ほんとうにほんとのハワイ。 |
■Vol.13 ケアリイ・ラシェル Hawaiian Music Part 2 深い悲しみが込められた歌が数多くあるにも関わらず、 その旋律はいつも穏やかで美しく平和な印象を与えるのが ハワイアン・ソングの特徴です。 だから、外国の人々は必ずといっていいほど、 ハワイの歌からヤシの木や きれいなビーチをイメージするはず。 ハワイアン・ソングによく使われる 特殊なギターの弾き方“スラッキー”や、 ノミが跳ねているようだと形容されるウクレレの音も、 そういったイメージを想起させる 役割を果たしているのかもしれません。 ハワイアン・ミュージックに 外国からの影響を見て取ることは容易ですが、 それでも最近では、ハワイらしさ、 ハワイならではの音楽としての特徴が ますます強くなってきました。 そういったハワイアン・ソングの旗手として 代表的なのが、Israel Kamakawiwa'ole (イズリアル・カマカヴィヴァオレ)と Keali'i Reichel(ケアリイ・ラシェル)です。 彼らは、ハワイ語やハワイの伝統、 そして文化を残すことに重点を置き それらを音楽で表現することによって 若い人たちの興味をうながそうと頑張っています。 とくに、ケアリイ・ラシェルは 私が一番好きなミュージシャンです。 その理由のひとつは、彼がハワイの文化を 伝えることに大変な努力をしている点、 そしてもうひとつには、 彼が私と同じマウイの出身だという点です。 ケアリイ・ラシェルはかつて、 子供たちにハワイ語を教えるための学校 Punana Leo O Maui(プナナ・レオ・オ・マウイ)の 創立時のディレクターでした。 また、マウイ・コミュニティ・カレッジで ハワイ文化とハワイ語の教師を務めたり、 伝統文化の専門家としての活動や、 ワイルクのベイリ・ハウス・ミュージアムの 館長を務めるなど、文化保存のための仕事に ずっと従事していたそうです。 彼は非常に多才な人で、素晴らしい声と 人の心をとらえるメロディを作る才能にも 恵まれていました。 彼が作り出すのは、新しいものと古いものが 彼の中で融合したかのような 独特で、ほかの誰にもまねできないような音楽です。 しかも、なによりも“とてもハワイらしい”のです。 1994年、彼は初めてインディペンデントのレーベルから 伝統的なハワイアン・ミュージックと ハワイアン・コンテンポラリーのコレクション 『Kawaipunahele(カヴァイプナヘレ)』を リリースしました。 そして、このCDを発表したことが その後の彼の人生を大きく変えることになりました。 にわかに、ハワイアン・ミュージシャンとして 脚光を浴びることとなり、 続いて『Lei Hali'a(レイ・ハリア)』(1995) 『E O Mai(エ・オ・マイ)』(1997)、 『Melelana(メレラナ)』(2000)と 次々にCDをリリースし、あっという間に ミュージシャンとしての地位を不動のものにしたのです。 数々の賞を受賞した最新作『Melelana』 この数年の間で、彼は「Na Hoku Hanohano」 (ナ・ホク・ハノハノ=ハワイのグラミー賞といわれる 権威ある賞)にて17もの受賞を果たしました。 さらに、ビルボード誌のワールド・ミュージックの チャートではいつも上位にランクされ、 彼の名は世界的にも知られるようになったのです。 ほかのミュージシャンからの注目も集め、 有名なカントリー・シンガーのボニー・レイトや、 セリーヌ・ディオン、スティングなどと一緒に コンサートを開いたり、その活躍は まさに華々しいものとなりました。 ケアリイはとても忙しいスケジュールの中でも、 フラの生徒たちのために、 歌詞にハワイ語を用いた曲作りをずっと続けています。 彼によると、それこそが“本来の仕事”なのだそうです。 そして、単なるミュージシャンとしてだけでなく、 人々からハワイに対するステレオタイプをなくし、 本当のハワイを知ってもらうために 言うなれば“文化の伝道師”のような活動に もっとも力を注いでいるのです。 どんなにその名が知られ、スターになっても それ以前とまったく変わらない とても謙虚な人柄も、彼の尊敬すべきところ。 音楽が、失われつつある古のハワイに 人々の心を近づけるはずだと信じている 彼の姿には心を打たれます。 もし、皆さんがハワイとハワイの音楽について 少し知りたいと感じたなら、 彼の音楽はそのスタートとして最適だと思います。 いま東京に住んでいる私が、 ハワイに帰りたい気持ちになったとき 必ずかけるのが彼のCDなのです。 柔らかく優しく、ちょっとメロウな彼の声を聴くと、 いつでも涼しいハワイの風を感じることができるし、 花の香りがかすかに混ざった 懐かしいホームタウンの空気を鮮明に思い出します。 ハワイの美しさを凝縮したような その声とメロディラインは、 きっと、皆さんの心にも “本当のハワイ”のエッセンスを届けてくれるはずです。 |
2000-07-05-WED
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