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原 |
当時、スタンフォードには、
アップルコンピュータのスティーブ・ジョブズが、
しょっちゅう来てたんですよ。
当時、設立されたばかりでしたけど。
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糸井 |
ああ、そいう時代なんですね。 |
原 |
アップルなんてヘンな名前だなぁって‥‥。
なんで、コンピュータなのにアップルなんだと。
リンゴのマークがついてるし、
コンピュータだとわからなかったやつが
冷蔵庫にしまっておいただとかね、
そういう話がいっぱいありましたよ、当時。 |
糸井 |
なるほど、はい、はい。‥‥ほんとかな?(笑) |
原 |
そのほかにも、スタンフォードには、
なにやらヒッピーみたいなね、
わたしとあまり歳格好も変わらないような
若い創業社長が、
けっこう何人も出入りしてたんですよね。 |
糸井 |
そこで「オレにだって、できる!」と? |
原 |
うん、こいつらがやれてるんだったら、
わたしにもできるはず。
少なくとも、こっちのほうが、きちんとしてる。
だいたい、やつらはいいかげんだし‥‥なんて(笑)。 |
糸井 |
うん、うん(笑)。 |
原 |
でも、そのときに不思議だったのは、
彼らの会社って、
2年や3年で大会社になっちゃうんです。
もちろん日本にだって、
本田宗一郎や松下幸之助をはじめ
偉大な創業者はいるけれど、
ホンダや松下が
あれだけ大きな会社になるまでには
何十年と、かかってるわけじゃないですか。 |
糸井 |
なにがちがうんだ、と。 |
原 |
はい、で、調べたんですよ。
そうしたら、
経営のイロハなんて知らないんだけれど
すぐれた能力や夢を持ってる若者を見い出して、
彼らに経営力と資金を出してる人たちがいる‥‥
ということが、わかったんです。 |
糸井 |
それが、ベンチャーキャピタルだった。
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原 |
そのとおりです。
すぐに百科事典で
「ベンチャーキャピタル」という言葉を引いた。
でも、載ってない。
そこで、たしか、ベンチャーは「冒険」だし、
キャピタルは「資本」だな、と。
「冒険資本」なんて言葉は聞いたことないけど、
ひょっとしたら、
わたしが知らないだけかもなと思って、
こんどは国語辞典にあたってみた。
でも、やっぱり載ってない‥‥。 |
糸井 |
それじゃ、なんなんだ、と。 |
原 |
図書館にいっても、わからない。
ベンチャーキャピタルに関する文献なんて
まだない時期ですから。
それでも、なんとか調べだして、
だんだんだんだん、
これは‥‥たいへんおもしろいぞと。 |
糸井 |
こんどは、その場所が。 |
原 |
ええ。つぎは、そこに行こうと。
‥‥でも、決め手はね、
考古学と似てるなと思ったんですよ。 |
糸井 |
ほう‥‥。 |
原 |
たとえば、わたしがおもしろいと思って、
なにかを掘り出したり、
なにかを見つけたりしたとするじゃないですか。
で、そんなもの、どこがおもしろいんだと、
いわれちゃうとしますよね。
でも、それが「ルーブル博物館」へ入ったら?
みんな‥‥「すごい!」というんです。 |
糸井 |
なるほど(笑)。 |
原 |
ベンチャーキャピタルもいっしょ。
わたしが、見込みがあると思った企業を、
なんの条件もなしに評価する
オピニオンリーダーとか学者なんて、
ほとんどいないんです、その時点では。
でも、たとえばバングラデシュの会社が、
創業から2年で250人の従業員を雇用して、
業績も上向きになりそうだとなると‥‥。
IMF総会のモデルケースとして
とり上げさせてほしいと、こうくるわけですよ。
そうなると、もう、
遺跡のカケラがルーブル博物館に入るのと
いっしょでね。 |
糸井 |
バングラデシュの会社って、
もう軌道に乗ってるんですか?
2年のスピードで? |
原 |
ええ。だから、これはおなじ職業じゃないかと。 |
糸井 |
そうだ。たしかに(笑)。 |
原 |
ますます、わたしにもできるじゃないかと
思ったんですよね。
だから、
ベンチャーキャピタルをやろうというのも
ビジネススクールにはいって
3〜4カ月めぐらいには、もう、決めてましたね。 |