
「そうなってもいい」という覚悟さえあれば、
どういう内容になったところで、あわてることもない。
それだけのことなんです。
ガンジーさんの連載は、冒険でも向こう見ずでもなく、
「そういうおじさんが、います」ということです。
毎日、声を出してはしないけれど、
数千人の人たちが、このページを読んでいます。
なんか、自分でも整理できてないままに書いてるけど、
なんか、そういうことです。
(つづく)
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