hawaii
ほんとうにほんとのハワイ。

■Vol.20 ハワイアン・ピジン
 Hawaiian Language Part5


19世紀、ハワイに次々とできた
サトウキビやパイナップルなどの白人経営の農園の
働き手として様々な国の人々がハワイにやって来ました。
日本人、中国人、ポルトガル人、韓国人、
フィリピン人、そしてプエルトリコ人……。
まったく違う言葉を話すそれらの人々が集まり、
しかも、共通の言語がないという状況で、
急場しのぎのような形で生まれたのが
Hawaiian pidgin(ハワイアン・ピジン)です。
ピジン・イングリッシュとは、
ブロークンな英語という意味ですが、
ハワイのピジンはかなり特別なものです。
今回はそれについてお話ししたいと思います。

ハワイのピジンは、“訛り”とは大きく異なるもの。
厳密に言うと、ハワイアン・ピジンは
Creole(クリオル)と呼んだほうが正確です。
英語という言語がハワイに渡り、
ハワイで独自の言語として生まれ変わった、
と解釈するのがいちばん近いのです。
ピジンは、もちろんもとの英語とは随分違いますが、
「間違った、でたらめな英語」ではなく、
それ自体の文法さえ、ちゃんと確立しています。

19世紀の頃、働き手として
ハワイに渡ってきた外国人たちは、
やはり単語を連ねただけの
シンプルな英語を話していました。
ところが、それらの人々の2世3世になると、
ブロークンだった英語が別の形に変化してきたのです。
言葉は生きているとよくいわれますが、
英語が母国語でない人たちによって
話されていたピジンもまた、世代を重ね、
多くの人々に定着したことによって
ひとつの言語と呼べるほどのものに育ったわけです。

しかし、ハワイアン・ピジンのルーツが
そういうところから来ているというのは、
人々にネガティブな印象を与えているのも事実です。
1930年代から40年代にかけて、
州はピジンを「間違った英語」と判断し、
学校でも、生徒達にピジンを話さないようにという
指導を始めました。
現代になっても、ピジンは労働者階級の言葉だという
イメージがあるため、就職の際には
スタンダードなアメリカ英語を話せなければ
採用してもらえないところもあります。

それでも最近では、ようやくピジンのイメージも
少しずつ変わってきたようです。
言語学の専門家の中では、ハワイアン・ピジン
(専門的にはハワイアン・クリオル・イングリッシュと
いいます)がハワイの第一言語だと考える人もいます。
つまりその場合、
英語はセカンド・ランゲージとなるわけです。
私もその意見にはまったく賛成です。

私たちハワイに住む人間は、ハワイアン・ピジンに
少なからずプライドを持っています。
それは自分がどんな人種かということには関係なく、
カマ・アイナなら誰でも同じです。
ハワイのピジンには独特のリズムがあるのが特徴です。
アフリカン・アメリカンの人たちが
ラップ・ミュージックを生み出すほどの
リズミックな言葉を話し、
それがcoolだとみんなに思われているように、
ハワイでもピジンはcoolなのです。
だからハワイでは、
アメリカ本土で話されている英語は
逆にダサいと思われてしまうほどです
(とくに若者にとっては)。

では、ここでまた、
ハワイアン・ピジンがどんなものか
少しだけご紹介してみます。

●Broke da mouth (発音はブローク ダ マウト)
 英語のBroke the mouth がもとになっています。
 意味は、“すごく美味しい”。
 美味しくて口がこわれる、ということです。
 日本語で言う“ほっぺた落ちる”に似てますね。

●Da kine (発音はダ カイン)
 英語のThat kind of thing がもと。“〜とか”、
“ほら”、“みたいな”のような意味です。
 サーフィンのブランドの名前にも使われています。

●Howzit (ハウズィット)
 How is it? がもと。“どう、元気?”の様な意味で
 あいさつに使われます。

●I owe you money or what? 
(アイ オー ユー マニ オア ワット)
 直訳すると“あなたにお金借りたりしてる?”ですが、
 ハワイでは“なに見てんだよ”となります。
 人をじっと見るのは失礼なことなので、
 そうされた人は必ずこんなふうに抗議します。

●Make house (メイク ハウス)
“自分の家にいるみたいにリラックスしてね”
 という意味。

●Shaka (シャカ)
 英語でいうAllright!、Great!、Well done!
 にあたります。これを言うときは普通、
 小指と親指を立てるポーズをします。
 ハワイのロコなら子供も大人も
 “Shaka”をやります。下の写真は、私の甥が
 覚えたてのシャカを見せているところ。
 左のKiyozoはなかなか上手ですが、右のTevaはまだ、
 ちょっと練習が必要かもしれません。



●Chicken skin (チキン スキン)
 鳥肌のことです。英語ではgoose bumps といいますが
 ハワイではこう。これはまさに日本語の影響です。

●Hawaiian time (ハワイアン タイム)
 遅れること。自分のペースで時間をかけてやること。
 もし皆さんがハワイに来て、現地の人がいつも遅れたり
 まったく時間を気にしてないように見えても、
 許してあげてください。
 ハワイの人はのんびり人生を楽しむのが好きなのです。

2000-07-29-SAT
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