- 原
- (まわりのスタッフに)
今日は、またおもしろいね。
ボク、糸井さんと話するとおもしろいね(笑)。
去年も、おもしろかったですよね。
- 糸井
- ねぇ(笑)。
ぼくはただ、ふつうに正直に
しゃべってるだけなんですけど。
- 原
- いや、なんか引き出されてるような感じがします。
- 糸井
- じゃあ、もうひとつ、正直に訊きます。
去年もここでこうやって、シーズンがはじまる前に
原さんに1年間の展望をうかがいましたけど、
去年のシーズンが優勝しながらも
思ったようにいかなかったというのは、
目指した野球が間違っていた、ということですか?
- 原
- いや、決して間違いではなかったと思うんです。
やっぱりそれぞれの選手が
コンディションをつくれなかった。
本来の力を発揮した人がいなかった、
ということだと思います。
- 糸井
- たしかに、十分に力を発揮したっていう
選手がいなかったですねぇ。
ほんとに、誰ひとりとして‥‥。
- 原
- いや、もう、あれが100パーセントの力であるならば、
クビですよ、今年、その連中は。
- 糸井
- はははは、クビではないけれども(笑)。
- 原
- まだ彼らは本来の力を出し切れてない、
と思うからこそ、球団は彼らと契約したんです。
うちの選手は、あんなもんじゃない。
- 糸井
- はい、ファンとしても、そう思います。
でも、去年は、それでも優勝できたという、
ほんとうに不思議なシーズンでした。
やっぱり、さきほどもお話に出ましたが、
守備がよかったですね。
- 原
- 守備はもう、随所に、
神業みたいなプレーが出ていました。
- 糸井
- あと、走塁面もよかった。
(鈴木)尚広を筆頭に。
- 原
- はい、よかったですね。
あと、去年のチームのよかったところとしては、
個の力が出づらかった状況のなかで、
「ここはチームとして動こう」というときに、
誰しもが、パッと同じ方向を向けたんです。
- 糸井
- ああー、なるほど。
- 原
- 四番バッターであろうが、
ここは「バントだ」っていうときには、
サッとチームプレイに徹することができた。
- 糸井
- そうですね。
過剰に自分を犠牲にして奉仕するわけじゃなく、
やるべきときにきちんとチームプレイができた。
- 原
- そう、そう。
チームとして動いたけれども
結果としてうまくいかなかった、
というケースはもちろんあります。
しかし、チームとして動こうというときに、
誰かがそれを乱してうまく動けなかった、
ということはなかったですね。
- 糸井
- それは、去年、優勝できた
大きな要因なんでしょうね。
- 原
- ええ。団結力ですよね。
- 糸井
- 団結力。
- 原
- このチームは、団結力と、
さきほどから言ってる守備力というのは、
そうとう高いものがあると思っています。
- 糸井
- 今年、チームを「解体する」とはおっしゃってますが、
団結力に関しては、引き継いでいきたいですね。
- 原
- そうですね‥‥。
まぁ、しかし、団結力は大切なんだけども、
その団結力をいつ発揮するのか、
ということもありますよね。
- 糸井
- え?
- 原
- つまり、1点をしのぐギリギリの状況になって
団結力をみせていくのか、
あるいは、点差の開いた余裕のある展開において、
さらに団結していくのか‥‥。
ボクは、後者だとラクなんだけどなぁ(笑)。
- 糸井
- 監督としては(笑)。
- 原
- そう(笑)。
- 糸井
- いやぁ、ほんとに、
今年は力を発揮してほしいです。
- 原
- ええ。力も技術も、すばらしいものを
持っているわけですからね。
- 糸井
- ちょっと違うテーマになりますが、
ぼくは、「技術」について、最近よく考えるんです。
たとえば、画家の横尾忠則さんは、
ぼくが「横尾さん、いま、欲しいものはなんですか?」
って訊くと、「技術だ」って言うんですよ。
ぼくは絵の専門家ではありませんが、
横尾さんって、技術はもうぜんぶ持ってるんじゃないか、
というようなイメージがある人なんです。
でも、「欲しいのは技術だ」って言うんですね。
「技術がないからこれしかできないんだ」って。
ともすれば、人って、
「技術じゃないんだ!」という言い方で
「技術」ということばを使うんですけど、
ぼくは、年を取るにしたがって、
「できたことは技術があったからできたんだし、
できないことは技術がないからできないんだ」
っていうことを、しみじみ思うんです。
原さんは、技術について、どう思われますか?
- 原
- ボクは、技術は個性だと思ってますね。
- 糸井
- はー、「個性」。
- 原
- 技術は個性。
プロ野球選手でいうと、
髪型とか、ユニフォームの着こなしとか、
そういうことをイメージするかもしれませんけど、
そんなの個性じゃないです。
やっぱり、技術を持つことが個性。
そこでいう技術がどういうものかというと、
ここぞ、というときに発揮できるもの。
そういうものが技術であり、
その選手の個性なんじゃないかと思います。
- 糸井
- たとえば、かつての、
川相選手のバントとか。
- 原
- そうです、そうです。
もう、あれなんか、
まさに技術であり、個性ですよね。
- 糸井
- いまいる選手でいえば、井端選手の右打ち。
- 原
- いや、もうあのしつこさね。
うちは、いい打者は多いんだけど、
「凡打が淡泊」な選手が多いんです。
そういうなかで、やっぱり、
井端は凡打でもしつこいですからね。
- 糸井
- そうですねー。
「凡打が淡泊」も、よくわかる(笑)。
- 原
- 今年は、そうならないようにしたいですねぇ。
いい打者でも7割は凡打ですからね。
10打席のうちの2本とか3本のヒットも重要ですが、
7打席、8打席の凡打の内容を
我々は問わなきゃいけない。
- 糸井
- はい。
- 原
- まぁ、ひとりひとりの選手が
100パーセントとはいわないまでも、
8割、9割の力を発揮するだけで、
チームの力はものすごく大きくなります。
去年は、8割くらいの力さえ、
発揮できなかった選手が多かったですから。
- 糸井
- そうですね。
その意味では、今年はすごくたのしみですね。
- 原
- ええ。そこを見てください。
「やっぱりか」と
思われないようにがんばります(笑)。
「また接戦か!」ってならないように(笑)。
- 糸井
- 監督がほめられてるようじゃいけないですね。
- 原
- ぜんぜんダメです、それはもうほんとうに。
去年は、少なからず、采配や試合運びを
ほめていただくこともありましたけど、
正直、ちっともうれしくなかったですから。
- 糸井
- 「誰でもできるよ、あそこの監督は」
って言われなきゃダメですよね。
- 原
- そうです、そうです。
「あそこは選手がいいから」って。
「誰が監督だって勝つよ」って。
- 糸井
- 言えるように準備しておきます。
「原でもできるんだよ」って(笑)。
- 原
- そうです、そうです。ほんとうにそう。
- 糸井
- 言われたいですねえ(笑)。
- 原
- 「ボクはなんーにもしてませんでした」って言いたい。
初回からサイン送ってるようじゃダメです。
違うんだ、プロ野球は。
- 糸井
- はい(笑)。
- 原
- 違うんだ、プロ野球は。
- 糸井
- 何回も言うほど(笑)。
- 原
- はい。がんばります。
- 糸井
- たのしみにしています。
ありがとうございました。
- 原
- はい、ありがとうございました。
- 糸井
- 今年もおもしろかった(笑)。
- 原
- 糸井さんと話すといつもおもしろくなる。
- (原監督との話はこれで終わりです。
そして、ペナントレース、開幕!)
2015-03-31-TUE