ほんとうにほんとのハワイ。 |
■Vol.8 母の血筋をたどって Dudoit(デュドワ)part2 クレメンタインお祖母さんに会ったのと同じ年、 私たちの合唱クラブは Kawaiahao Church(カワイハオ・チャーチ)に 見学に行くことになりました。 ふたつ目のお話はそこで起こったことです。 カワイハオ・チャーチは ハワイの王族と縁の深い歴史ある教会で、 ホノルルのダウンタウン、 パンチボウルとキング・ストリートの2本の道が 交差する角に建っています。 ハワイにもっとも影響を与えたキリスト教宣教師 ハイラム・ビンガム師が建設したその建物は、 1万4千ものサンゴのブロックで造られています。 ひとつのブロックの重さはなんと453kg。 それらのサンゴは地元のダイバー達が ハワイの珊瑚礁から取ってきたものだそうです。 この建物が完成したのは1842年のこと。 建設に取り掛かってから完成まで 実に5年の歳月を要したといわれています。 教会ができ上がった1842年の7月21日には、 4000から5000人もの信者が詰めかけました。 その日から、1917年に最後の女王 Liliuokalani(リリウオカラニ)が亡くなるまで、 王族の人々はここで祈りを捧げ 賛美歌を歌い、婚礼や、洗礼式、葬儀などを 執り行ってきました。 珊瑚のブロックで作られたカワイハオ・チャーチ 古い教会の前に立ちその姿を見上げたとき 私は深い畏敬の念を抱かずにはいられませんでした。 中に入り目を閉じると古い木の匂いが心地よく、 100年以上もの歳月を、くり返しくり返し、 人々に神様の教えを説いてきた 牧師たちの穏やかな声が聞こえてくるようでした。 見学が終わり、 私たち一行が教会から出ていこうとしたその時、 ひとりの男の人が入れ違いに教会に入ってきました。 その人は私たちを見て、まず自己紹介をしました。 「私はヴァレンタイン・デュドワです」 デュドワという苗字は母の一族以外にはないので、 私はそこでまた、今まで会ったことのない 親族の人に出会ったのだと確信しました。 彼は教会の管理をしているそうで、 私たちに教会の歴史やそこにまつわる 王族の話などを聞かせてくれました。 教会内部の後方には、 コアの木(ハワイに自生する堅木)の柵で仕切られ 高座になっている一角がありました。 そこにはベルベットが張られた椅子がいくつか置かれ、 一般には立ち入り禁止になっていました。 「ここは、ミサのときに王族の方々が 座る場所だったんですよ」 と彼は言いました。 王族に敬意を払う意味で、柵の向こうへは 誰も入れないようにしてあるのだそうです。 説明を聞き終わったところで、 私は彼のそばに行き、小さく自己紹介をしました。 彼とは親戚だということを知らせたかったのです。 すると、予想もしなかったことが起こりました。 彼は私の祖母の名前を確かめると、 にっこり微笑み、私を強く抱きしめました。 そして、私の腕をつかみ コアの木の柵の中に連れていき、 「さあ、ここに座りなさい」と ベルベットの椅子を私に勧めたのです。 私には、なんのことやらさっぱりわかりません。 友人たちも私同様、目を丸くしてるし、 「いーなー。なんでタマラだけ?」 という声も聞こえます。 13歳の私には、こんな特別扱いされることより 友だちのほうが大事です。 美しい椅子に座ってみたものの 恥ずかしくて、ベルベットの感触を 味わう余裕などありません。 その時、身を固くしている私に 彼がこう囁きました。 「君はali'i(アリイ=王族)なんだよ」 その言葉は私に少なからずショックを与えました。 私はなんにも知らない。 私の知らないことがまだまだたくさんあるんだ……。 “私自身がどこから来たのか、 そのことについてもっと知りたい” 私は強くそう思いました。 この二つの奇妙な出来事は、私に大事なことを知らせる サインだったんじゃないかと私は思っています。 ハワイにはこんな諺があります。 『未来を知るためには まず、過去を知ることから始めよ』 |
2000-06-17-SAT
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