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ほんとうにほんとのハワイ。

■Vol.22 ハワイの伝説
Night Marchers ナイト・マーチャーズPart2


私が子供の頃、私たち家族は
よく父の叔母の家に遊びに行きました。
ある夜、私がまだ10歳くらいの時だったと思います。
私たちはいつものように彼女の家に
夕食に招かれて行ったときのことです。

時計が6時を指すころ、
当時20歳だった従兄のパットがガールフレンドと、
それに彼の親友とそのガールフレンドを連れて
帰ってきました。
「これからハナにキャンプをしに行くんだ」
パットたちは、泳いだり釣りを楽しんだりして
ハナで週末を楽しもうという計画を立てていました。

「どこへ行くんだって?」
父はもう一度パットに聞き返しました。
その声にはなぜか心配の色が感じられました。
「ハナだよ」
「なんで、そんなにも遠くに行くんだ?
 ハナのどこでキャンプするか、もう決めてるのか?」

私はリビングルームに座り、
ダイニングで交わされている彼らの会話を
聞くともなしに聞いていました。
父はなにかを心配しているようでしたが、
それがなにについてなのか、私にはわかりませんでした。

「心配いらないよ」
パットは笑いながら言いました。
ガールフレンドや友だちの前で
精一杯クールに見せようとしているようでした。
パットと父は従兄ですが、歳は20以上も離れています。
だからパットは、父が彼を
子供扱いしてると思ったのかもしれないし、
あるいは、父がなんのことを言っているのか
さっぱりわからなかったのだと思います。

父は“困ったやつだ”というように
頭を横に振りながらこう言いました。
「おれが言いたいのはな、パット。
 もし、妙な太鼓の音を聞いたら
 すぐさま逃げ出せってことだけだ。
 タフなところを見せようなんてバカなこと考えないで、
 ただ逃げるんだぞ」
パットの顔を見ると、
彼は父が半分おかしくなったと思ってるみたいでした。
彼は軽くうなづくと、何事もなかったように
友だちと出かけてしまいました。

ところが10時をまわったころ、
私たちはパットの車が戻って来た音を聞きつけたのです。
なぜか、家にいるみんなはじっとしたままで動かず、
私はパットが出かける前に
父が言っていたことをすぐに思い出しました。
「きっと、なにかあったんだ!」
怖いような気持ちがこみ上げてきましたが、
それでも私はなにが起こったのか
知りたくてドキドキしてきました。

ダイニングの椅子にゆっくりと座ったパットの顔は、
まるで死んだ人のように青くなっていました。
そして彼は、話し始めました。

まず、パットたちは
キャンプにちょうどいい場所を決め、
そのあと森の奥に薪を拾いに行ったそうです。
ところが、森の中でパットは
たいまつの明かりのようなものを見かけたのです。
でもそのときは、彼はなにか
“別のもの”だと思ったようです。
なぜなら、明かりは見えるけれど
なんの物音も聞こえてこなかったから。

しかし、その直後、太鼓の音が聞こえてきました。
パットは必死で駆け出しました。
もうそのときには、彼にはその音がなんなのか
十分にわかっていたのです。
無我夢中のパットには
後ろを確認する余裕などありません。
ただ、走りながら、友だちがみんな一緒に
逃げていることを祈りました。
彼はひたすら、どんなに走っても
すぐ後ろを着いてくる太鼓の音から
逃れることだけを考えていました。

「もう、逃げ切れないかもしれない!」
そう思ったころ、ついに彼は森を抜け、
キャンプするはずだった場所までたどり着きました。
気がつくと、友人たちも彼のすぐ後ろにいます。
彼らは慌てて荷物をまとめると、
なにも言わず家に向かって車を走らせたそうです。
キャンプを楽しみたい気持ちなど、
もちろん消え失せていました。

叔母の家からの帰り道、私は父に、
パットたちは何に出会ったのかたずねました。
父は、私がおびえないように細心の注意を払って
なんとか説明してくれたのですが、
やっぱりその夜、私は怖くて眠れなくなってしまいました。

それが、私が初めて
ナイト・マーチャーズについて知ったときのこと。
そのときの私はまだ10歳だったので、
怖いという気持ちのほうが強く、
この伝説を完全には信じていなかったように思います。
でも、大学に入ってから私は再び
ナイト・マーチャーズの話を聞くことになりました。
そして、その話で私は本当に
この伝説は生きているのだと信じるようになったのです。

<To be continued>

2000-08-05-SAT
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