hawaii
ほんとうにほんとのハワイ。

■Vol.28 ハワイの伝説
Menehune メネフネ Part1


前にご紹介したナイト・マーチャーズと同様、
Menehune(メネフネ)もハワイでは
非常に有名な伝説のひとつです。
メネフネとは、もともと、私たちの先祖よりも
もっと古くからハワイに住んでいたと
信じられている“民族”です。
その昔は、かなりの数のメネフネがいたらしいのですが、
いまはもうわずかしか残っていないと言われています。
彼らの生息地は、森の暗い繁みや倒れた木の幹の穴、
または火山の溶岩が山肌に流れてできたほら穴など。
メネフネは、簡単に言うと
“羽のない妖精”みたいなものなのです。

彼らはタロイモやパンの木、バナナなどを
森の湿地や人間が登れないような
険しい崖に栽培しています。
褐色の肌を持つメネフネは、太陽が海に沈み、
月が山の上にのぼってくると活動を始めます。
もし、ツタやタロの葉陰から鼻歌が聞こえてきたら、
気づかれないようにこっそりのぞくと
たくさんのメネフネたちが集まっているのを
見ることができるそうです。
この小さな人々メネフネの身長は、
人間の男性のひざ下にも満たないくらい。
肌は溶岩が固まった岩みたいな茶褐色で、やや毛深く、
その目はいつも好奇心で輝いています。

メネフネたちは、小さな体にもかかわらず
非常に力が強く、エネルギーに満ちあふれています。
しかも、仕事にも遊びにも同じように一生懸命。
ククイの実を投げて的にあてるゲームや、
仲間同士でのボクシングやレスリング、
ピリの葉(ハワイでは昔、この葉を使って
家を建てていました)をソリの代わりにして
斜面を滑り降りたり、彼らの遊びは独創的です。
なかでも一番お気に入りは、
高い崖の上から川に向かって石を投げ、
そのあと自分も川に向かってジャンプして、
石と同時に川の底にタッチする、という遊びです。

彼らの仕事ぶりも大したもので、
知恵と工夫、そしてリーダーの統率による
素晴らしいチームワークで
どんな大変な仕事でもこなしてしまいます。
メネフネの仕事には奇妙なルールがあります。
それは“必ず一晩で仕上げる”というもの。
もし、一晩で仕上がらなかったら、
それはもうあきらめてしまって、放置したまま。
完成させることはないそうです。
ハワイには、そうやってメネフネが完成できずに
そのまま放っておかれた(といわれている)
建物や池などがいくつか残っています。

メネフネは、ハワイの人々にとてもフレンドリーで、
ときどき力を貸してくれたりもします。
中でも、もっともありがたいのはカヌー造り。
カヌーを造るには、
まず大きな木を石の斧で伐りだすのですが、
ハワイ人にとって、石でできた斧で大木を伐り倒し
海まで運ぶ作業は大変辛いものでした。
しかし、メネフネたちは
それをたった一晩でやってしまいます。

「ハワイアンの男が朝、海にやって来てみると、
 完成したカヌーがいつでも出帆できるように
 浜に置かれていた」
というような、メネフネの協力を語りつぐ
伝説はたくさん残っています。
仕事を手伝ってくれたメネフネたちは、
ごほうびの食べ物を楽しみにしています。
彼らの好物はエビやココナツのプディング、
それにタロイモやサツマイモなど。
もし、メネフネがハワイ人のために
カヌーを造ってくれたなら、
そのあとにちゃんとお礼をしなくてはいけません。
カヌーの持ち主が分別のある人だったら、
間違いなく、生姜の花やカラフルな葉で
美しく飾った敷物の上にメネフネの好物を並べ、
彼らの労をねぎらいます。
そうすると、彼らは日の沈むころにやって来て
楽器を演奏したり、歌ったり、
にぎやかにご馳走を楽しむのです。
そして一番鶏が鳴くころまでパーティを満喫すると、
月が消え太陽が新しい1日を知らせる前に
森の中へと戻っていくのです。

メネフネはハワイの伝説のなかでも、
私が大好きなもののひとつ。
こんな隣人がいるなんて、
とても素敵なことだと思いませんか?
いまはメネフネを単なるフェアリー・テイルだと
考えている人がほとんどですが、
私は、彼らはいまも森の奥に住み
夜になるとみんなで遊んだり働いたり、
陽気に暮らしているのだと想像します。

私たちのすぐ近くに、
メネフネたちも楽しく暮らしている。
ずうっとそんなハワイであって欲しいと思うのです。

2000-08-29-TUE
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