ほんとうにほんとのハワイ。 |
■Vol.30 ハワイの伝説 Menehune メネフネ Part3 父は、信じられない思いで 褐色の小さな人を見つめていました。 “ぼくがいま見てるものは 一体なんなんだろう?” 父はそのまま動けなくなっていました。 すると、小さな男の人は 父に向かってなにか話し始めました。 でも、その言葉は訛りのあるハワイ語で 父には理解できませんでした。 急に怖くなった父は、ドアを閉めると お祖母さんたちのいるところまで走っていきました。 慌てふためいた父の様子に、 「一体どうしたっていうの?」 と、父のお母さんが心配して聞きました。 「外に、すごく小さな人がいるんだよ! アーノルドはビックリして逃げちゃったんだ」 お母さんは笑いだしました。 父が大人の注目を集めようと 作り話をしていると思ったのです。 ところが、父のお祖母さんは違いました。 お祖母さんは、一生懸命説明しようとする 父のあとをついてきてくれました。 父は玄関のドアを開け、小さなハワイ人の男が 立っていたというポーチを指差しました。 しかし、そこにはもう 彼の姿はありませんでした。 「ちょうどここにね、 ちっちゃいハワイ人が立っていたんだよ。 ぼくにハワイ語でなにか言ったんだけど、 ぼく、全然わからなかったんだ」 お祖母さんはすべて分かっているというように 深くうなずくとこう言いました。 「それは、メネフネだね」 「見て!! あそこにいるよ!」 次の瞬間、父は叫びました。 家の脇の木の下の暗がりに、 メネフネが立っていたのです。 父の家のすぐ前には、普段は乾いていて 雨の時だけ水が流れる川があり、 メネフネはそこへ降りたかと思うと 山の方向へ駆け上がっていきました。 父も乾いた川へ飛び降りると メネフネの後を追いかけました。 ところが、メネフネの足は幼い父よりもずっと速く、 小さな人影は夜の闇にすぐに溶け込んでしまいました。 父はそこに立ち尽くしたまま、 メネフネを見失ったあたりをずっと見つめていました。 闇の奥からメネフネが 父をじっと見ているような気がしたのです。 そのうち、父に家に入るようにと お祖母さんが呼ぶ声がしました。 ようやく父が落ち着くと お祖母さんは言いました。 「彼は多分、お前に何か言いたかったんだね」 「でも、なにを?」 「それは分からない。 ときどき、彼らは何かのメッセージを伝えに来るんだよ。 もし、それがとっても大事なことだったら 彼はまた戻ってくるでしょうよ」 しかしメネフネはそれ以来姿を見せず、 その後、父の家は引越してしまい、 父はもうメネフネに会うこともないんだと ちょっと寂しい気持ちになりました。 その家はいまもそのまま残っていて、 私が小さいころ、父はそこに私を連れていき メネフネが立っていたという 玄関のポーチを見せてくれました。 結局、父はメネフネからのメッセージを 受け取ることはできませんでした。 そしていまでもときどき、 メネフネがなにを伝えたかったのか 父はふと気になることがあるそうです。 |
2000-09-05-TUE
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