ほんとうにほんとのハワイ。 |
■Vol.34 ハワイの伝説 Maui マウイ Part2 「太陽を捕らえたマウイ」 マウイのお母さんのヒナは、毎日ハウの木陰で カパの木の皮を何度もたたいて伸ばし、 布を作る仕事をしていました。 カパの皮は乾かさなければいけないので 暗くなる前にその仕事を終わらせたいのですが、 彼女はいつも途中までしかできません。 太陽があまりにも速く空を駆け抜けてしまうから、 皮が充分に乾く暇もないのです。 ヒナはしかたなく、広げたカパの皮1枚1枚を片づけ、 また翌日のお日さまを待つことにします。 「もし、太陽があんなに大急ぎで空を駆け抜けなかったら」 その様子を見たマウイは言いました。 「もっとゆっくり空を渡ってくれたなら、 お母さんはカパの布を仕上げられるだろうに。 太陽のあの失礼な振る舞いに困っているのは お母さんだけじゃない。 農夫は作物を育てられないし、 バナナの実だって甘くならない。 西の水平線が赤く染まれば 漁師はまだ魚が捕れていなくても カヌーを港に寄せなければならない」 マウイは自分の手で、 太陽をゆっくり動くようにしてやろうと決意しました。 彼はまず、山を越えてハレアカラまでやってきました。 すると、大きなお皿のような太陽が山の谷間から現れて グルグルと回りながらクレーターの山肌を駆け上がり 天まで上がって行くのが見えました。 太陽に照らされた溶岩の黒い岩は、 もう一度燃え出したかのように赤々と輝き、 火口から立ちのぼる煙は日光に染まって バラ色や金色に見えました。 草の葉先にたまった夜露さえも、 キラキラとその一つひとつが宝石のようです。 しかし、そんな美しい時は 瞬く間に終わってしまいました。 ものすごい勢いで天を横切っていく太陽は、 あたりが紫色から濃い闇へ あっという間に変わっていくことも、 人々が太陽が出ている間にと必死で仕事をしていることも、 まったくお構いなしという様子でした。 それを見てさらに決意を固くしたマウイは 大急ぎでヒナの元に戻り、こう言いました。 「太陽を捕まえようと考えているんだ」 それを聞いたヒナは15本の縄を取りだし マウイに渡しました。 「太陽を捕まえるにはもう1本の縄が必要です。 でもそれは、ハレアカラのクレーターに住んでいる お前のお祖母さんからもらわなくてはいけません」 「でもどうやってお祖母さんを見つけるんですか?」 「ハレアカラを登り、 古いウィリウィリの木があるところまで行きなさい。 お祖母さんは朝早く、お供えのバナナを持って 火を熾すために外に出てきます。 そうしたら、彼女がよそ見している間に そのバナナを隠すのです。 彼女がバナナが無くなっていることに気づいたら、 名乗り出てヒナの息子だと言いなさい。 そうすれば、きっとお祖母さんは あなたを助けてくれるはずです」 マウイはハレアカラの お祖母さんの家を目指して出発しました。 険しい山を登り、 ようやく目印の古いウィリウィリの木を見つけ、 その太い幹の陰に身を隠し、一番鶏が鳴くのを待ちました。 鶏が3回ほど鳴いたあと、 小さな老女が大きなバナナの房をもって 外に出て来るのが見えました。 お祖母さんは木の下にバナナを置くと 火を熾し始めました。 彼女がイム(地面に作られたオーブンのようなもの)に 石をくべるのに忙しくしている隙に マウイはバナナの房をそっと取りました。 「お日さまのバナナがなくなった!」 気がついたお祖母さんは叫びながら あたりを手探りでさがし始めました。 お祖母さんは目がよく見えないのです。 「誰かがお日さまのバナナを盗んだんだ。 盗っ人はここにいる! 男のにおいがするよ!」 そこでマウイが姿を現しました。 「バナナを盗ったのはぼくです、お祖母さん。 ぼくはヒナの息子で、太陽を捕まえるために ここまでやってきたんです」 事情を聞いたお祖母さんは、 どうやったら太陽を捕まえることができるか、 その秘訣をマウイに教えてくれました。 お祖母さんは、太陽のあらゆる特徴やくせを 知り尽くしている唯一の人だったのです。 <To be continued> |
2000-09-19-TUE
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