hawaii
ほんとうにほんとのハワイ。

■Vol.14 スラッキー・ギター
 Hawaiian Music Part3

Hawaiian slack-key guitar(ハワイアン・
スラッキー・ギター。ハワイ語ではkiho'alu=
キホアルと呼ばれている)は、世界でも非常にユニークな
ギターのスタイルとして知られています。
その技法は、弦をゆるくしてチューニングを変化させ、
自在に音を操る独特のものです。
スラッキー・ギターの奏でる音は、甘くソウルフルで、
それはまるでプレイヤーの魂が体の奥から指先に
流れ出ているかのような印象を受けます。

弦を叩いたり、指でつまんで弾いたりするテクニックは、
ハワイアン・ソング特有の裏声を使う歌い方を
真似て表現されたもの。
さらに、トロピカルの自然がそういった音楽に
インスピレーションを与えているともいわれています。

音楽は、様々な文化の中でも、
もっとも外国からの影響を受けやすいものといえます。
スラッキーがどのようにして生まれたかについては
いろいろな説があります。
一説には、19世紀に来たヨーロッパの船乗りたちが、
6本の弦を持つギターを
ハワイに伝えたのが始まりといわれています。
また別の説では、1832年にカメハメハ三世が
肉牛の世話の仕方を教えてもらうために
メキシコ人やスペイン人をハワイに呼んだため、
彼らの楽器と音楽がハワイに伝わった、
という話もあります。

そうやってハワイ人は、外国の音楽や楽器から
やがて自国の伝統を受け継いだ
独自の音楽を作り出しました。
スラッキーの弾き方は、
1880年代から1890年代にかけて
ハワイ文化の復活と発展に尽力した
カラカウア王の時代にハワイ中に広まりました。
カラカウア王は古代のハワイの音楽を守るだけでなく、
ウクレレやギターなどの外国の楽器を積極的に取り入れ
ハワイの文化を活性化させることにも努めました。
1883年の彼の戴冠式には
イプやパフなどハワイの伝統的な楽器に
ギターをフィーチャーした、
新しいスタイルのフラ・クイが披露されました。
古いものと新しいものを組み合わせて
新たに生まれたフラ・クイによって
ギターやウクレレなどの楽器も、ハワイの音楽に
欠かせないものとなっていったわけです。


スラッキー・ギターの第一人者、
ギャビー・パヒヌイ(1921〜1980)


かつて、スラッキーを弾く人は限られており、
人々はスラッキーを演奏するには
非常に特殊な才能が必要だと信じていました。
スラッキーが奏でる音の秘密は
そのチューニングに隠されていて、
奏者はそれを代々受け継ぐ家族にしか
教えなかったそうです。
しかし、それも時代とともに変わってきました。
ハワイの文化を残していくことへの
必要性を感じた奏者たちは、家族以外の人々でも
スラッキーを学びたいという意欲のある人になら
広く伝えていこうと新たな活動を始めたのです。

ハワイは、いつの時代も
外国文化と自国の文化とミックスさせ、
独自のものを生み出してきました。
スラッキー・ギターの独特なチューニングと
その弾き方を広く伝えることによって、
そうしたバックグラウンドを持つ
ハワイならではの文化の形も
同時に受け継がれていくのです。
類い稀な才能を持ち、スラッキー・ギターの
第一人者といわれたギャビー・パヒヌイは、
スラッキーを人々に教え始めた最初のプレイヤーです。
次回は、彼についてのお話を
ご紹介してみようと思います。

2000-07-08-SAT
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