ほんとうにほんとのハワイ。 |
■Vol.37 ハワイの伝説 Wai'anapanapa Cave 「ワイナパナパの悲劇」 最後にご紹介したい伝説は、私が子供のころ聞いたなかで いちばん印象に残っているお話です。 ハナにほど近いワイナパナパは、私にとって マウイでいちばん好きな場所のひとつです。 小さいときにはしょっちゅう家族みんなで泳ぎに行ったり、 キャンプをしに行ったものです。 ワイナパナパとは、 ハワイ語で“キラキラ光る水”という意味。 海岸のそばの濃い緑の中に突然現れる洞穴は、 平和な静けさに満ちています。 洞穴の中には澄んだ美しい水をたたえた池があり、 神聖な雰囲気さえ感じられます。 しかし、古のころに一度、 その平和な静けさが破られたことがありました。 カアケア王が彼の妻をむごい形で殺害したときのことです。 王の妻、ポプ・アレアはとても美しい女性でした。 王は妻にほんの少しの自由も与えず、 彼女はそのことに不満を募らせていました。 彼女は、崖に立ち海から吹き上げる涼しい風を 楽しむことさえも許されなかったのです。 王は妻を家の中に閉じ込めたきりで、 それはまさに囚人のような生活でした。 彼女は、夫から逃げ出さないかぎり 幸せにはなれないとわかっていました。 そして、どうすれば逃げることができるのか そればかりを考えて日々を暮らしていました。 ついに彼女は決心し、ある日王の元を逃げ出しました。 ワイナパナパの洞穴にやってきた彼女は 身を隠せるところを探してその奥深くに入り込みました。 妻の失踪を知った王はもちろん激怒し、 家臣をともないハナの周囲の谷から丘まで しらみつぶしに捜し回りました。 そして数日後のある日、海岸線を捜索しているとき 疲れた王はワイナパナパの洞穴の冷たい水に身を浸し 頭を冷やそうと思い立ちました。 ところが、洞穴の池に来て 清らかな水の面に目をやると、 なんとそこには岩陰に隠れた妻の姿が 映っているではありませんか! 彼女は家を飛びだしてから 洞穴の奥にあるくぼみにずっと身を隠していたのです。 彼女の姿を見るや、王の怒りは頂点に達しました。 そして、無残にも 彼女をその場で斬り殺してしまったのです。 静かに澄んだ池の水は、 みるみるうちに鮮やかな赤に染まっていきました。 毎年春になると、 ワイナパナパの洞穴の池には 何百万もの真っ赤な小海老が現れて、 水面が赤く染まります。 “その不思議な現象は 古の美しい王妃の悲劇のため” マウイでは昔からそう語り継がれています。 |
2000-10-04-WED
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