hawaii
ほんとうにほんとのハワイ。

■Vol.23 ハワイの伝説
Night Marchers ナイト・マーチャーズPart3


このお話は、私がハワイ大学の
学生だったときに聞いたものです。
ハワイ語の授業で、ハワイに残る不思議な話について
みんなでディスカッションしていたときのことです。
先生が、誰かいい話を知っている人はいないかと
私たちにたずねました。
すると、ちょっと意外だったのですが
クラスでも一番静かなカレオが手を上げました。
彼はとても真面目な青年で、
注目を集めるために話を作ったり、
わざとドラマチックに変えたりということは、
決してできないタイプです。
そして彼が話してくれたストーリーは、
私の知っているナイト・マーチャーズの話の中でも、
もっとも忘れられないものとなりました。

カレオが話してくれたのは、こんなお話でした。

カレオが高校生だったころのある日。
お祖父さんがカレオを呼んで唐突にこう言い出しました。
「お前に約束して欲しいことがある」
「うん。なんだい?」
「わしが死んだあとのことだ。
 どんな理由があろうとも、
 友だちとパリに飲みに行ったりするな」
「オーケー、お祖父ちゃん」
「約束だ。どんなことがあってもだぞ」
「約束するよ」

それから間もなく彼のお祖父さんは亡くなり、
カレオはいつしか
お祖父さんとの約束も忘れてしまいました。
彼のお祖父さんが言っていた場所、
オアフ島のPaliは若者の間で人気のあるスポットです。
正しくはNu'uanu Pali(ヌウアヌ パリ)という
地名なのですが、地元の人は皆パリと呼んでいます。

100年以上昔、カメハメハがオアフを攻めたとき
何百ものオアフの兵を崖に追いつめ
勝利した場所として知られる有名な土地です。
その際、追いつめられ行き場を失ったオアフの兵たちは
次々と崖から落ちて死んでいったといわれています。
その崖は山の非常に高いところに位置し、
昼間はカネオヘを一望する
美しい眺めを楽しむために多くの人々が訪れます。
50台ほどの車が停められる駐車場は高い木々に囲まれ、
その後方には山がそそり立っています。

夜は、高校生たちが車でやってきて、
友人たちと飲んで騒ぐ場所となっています。
パリは悲惨な歴史があることも手伝って
ちょっと不気味な雰囲気があり、
それが好奇心旺盛な若い子たちが出かけたがる
理由のひとつにもなっていました。
パリにまつわる怖い話もたくさんあります。
その中のいくつかは事実ですが、
もちろん単なる噂も少なくありません。
噂の多くは幽霊についてのもの。
そのほとんどはカレオよりも年下の子たちが
パリで酔っぱらい、もっと盛り上げようと
大げさに話して広まったものです。

さて、ある週末のこと。
カレオはいつものように友人たちと車に乗って
どこに行こうか話していました。
するとひとりがパリに行こうと言い出したのです。
カレオはドキッとしましたが、
なにか言うと怖がっていると
思われるような気がしたので黙っていました。
しかし同時に、彼の頭の中では
お祖父さんが言っていた言葉が響いていました。
彼はなにも考えないようにして、
それを頭から追い出そうとしました。

そうして夜10時を少し回った頃、
彼らの車はパリに着きました。
ところが駐車場は
同じような若者たちの車でいっぱいです。
それで彼らは手前の道路脇に車を停め、
駐車場に向かって歩くことにしました。
カレオはだんだん罪の意識を感じ、
ここには今後もう二度と来ないと
自分に言い聞かせていました。
けれどもその次には「もう来てしまったのだから
友人たちと楽しく過ごそう」と腹を決め、
お祖父さんのことは考えないようにし始めました。
そのときのカレオには、
これから彼の身にどんなことが起こるかなど
まったく想像もできなかったのです。

<To be continued>

2000-08-08-TUE
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